表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移先は日本でしたが、あまりにも楽しいのでスローライフを目指します!~従者(ヤンデレ)がついてきたので一緒に幸せになる~  作者: 雨宮 叶月
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/49

第5話 おいしいものを食べます!①

普通の人間であれば、未知の環境に戸惑うだろう。

だが、元の世界においては“適合”こそが生き残る術だった。


私はそれに長けていたし、何より——この世界を、私は心から楽しんでいた。


ベッドから起き上がり、身だしなみを整える。

制服ではない、私服という自由な装い。



テーブルの上に置いていた残りのおにぎりを一つ食べ、鞄を肩にかける。


「さて、今日は……」


出かける。目的はひとつ。



「……ふふっ」


思わず笑みがこぼれる。


楽しみで仕方がない。

今日、私が向かうのは——パンケーキの名店。

ふわふわで分厚く、果物とクリームがたっぷり乗っている。


スマートフォンで情報収集していたとき、あまりの数のパンケーキ専門店に驚いた。



けれど、私はそれが嬉しかった。


かつては糖分を控え、優雅に紅茶を嗜むのが常だった。

けれど今は違う。この世界では、甘いものを——好きなだけ楽しめる。


それがどれほど幸せなことか、私はよく知っている。


小さな駅の前にたどり着くと、パンケーキ店の看板が見えた。


「“予約優先”? ふふ……でも、私はちゃんと予約してあるわ」


スマホの画面を確認し、開店時間にぴったり合わせて店へと足を踏み入れる。


甘い香り。にぎやかな店内。おしゃれな照明と、柔らかな音楽。


セレスティア・ルーデンベルクは今——この世界で、“小さな幸せ”を一口味わおうとしていた。


案内された席は、窓際の陽射しがやわらかく差し込む二人掛けのテーブル。

小さな花瓶に、季節の花がひと枝だけ飾られている。


「……落ち着くわね」


私はメニューを広げた。


ページをめくるたび、ふわふわ、もちもち、しっとり、ザクザクと、甘美な言葉たちが目に飛び込んでくる。


「どれも美味しそうで……困ってしまうわ」


記憶にある“パンケーキ”より遥かに豪奢で、芸術的で、罪深い。


迷った末に、店員の笑顔に後押しされて「季節果実と生クリームのパンケーキ」を注文する。


「お待たせいたしました」


運ばれてきたその瞬間、私は思わず言葉を失った。


目の前に置かれた白いプレート。

そこには、まるで絵画のように美しい一皿が存在していた。


ふわふわに焼かれた三段のパンケーキ。

その上に、たっぷりと絞られた純白の生クリーム。

色とりどりのベリー、スライスされたキウイ、艶やかなオレンジ。

その上に、空気のように軽やかな生クリームがたっぷりと乗っている。

そして、そのすべてを柔らかく包み込むように、蜂蜜が金色の光を帯びて流れていた。


「……これが……“パンケーキ”……?」


記憶にあるものとは、あまりにも違う。

パンでもケーキでもなく、これは——芸術だ。


フォークを手に取り、そっと一片を切り取る。

ふわりと抵抗なく沈むナイフの感触。中は驚くほどきめ細やかで、しっとりしている。


口に運ぶ。


……その瞬間、世界が変わった。


「…………っ!」


軽やかな生地が舌の上でとけてゆく。

空気を含んだようにふわっとしていながら、卵とバターの香りが濃厚に広がる。


生クリームは驚くほど軽く、なのに深い甘さがあって、

フルーツの酸味と出会ったとき、味が弾けた。


食べ進めるたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。


(これが……甘味……? 本当の“自由な贅沢”……?)


王宮では、菓子は「品格」の象徴だった。

高価な砂糖菓子、宝石を模したスイーツ、食べ方や順番まで決められた儀式。


でも、これは違う。


この一皿には、誰の顔色も伺わず、ただ“好き”のために作られた愛が詰まっている。



誰も見ていない、誰も咎めない。

ただ、あたたかくて、甘くて、美しい。


とても幸せなひとときだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
初めての感想が「め、飯テロだあ!!」になるとは… 読みやすいので読み進めていきます、ブクマもしますね! 今のところ面白いですがさてここからどうなるのだろうか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ