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第4話  【東に行こう!…………行けるかなぁ~?】

 次の日の朝、ミーニャが作った、焼いた塩引き鮭をメインとした、和テイストの朝食を食べながら、リョウはセイとロブルア神皇国に行く為の話をする。


「俺は、いったんブラクロックの王宮に行ってアサール国王から親書を貰って来るけど、お前はその間どうする?一緒に王宮に行くか?」

「えっ⁉……行かな~い」

「え~、俺と一緒にお偉方に会いに行こうぜ~」

「絶対イヤ‼………そんな事言ってさ、面倒事を僕に押し付けようったって騙されないからね! だって、あれもこれもみんな兄さんの身から出た錆じゃん!」

 リョウはセイの突っ込みに、ワザとらしく憐みを誘うふりをしながら、

「…………傷つく……」

 と言ったが、

「ホントの事じゃん。…………それに、兄さんみたいにデカい男がしょげても可愛くない!」

「ああ! もっと傷つくぞーーー‼」

 逆襲をくらったリョウだった。


すぐに真面目な顔に戻り、

「と、ふざけるのはここまでにして、マジで俺がブラクロックの王宮に行っている間はどうするんだ?」

「ん~、ブラクロックの東の国境門都市…………何て言ったけ?」

「ヒシュガドか?」

「そうそう! ヒシュガド。そこの冒険者ギルドで待ってるよ!」

「そうか…………じゃぁ、そこで落ち合う事にするか⁉ それに、俺も王宮でそんなに時間を掛けたくないんで、速攻で親書を書いて貰ってお前と合流するわ」

「速攻で書いて貰う?」

「あの王様、結構チョロいからな。どうとでもなるさ!」

「チョロい……………」

 ロザリードの領境結界での出来事で、リョウには思う所があるので、アサール国王に対してあつかいがどうしても酷くなる。



 セイとの話し合いで、ロブルア神皇国に出発するのは4日後に決め、リョウはまずロザリードの屋敷に行き、マリアーナにロブルア行を告げしばしの別れを惜しみ(まあ、毎日夜には転移で帰って来るのだが……)、その間のロザリード領の事をシュテハンに託した。

 次にブラクロックの王宮に行き、アサール国王を脅すように親書を書かせ、セイが待つ東の国境門都市ヒシュガドに向かった。


 その間セイは、足りないポーション類や魔道具などのアイテムを錬金術で作り、アイテムボックスにストックし、直接ヒシュガドに向かう事にした。



 ヒシュガドの冒険者ギルドは規模がかなり大きい。

 しかし、ヒシュガドだけでは無く、ここラドランダーの各国に有る国境門都市の冒険者ギルドは、皆規模が大きいのだ。

 そのわけは、国境門を抜け次の都市に行くまでの『四色街道』沿いは、魔物が出たり野盗が襲って来たりする確率が高いので、その対策としてギルドは多くの冒険者を所属させ抱えているのだ。


 もちろん、国境門都市の領主を務める貴族も、騎士や兵士を駐留させて国境門付近をしっかり守っている。

 しかし、フットワークの軽さから、冒険者たちの方が良い仕事をしているのも事実なのである。



 そんなヒシュガドの冒険者ギルドに、リョウは入って行った。

 中は大きなギルドに関わらず閑散としていたが、何か緊迫感のようなものも漂っている。

 そんな中をリョウは、セイが居るかとザッと見回したが、セイらしき人物は見当たらない。


 その時、受付に居たガタイの良い壮年の男に声を掛けられた。

「うちのギルドに何か用か?」

「ああ、ちょっとここで待ち合わせをしているんだが、目当ての人物が居ないみたいなんだ。まあ、出直してくるよ」

 と言ってリョウは出て行こうとしたが、その男に引き留められた。


「ああっ! ちょっと待ってくれ、お前もしかして『ブラット』のリョウか?」

「そうだが、何か⁉」

「セイから手紙を預かっている」

 と言って、カウンターの引き出しから手紙を取り出し、リョウに差し出した。


 受け取った手紙は筆跡が乱れた走り書きだった。その手紙を読んでいるリョウだったが、何やら外野が騒がしい。


(おい! あれってあのS級の『ブラット』のリョウさんか⁉)

(さっきここに居たのはセイさんの方よね⁉)

(やっぱ国境門外の、グリーンメタルアント大群討伐の助っ人に来たのかね?)

(そうなんじゃない。さっきセイさんも、すごい勢いで出て行ったし)

 といった、今このギルドが置かれている状況を話している者が居る一方で、


(ドラゴンスレイヤーだよね?)

(S級って、お金持ってそう~)

(…………ロザリード辺境伯…………)

(ケッ! お貴族様が! 冒険者はお遊びじゃねぇんだよ‼)

 と言うような、緊迫感のカケラも無い事を言っている輩も居た。


 そんな煩い外野は無視して、手紙に集中する。

(グリーンメタルアントか、D級の魔物だよな。大群?)

 手紙の内容は、グリーンタルアントの大群が国境門の外に押し寄せて来ているので、ギルドの緊急依頼で討伐の助っ人に行く。と言う内容だった。


 その時、さっき受付に居た男が、

「その手紙に書いて有るように、今門の外でかなりヤバい事になっている。すまんが、リョウお前もあの蟻どもの駆除に協力してくれんか?」

「…………あんたは、誰だ⁉ 人に頼み事するんだったら、名前くらい名乗れよ!」

「ああ、すまん! 名乗るのが後になってしまったな。俺は、ここヒシュガドの冒険者ギルドのギルマスでベッケルと言う。現役の時はSS級の冒険者だ」

「SS級‼」

「今ではジジイになっちまったが、まだまだ若い者には負けねぇつもりだ! まあ、あくまでつもりだけどな」


 ガハハハッ!と笑う口元に、かつてシャギーにも有った、尖った犬歯がキラリと光ったように見えた。

 よくよく見ると、獅子の獣人族のようである。金茶のたてがみのような髪に緑色の目、獅子獣人の特徴その物ではあったが、純粋な獣人では無くどちらかと言えば人族に近いようにリョウは思った。

 なるほど、獅子獣人の血を引いているならば、SS級の冒険者だったとしても納得する。

 獅子獣人はとにかく力が非常に強く、武器も難なく使いこなし、頭も良いと言われているからだ。


 ただ、S級冒険者はそこそこ居るが、SS級冒険者やSSS級冒険者はこのラドランダー大陸全土で5人居るか居ないか位の伝説級の冒険者である。それ程珍しい存在なのだ。

 リョウも、結構長い間冒険者をしているが、現役を退いたとは言え、SS級の冒険者に会ったのは初めてだった。


「セイが向かった行ったからには俺も行くが、これはギルドの正式な依頼と受け取って良いんだな?」

「ああ、報酬はちゃんと払うさ。本当は、俺が行きたい所なんだがな、何かあった時の場合に備えなきゃならんから、ここに居なくちゃいけねぇんだ!…………まったく、こう言うのは俺の性に合わん! だからギルマスなんてやるのは嫌だったんだ‼」


 何があったかは知らないが、段々熱くなって来たベッケルは、相当うっぷんを貯め込んでいそうだった。


「…………じゃ、じゃあ、俺も、もう行くわ!」

 彼に絡まれそうな嫌な予感がしたリョウは、急いでその場から門まで転移して行った。


「あいつ!逃げやがったなーーー‼」

 後には、ベッケルの悔しそうな声がギルドに響き渡っていた。



 国境門の外壁の上にはかなりの数の兵士や冒険者達が、青い顔をして言葉少な気に門の外を見ている。


 セイを見つけたリョウは近寄り声をかける。

「セイ! どんな状況だ⁉」

「あっ! 兄さん。どうもこうも無いよ、見ての通り蟻だらけだよ」

 セイに言われて、門の外を見たリョウは一言、

「うわっ! 気持ち悪りぃ‼……………………あの、テカテカ光る甲殻を見てると、台所にいるGな奴を連想させるな……」

「…………うん、そだね…………」

 リョウとセイ、虫は特に苦手では無いが、あまりにも数が多いので精神的な嫌悪感が強いのだ。


 虫が苦手で無くても、この数の蟻を見たならば、誰でも同じ感想を口にしそうな状況だった。

 門の外を埋め尽くす、蟻、あり、アリ…………。


 ここを任されている騎士や兵士、それに冒険者の主だだった者達は、この蟻が何処から来たのか?何か目的が有るのか? 明確な意思が無い虫だけに、原因と対処に困惑しているようだった。


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