拓夫と二葉。
拓夫は変わった。
いつも机にアニメグッズを並べていた彼が、急に整理整頓を始めた。
間食をやめ、脂ぎった顔もすっきりと引き締まり、スーツもサイズが合わなくなるほど痩せ細った。
「おい、拓夫……お前、どうしたんだよ」
職場の同僚たちは口々に噂した。
だが一番驚いたのは、その隣に“彼女”を連れて現れた時だった。
長い髪、清楚なワンピース。
小さな体を拓夫に寄せて、恥ずかしそうに笑っている。
「……あんな奴に、彼女が……?」
嫉妬や驚きの視線を集めても、拓夫は気にしなかった。
まるで夢のような幸福に包まれていたから。
その夜も。
拓夫の部屋では、彼と二葉の声が絶え間なく響いていた。
愛を囁き合い、体を重ね、ひと時も離れようとしない。
だが――その姿を覗き込むことができる者がいたなら。
二葉の背中から伸びる根が、布団に絡みつき、拓夫の体に食い込むように抱き寄せているのを目撃しただろう。
頬に触れる白い指先は、蔓のように編まれており、触れられた皮膚には赤黒い痕が残っていた。
「愛してる……拓夫」
「俺も……二葉……お前だけだ……」
やつれた声で囁く拓夫の頬は、もう骨ばかり。
それでも彼は幸せそうに笑った。
二葉の微笑みが、アニメで見た通りの完璧な笑顔だからだ。
だが、隣人の証言によれば――
夜ごとに聞こえるのは、甘い吐息だけではなく。
壁越しに、土を掘るような「ザリ、ザリ……」という音と、低く湿った女の声が混じっていたという。




