第19話 学食
学内の食堂は、昼休みが近づくにつれてにぎやかさを増していた。
それでも、少し早めに動いたおかげで、テラス席に空きがあった。
「今日は、ここにしましょうか」
そう言って隼人さんが椅子を引く。
…どこへ行くにもついてくる。
一瞬の動作に迷いがない。思わず「ありがとう」と小声で返した。
私はトレーを持って、隣の席へ。
カルボナーラの和風パスタと、ワッフル。
彼は白ごはんと焼き魚、味噌汁にひじきという、なんだか完璧すぎる和食だった。
「なんでそんな健康的なの……?」
「僕、味噌汁が好きなんです」
「へえ……意外」
並んで座って食べ始める。
フォークを取る私の手の動きに合わせるように、隼人さんもお箸を整える。
(あ、なんか……)
言葉にするのは難しいけれど、妙にしっくりくる。
それぞれ別のものを食べているのに、呼吸が合っているというか。
そしてそれは――周囲にも、伝わっていた。
「なんか、あのふたり……」
「姿勢めっちゃきれいじゃない? ごはん食べてるだけなのに」
「でもめっちゃ静かで落ち着いてて、空気感やば……作法完璧すぎ」
そんな声が、どこかから聞こえてくる。
でも、私は気づいていないふりをした。
ふと前を見ると、隼人さんはゆっくりとごはんを食べていた。
丁寧に、静かに、でも楽しそうに。
(……こういうの、悪くないな)
誰かと一緒にいる時間が、心を少しずつほぐしていく。
それがこんなにも、自然にできるなんて。
あたたかな陽の差すテラス席。
小さな風が吹き抜けるたびに、彼の柔らかな髪とシャツの裾がふわりと揺れていた。




