第13話 再会③
私は、ようやく問いかけた。
「……どうして、あなたもここに?」
「目を覚ました時、私は見知らぬ場所にいました。
魔法も使えず、魔力の気配もなく……最初は夢かとも思いました」
「でも、何かが欠けているような感覚が、ずっと胸にあって。…貴方がいませんでした。」
静かに語られるその声に、胸がざわつく。
「お嬢様のことをずっと探していました。篠原星羅、という名を聞いたのは――。大学で、あなたの噂が広まっていました。……すぐに分かりました。“お嬢様”だと」
私は目を見開いた。
(……噂が?)
「記録を追い、構内を巡り、出入りする時間を調べて……この道を通ると分かって」
気づけば、私の呼吸は浅くなっていた。
「本当に……この世界で、全部やり直して、私を?」
「ええ。全部。」
その声は、限りなく穏やかだった。
でも、奥底に、確かにあった。
理性を覆うほどの――執着。
「大学で、あなたの“生活”を壊すつもりはありません。
けれど……あなたの傍にいる。それだけは譲れません」
私は、しばらく黙っていた。
どう言葉にしていいか分からなかったから。
でも、ふと――
(ああ、この人はやっぱり変わってない)
無茶で、優しくて、怖くて、でもどこまでも“私のため”だった。
そして私は、たった今、その存在にまた救われてしまったのだ。
「助けてくれて、ありがとう。」
「……家、来る?」
ぽつりと、そんな言葉が口をついた。
アルの目がわずかに見開かれ、次の瞬間、ふわりと微笑んだ。
「……では、お供させていただきます。お嬢様」
今度は、私は手を差し出した。
彼の手は、すぐに私のそれを包んだ。
昔と、何ひとつ変わらない手だった。




