おしまい
いつからだっただろうか。
他者に意見を言わなくなったのは。
いつからだっただろうか。
視界がモノクロになったのは。
いつからだっただろうか。
食事の味がしなくなったのは。
いつからだっただろうか。
…声を出せなくなったのは。
ずっと、誰かの言いなりだった。そうじゃないと、怒られるから。
父の言いなり。母の言いなり。先生の言いなり。同級生の言いなり。上司の言いなり。同僚の言いなり。
それでよかった。その方が、怒られたりしないから。何もかもが上手くいくから。
だから、できる限り“自分”を封印した。
物を見る事に意味を見出そうとしなかった。
物の味に意味を見出そうとしなかった。
声を出す事に意味を見出せなくなった。
誰に何を言われても、動いた。
色の判別が付かなくて怒られても。
食事会を断って『付き合いが悪い』と言われても。
働いて、働いて、働いて。
倒れた。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。子どもの1人も残せなくて。
職場の皆さん、ごめんなさい。仕事たくさん残してしまって。
こうして、私の人生は終わった。
…はずだった。
目が覚めると―――知らない部屋だった。