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種のガシャポン。
俺はオタクだ。何が悪い?
ちゃんと自立してるし、仕事だってしてる。
アニメが好き、二次元が好き――そして、どんな時も可愛いキャラは裏切らない。
そんな俺が、その日ふと立ち寄ったアニメショップの片隅で、妙なガシャポンを見つけた。
銀色に光る筐体。
ラベルには、俺が大好きなアニメのキャラクターがにっこりと微笑んでいる。
「おおっ! これ新作か?」
思わず声が出た。
だが、そこに書かれていた文字は少しおかしい。
――【種】。
カタカナではない。「たね」でもない。ただの一文字。
しかも、一回二千円。
高い。普通のガチャの十倍以上だ。
だが、俺は迷わなかった。
財布から二千円を取り出し、硬貨を投入口に落とし込む。
ガチャッ、とダイヤルを回す。
カラン。
重たい音を立てて、カプセルが落ちた。
透明のプラスチックの中に、小さな“何か”が見える。
「……え?」
中に入っていたのは、フィギュアでもキーホルダーでもなかった。
黒い土のようなものが詰まった小袋と、ただ一言だけ印刷された紙切れ。
――【育てろ】。
背筋に、ぞわりと寒気が走った。