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転移先は日本でしたが、あまりにも楽しいのでスローライフを目指します!~従者(ヤンデレ)がついてきたので一緒に幸せになる~  作者: 雨宮 叶月
第3章

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第38話 外に行く計画

 朝の光が柔らかく差し込むキッチン。

 私は、トーストにバターを塗る隼人さんの横顔を見つめていた。


 毎日を一緒に過ごすうちに、私の心は――ほんの少しずつ、確かに変化している。


 でも、まだこの生活が「普通」だとは思えない。

 この空間は、優しい檻。そこに甘えている自分がいるのもわかっている。


 それでも、言わなきゃいけないことがあった。


「……あの、隼人さん」


 私の声に、隼人さんが小さく微笑んでこちらを見る。


「ん、どうしました? 星羅さん」


「外に出たいなって……思って」


 一瞬、彼の手が止まった。

 ナイフを持つ手がぴくりと動いて、それから静かに、バターを塗る手を再開する。


「なんで?」


 低い声。けれど、そこにあるのは本物の疑問だった。


「逃げたいの?俺とずっと二人でいましょうよ。」


「違う!」


 私はすぐに首を振る。


「ただ、一緒に、どこか行きたいなって。スイーツとか……。前に雑誌に載ってた、あのカフェ……覚えてます?」


 ――そう、それは数日前、リビングで彼と一緒に雑誌を読んでいた時のこと。


「……限定の苺のミルフィーユが食べたいって言ってた、あれ?」


「うん」


 私の返事に、隼人さんは目を細めて笑った。




「本当に、“俺と一緒に”行きたい?」


「……はい」


 嘘じゃない。

 たとえこの家の外であっても、私は隼人さんと一緒にいたいと思った。


 それが、きっと信じたいという気持ちの現れで、

 私なりの小さな歩み寄りだった。


 隼人さんは少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと私に微笑んだ。


「……いいですよ」


「ほんとに?」



 その声は甘かった。


「ずっと隣にいてくださいね。いつまでも」



 彼の目が、真っ直ぐに私を射抜く。

 逃げられない視線に、息が詰まりそうになった。


「俺は疑ってませんよ。星羅さんは、もう俺から離れられないんですから。」



今の私は、逃げ出したいわけじゃない。


「……わかった」


 少しだけ躊躇したけど、私はゆっくりと頷いた。


 そして、隼人さんは目を細め、ふわりと笑った。


「じゃあ、明日。ふたりで、苺のミルフィーユを食べに行きましょうか」


「うん……」


 私は自分の胸の鼓動を、そっと押さえた。


 これは、ふたりで外の世界へ一歩を踏み出す――そのはじまりだった。

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