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転移先は日本でしたが、あまりにも楽しいのでスローライフを目指します!~従者(ヤンデレ)がついてきた件~  作者: 雨宮 叶月
第1章

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第24話 熱

「あれ?星羅ちゃん、フラフラしてるけど、大丈夫?」


朝日ちゃんがそう声をかけてくれる。


「多分大丈夫。心配してくれてありがとう。」



「うん…。もうすぐ大学終わるからいいけど、帰ったらちゃんと休むんだよ?」



大学が終わり、電車の中で、身体が重たく、熱っぽさを感じていた。


「……なんだか、熱があるかも」


慣れない生活と気疲れ、季節の変わり目のせいだろうか。朝日ちゃんに「絶対に休んでね!」ともう1回言われたことを思い出しながら、私はふらふらとマンションの前にたどり着いた。


鍵を開けようとすると、すでに空いてるのか音がいつもと違っていて、一瞬戸惑う。


ドアを押すと、リビングに隼人さんがいた。シャツの袖をまくり、ジャケットは椅子にかけている。


「おかえりなさい、星羅さん」


「隼人さん、どうしてここに……?」


「今日の様子が少しおかしかったので、心配で、先に来てしまいました。」


彼の言葉はさらりとしたものだが、どうやって部屋に入ったのかと疑問に思う。



「お水をどうぞ。体温計も準備してあります。栄養ドリンクも買っておきました」


てきぱきと、丁寧に私に手渡す。



ふと、昔の記憶が浮かんだ。


昔、体調を崩して寝込んだ私の隣で、隼人さんは手を握り、何も言わずにそばにいてくれた。


その時も、彼の優しさは自然で、何の無理も感じなかった。


「熱、どれくらいありますか?」


隼人さんが体温計を渡してくれる。温かくて、でも冷たくも感じる彼の手の感触に、少しだけ安心した。


「38度ちょっと……」


「少し高いですね。今日は無理せず休みましょう。」


その言葉に、思わず涙がこぼれそうになる。


「ありがとう……」


「大丈夫、何かあったらすぐに言ってくださいね」


その後、隼人さんはキッチンで軽くおかゆと栄養のあるスープを作り始めた。私はソファに座りながら、その背中をぼんやりと眺めていた。



「昔は僕も、何もできなかった。でも、今は少しは支えられると思っています」


彼の言葉に、私は何も答えられなかった。ただ、胸の中がじんわりと温かく満たされていくのを感じるだけだった。


スープの香りが部屋に広がり、隼人さんがそっと差し出してくれる。



ゆっくりと口に含むと、ほっとした気持ちが広がった。


窓の外はすっかり暗くなり、街灯が光り始めている。


(彼と過ごす時間が、どんなに小さなことでも、私には大切なんだ)


部屋に戻りながら、熱にうかされた頭で、そう強く思った。



隼人さんは穏やかな微笑みを絶やさず、そっと私の手を握った。


「ゆっくり休みましょう。明日も僕がついていますから」


私は小さく頷き、安心した気持ちのまま目を閉じた。


昔から変わらない優しさに包まれて、夜は静かに深まっていった。

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