第37話 本当の気持ち
私は少し息を詰まらせたままだった。
心臓が、煩わしいくらいに騒がしい。
頬は熱く、呼吸もうまくできない。
でも――嫌じゃなかった。
隼人さんの手が、そっと私の髪を撫でる。優しい指先。けれど、そこに含まれる熱が怖かった。
「……星羅さん」
名前を呼ばれて、反射的に顔を上げる。まっすぐな瞳が私を見つめていた。
「お返事、聞かせてくれませんか」
――返事。
私は、視線を逸らせず、そしてようやく、かすかに頷いた。
「……私も、……好き、です」
その瞬間、彼の瞳がふわりとほどける。
でも――
「……でも、まだ……信じてるって、言い切れるほどじゃない」
私の言葉に、隼人さんはふと静かに目を伏せた。拒絶じゃない。けれど、彼の中に確かに、緊張の糸が走った気がした。
「……そうですか」
しばしの沈黙のあと、彼はふわりと微笑んだ。
「なら――信じてもらえるように、僕がちゃんと示します」
穏やかで、けれど決意を孕んだ声だった。
「言葉だけじゃ足りないなら、行動で。触れて、毎日伝えて、それでも足りないなら……一生かけても、証明します」
その声音に、また胸が苦しくなる。
そして、柔らかく言った。
「……俺たち、恋人ですね。」
その言葉に、思わず息が止まる。
でも私は、ゆっくりと目を伏せて、小さく頷いた。
「……うん」
そのとき彼は、何も言わずに、ただそっと私の頭を抱き寄せた。
あたたかくて、心地よかった。




