第1章 第7話 「拳に宿る絆とミスリル!ガントレット強化作戦」
ボルドの作業場――
「朧牙」を完成させたあと、俺はあることを思い出していた。
(……そういえば、ミスリル。まだ渡してなかったよな)
俺はカバンから、銀色に光る鉱石――**ミスリル鉱石(極小)**を取り出し、テーブルに置く。
「これ、鉱山で見つけたんです。ミスリル鉱石……本物です」
「ミ、ミスリルだとォォォ!?」
ボルドが目を剥く。
「どこでこんなもんを!?……本物じゃねぇか、クソッたれ!!」
ユイ「それ売ったら、銀貨何百枚になるのよ!?いや何千!?ちょ、ちょっと私に――」
「ダメです!!」
「うう……」
ボルドは、ミスリルを手に取り、じっと見つめた。
「この量じゃあ……剣も鎧も作れねぇな。
精錬しても使えるのはほんのわずか……ガントレットくらいか」
その時――
ボルドの視線が、アリスの手元に向いた。
「嬢ちゃんのガントレット……ボロボロじゃねぇか」
アリスが驚いたように腕を引いた。
「ま、まぁ……今のやつ、けっこう前から使ってるし……」
俺は迷わず言った。
「だったら――ボルドさん。
アリスのために、このミスリルで新しいガントレットを作ってもらえませんか?」
「えっ……いいの? そんな貴重な素材なのに……」
アリスが戸惑いながら俺を見つめる。
「アリスの拳は、俺にとって――最初の仲間の“証”みたいなもんだ。
だったら、ちゃんとした装備で支えたいんだ」
ボルドが、無言で笑った。
「……やれやれ、また火を入れることになるとはな」
彼はカチッと火打ち石を鳴らし、炉に火を灯す。
「よし……行くぜ。俺の炉とハートが、火を吹くぜ!!」
アリス「か、かっこよ……」
ユイ「ツッコミが追いつかないわよ……」
***
数時間後――
完成したのは、銀と黒を基調にした小型の拳用装備。
【鑑定結果】
名称:蒼閃の籠手
レア度:★★★★
効果:物理打撃+15%、魔力斬撃強化、魔法防御UP
備考:ミスリル製の小型拳装備。リクの仲間・アリス専用として鍛えられた一品。
「うわぁ……すごい……」
アリスが、それを両手で包み込むように持ち上げた。
「これでまた、もっともっと強くなれる。ありがと、リク」
「うん。……でも、調子乗って殴りすぎるなよ?」
「任せて。ちゃんと、全力でぶっ飛ばすから!」
「意味ちが――あいたッ!」
ガントレットで軽く拳骨を入れられた。
でも、ちょっとだけ嬉しかった。
次回:「町でお買い物?ギルド前で事件発生!?」