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まち
「お風呂入りに行くよー」
唐突に、そう言われた。この家には浴槽が無い。建てる時に風呂掃除が面倒だからという理由で付けなかったらしい。なので、2日に1回、町の銭湯に行くそうだ。
丘を下って、町に入る。町の入り口と思しき門には刺又を持った門番らしき男性が1人居た。
「おおエリカちゃん、風呂に来たのか。そっちは?」
「訳あって異世界から連れてこられた、スズ」
「そうか、スズちゃんか。よろしくな!」
声はまだ上手く出せないので、お辞儀だけした。
町に入ると、賑やかだった。どうやら食料品店が夜の惣菜セールをしているらしい。
……………皆、楽しそう。
色々見ながら歩いていると、目的の銭湯に着いた。周りは大抵洋風建築なのに、銭湯だけ和風建築で、何と言うか、周りから浮いていた。後で聞いてみたところ、私より前の異世界人が作ったらしい。
扉を開けようとしたら、自動ドアだった。恥ずかしい。