第22話 違和感
昼休みの大学キャンパス、芝生が広がる中庭のベンチ。
今日は、偶然同じ講義だった成瀬くんと一緒に昼食をとることになった。
「星羅さんって、おにぎりも手作りなんだ」
成瀬くんは驚いたように言って、私の握った鮭のおにぎりを見つめる。
「えっと……簡単なものだけ、ね。節約も兼ねてるから」
「すごい。やっぱり、ちゃんとしてる」
一緒に食べるお弁当。ゆるやかに流れる時間。
風が通り過ぎるたび、どこか穏やかな気持ちになる午後だった。
夕方。バイト終わり、駅まで向かう帰り道。
夕陽に照らされた歩道に、見慣れた姿が立っていた。
「隼人さん……」
彼は微笑を崩さず、いつも通りの穏やかな口調で答える。
「たまたま近くに用事があって、迎えに来ました」
(……たまたま?)
隼人さんは社長の仕事があるとかで、たまに大学を休む。
ふと視線を感じる。彼は私の表情をじっと見ていた。
そして、何気ない風を装いながら、さらりと口にする。
「そういえば、今日──誰と会っていました?」
……一拍、間が空く。
「あっ……その、成瀬くんと。講義が一緒で…」
「なるほど。成瀬くんと、ね」
にこやかな顔のまま、隼人さんの目元だけがすっと細くなる。
けれど彼は、変わらず柔らかく笑って言う。
「……では、そろそろ帰りましょうか。少し、風が冷たくなってきましたから」
隼人さんの歩幅に合わせて並んで歩く。
けれど私は、彼の言葉の奥にひそんでいた“何か”を、ずっと考えていた。




