おふとん
銭湯から帰ってきた。今日もエリカと一緒に眠る。
「…ねぇ、スズ」
小さな明かりの下。不意に、エリカが質問してくる。
「今朝、どんな夢見てたの?」
『親に色々言われて、仕事頼まれて、お願いもされて、それをこなす夢』
「……………そっか」
『なんで聞いたの?』
「今朝、二度寝の後…スズ、魘されて、泣いてたから。ごめんなさい、もう嫌だ、また増えた、って。過呼吸気味で、カサカサの声で」
…そう言えば、元の世界でもよく両親に言われてたな。寝言がうるさいって。
『ごめん』
「なんで謝るの」
『エリカが寝るのを邪魔しちゃったから』
「全然大丈夫だよ。ていうか、寝てたとしても、あんなに苦しそうなスズほっとけないし」
『気にしなくていいのに』
「するなするなと言われるとしたくなるのが人間だよ。それに、抱き締めて頭撫でたら、すぐおさまったよ」
……………え?
絵面を理解するのに10秒以上要した。その間、エリカはずっと、優しくて悪戯な笑みを浮かべていた。
子どもにこんな事されてる大人なんて、―――
「言っとくけど、別に恥ずかしくも情けなくもないからね。周りが今まで非道すぎただけだから。これくらいなんてことないよ」
そう言いながら、エリカは私から鉛筆とメモ帳を取り上げ、蝋燭の火を消し、布団を頭まで被って、気付けば私はエリカに抱き締められ、頭を撫でられていた。
両目から零れ落ちる、妙に熱い液体の名前は、未だに思い出せない。