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転移先は日本でしたが、あまりにも楽しいのでスローライフを目指します!~従者(ヤンデレ)がついてきたので一緒に幸せになる~  作者: 雨宮 叶月
第3章

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第33話 恐怖①

夜の空気は少し湿っていて、星の見えない空が静かに広がっていた。


「お疲れさまでしたー!」


ネイルサロンのスタッフに小さく笑って自動ドアをくぐる。もうすぐ閉店時間で、繁華街の喧騒も少しずつ静まりつつあった。


(……今日も無事終わった)


駅までの道を歩きながら、私は小さく息をつく。けれど、背筋が自然とぴんと伸びたのは、ほんの数秒後のことだった。


「――ねぇ、そこのお姉さん」


背後から聞こえた、少し砕けた男の声。私が振り返ると、そこには二人の男が立っていた。笑ってはいるけれど、その目が笑っていない。


「さっきから思ってたんだけどさ、めっちゃ可愛いよね。モデルとかやってんの?」


「いえ……すみません、急いでるので」


私は一歩だけ後ずさる。後ろにいる男は、私を付け回していた顔だった。


「別に何もしないって。送ってくよ、夜道危ないしさ」


「……本当に、結構です」


足音が増えた。脇道から、もう一人。三人目の男が無言で現れ、星羅の背をふさぐ。


(――囲まれた)


全身に寒気が走る。瞬間、逃げなきゃ、と本能が叫んだけれど――腕をつかまれた。


「ちょ、やめ――っ!」


口を開いた瞬間、手のひらと布が星羅の口をふさいだ。


視界がぐらりと揺れる。


…甘い匂い。



押し当てられた布に、呼吸がうまくできない。声が出ない。目がかすむ。


「――ったく、暴れるなって。すぐ終わるからさ」


「おい、早く運べ」


「車こっち。急げ」


目を見開いたまま、私の意識は――落ちた。





がたん、と大きく何かが動いた音で目が覚めた。


(……どこ?)


冷たい床。倉庫のような場所。薄暗い照明。すぐに状況を理解しようとしたけれど、手足がうまく動かない。


(身体が、重い……)


何か薬を使われたのかもしれない。動けるけど、鈍くて力が入らない。


男たちの声が聞こえた。


「寝てるかと思ったけど、起きた?」


「やっぱめっちゃ可愛いな……こんなの、なかなかいないって」


「こういう顔で泣かせたら、やばいよな」


ぴたり、と足音が止まり、誰かがしゃがみこむ気配がした。


「なあ、そろそろやっちまうか?」


覆いかぶさるようにされて、目の前に、男の顔が迫ってくる。


首を横に振った。声は出ない。でも、いやだという意思は込めた。


なのに――。


「……ああ、やめてって顔、もっと見せてよ。ほら、力抜け。楽にしてやるから」


ぞっとした。視線が粘りつくように自分をなぞる。


(……誰か、誰か……)


(……隼人、さん……)


彼の名を思い出した瞬間、小石を踏む、足音が聞こえてきた。


「ん? 何の音?」



「気にするなよ」




私はただ、胸の奥のどこかが、静かに叫んでいた。


(来て、お願い――)


その願いが、届くはずがないと分かっていても。





この夜は、ただ静かに、底知れぬ恐怖の中へと沈んでいった。

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