第1章 第9話(前編) 「魔獣調査とチートの予感」
「最近、森の魔獣たちの動きが……おかしいんだ」
ギルドのカウンターで依頼を受け取ったリクは、険しい顔になる。
依頼内容は“異常行動を起こしている魔獣の調査”。
場所はミルティの北部に広がる森。
普段はBランク以下のモンスターが多く、初心者も訓練に使う定番の場所だった。
……だが、今回は違う。
「魔獣が町の近くまで出てきたって話もあるの」
「しかも目撃された個体、見た目がちょっと……変らしいのよ」
ギルド職員が資料を渡してきた。
リクの“鑑定”スキルが軽く反応する。
対象の資料写真から、かすかな魔素の歪みが読み取れた。
普通の魔獣じゃない。
誰かが“意図的に”何かをしている――そんな気配があった。
「これは、調べる価値あるな……」
ギルド職員が続けて言った。
「それと、リクくんたち。ちょうど良い報告があるの」
「前回の依頼結果と報酬の関係で――あなたたちの冒険者ランクがCに昇格したわ」
「今回の依頼も、Cランク以上対象だから正規に受けられるわよ!」
リクが資料を閉じると、アリスとユイがうなずいた。
アリスは新しいガントレットを手にして、嬉しそうに握りこぶしを作る。
ユイは「何か高く売れそうな魔物いるかしら」と財布の中身を覗き込んでいた。
「じゃあ、準備して出発ね」
「森の依頼って久しぶりかも。モンスター串、また食べられるかな~♪」
そんなお気楽なアリスの声に、リクは少しだけ肩の力を抜いた。
彼女の無邪気さは、どこかで心を落ち着かせてくれる。
──数十分後。ミルティ郊外、北の森・入口付近──
風が止んでいる。
森の入り口からすでに、空気が重い。
「……この感じ、ただの調査依頼じゃ終わらないな」
「ねえリク、あたし前から気になってたの」
「この森、妙に“冷たい空気”を感じる時があるのよね……なんか、生き物の気配が希薄になるというか」
アリスの目が細められる。
森の中へと一歩、足を踏み入れたその瞬間――
「来るぞ、構えろ!」
リクの警告と同時に、茂みを割って魔獣が現れる。
姿はウルフ系の魔物――だが、
その毛並みは灰色に濁り、
目は真っ赤に染まり、
体表には黒い魔素が瘴気のようにまとわりついていた。
「うわ、なんかキモッ!!」
「お金の匂いしかしないわね……いや、腐ってるかも」
「いくぞアリス、ユイ、連携通りに!」
――チートスキル発動。
リクの一撃が魔獣の足を封じ、
アリスが拳で怯ませ、
ユイの回復魔法が即座にフォローを入れる。
魔獣は撃退できた。だが――
「……リク、その魔獣が倒れた場所、見て」
「……魔法陣、みたいな痕跡……? 誰かが召喚した……?」
森の奥から、微かに“笑うような声”が聞こえた――気がした。
第1章 第10.話(後編)
「魔獣調査(後編)!異常個体の正体と、迫る“死の気配”」




