第3話 転移先は日本でした③
とりあえず、目覚めた部屋へ戻る。
戸を閉め、ベッドの端に腰を下ろした瞬間——
「っ……痛い……!」
こめかみの奥を、鋭い痛みが貫いた。
頭が割れそうなほどの激痛とともに、言葉ではない“情報”が怒涛のように流れ込んでくる。
「——っ……なに、これ……!」
目の前がぐるぐると回る。視界の端が白く霞み、何かの夢を見ているような感覚に包まれる。
この世界は「日本」という名の国。
先ほど見た動く映像は“テレビ”。
食料を冷やす箱は“冷蔵庫”。
今身に着けているのは“Tシャツ”と“ハーフパンツ”。
そして——
「私は、“篠原星羅”としてこの国に暮らしていて、来週から大学が……始まる……?」
流れ込む情報に、脳が必死で追いつこうとする。
違う。これは本来の私じゃない。けれど、確かにこの記憶は私の中にある。
思い出せる。教室、ノート、コンビニ、スマートフォン……。
あらゆる現代的な記憶が、私の中に“あったもの”として自然に馴染んでいく。
「これが……この世界の私、なの……?」
静かに呼吸を整えながら、私は鏡の中の“黒髪の少女”を見つめた。
たしかに、セレスティア・ルーデンベルクではない。
けれど、どこか懐かしさすら感じるこの記憶に、私は逆らえなかった。




