第2話 転移先は日本でした②
目覚めると、見知らぬ天井がそこにあった。
白い。どこまでも白い。
「……これは、一体……?」
あたりを見回すと、小さな机やクローゼット、小説らしきものがあった。
窓の外には、高く積み上げられた灰色の建物が並び、遠くにその間を金属の箱のようなものが音を立てて走っているのが見えた。
ふと、そばに置かれた鏡を覗く。
金髪碧眼だったはずの自分が、黒髪黒目の少女へと姿を変えていた。けれど顔や体型はそのままだ。
「髪の色と目だけ、変わったのね……」
言葉に出しても、声はいつも通りだった。着ている服は白くて薄い素材の上着に、脚の半ばまでしかない短いズボン。脚を出すのには最初、少し抵抗があったが——今はもう、慣れてしまった。
ゆっくりとドアを開け、少し広い空間に出る。
「えっ」
黒くて細長い機械が部屋の隅にあった。近くにあった小さな棒のような装置にはボタンが並んでおり、押すと色と音のついた映像が流れる。
「これは……映像? 動いているの?」
もう一つの銀色の細長いものを開けると、中はひんやりと冷たく、果物や飲み物が整然と並んでいた。
「食料を……冷やすための箱……? なんて合理的なの」
初めて見るものばかり。けれど、胸の奥にふと小さな感情が芽生える。
(面白いかもしれない……)
私は思った。
こんな世界で、少しゆっくりしてみるのも、悪くないかもしれない——。




