表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/146

第2話  【神様とチョコレート】

 ここラドランダー大陸では、神と言えば『シホワロイト』の神の事を言う。

 そう言われる程、この大陸に根付いた宗教なのである。


 シホワロイト教の起こりは、今から二千年位前に遡り、神代や古代と言われている時代になる。

 その頃は、今の四色大国などは存在せず、大小様々な国が覇権を競い、群雄割拠していた時代と言われている。


 そんな時代に、今のイエロキーの前身である中規模の国家『イーエキ』に、一人の凄腕の最強戦士が現れた。

 その名は〔ゼビュノウス・イエロキー〕と言う。

 彼は、今とは比べる事が出来ない位危険な『白の魔森』を単独で中央まで踏破し、そこにそびえ立つ4千メートル級の山『シホワロイト山』を登ったとされている。


 ゼビュノウスは、降りかかる艱難辛苦かんなんしんくを乗り越え『シホワロイト山』の頂きに辿り着き、シホワロイトの神々からシホワロイトの教えを受け、その教えを広める事を許された。


『シホワロイト教』の教義は、〔シホワロイトの神を信じ敬い、欲を持たず、他者を思いやれ〕と言う事である。

 簡単なように思えるが、人の心は移ろい易く、また欲を持たないと言う事が非常に難しい生き物であるがゆえ、『シホワロイト教』の教士はストイックな信者が多いと言われている。


 そして、絶対に犯してはならない戒律は、〔生きてゆく為に必要な場合を除き、無益な殺生は決してしてはならない〕と言う事で、その止む負えず奪った命に対してもさえも、尊厳を損なわないようにとの教えである。


 ちなみにだが、『シホワロイト教』の教士には男女を問わずなる事が出来る。そのうえ、還俗をすれば結婚をする事も許されている。



 そして、『シホワロイト山』を降りたゼビュノウスは、まず初めに故郷の国『イーエキ』を『シホワロイト教』の教えにより治め、国名を『イエロキー聖教国』と改名し、国教を『シホワロイト教』と定め布教に尽力した。


 その甲斐あって『シホワロイト教』はラドランダー大陸全域に広がり、今では一部の国を除き、もっともポピュラーな宗教として定着しているのである。


 初代『イエロキー聖教国』国王となった彼は善政をし国を良く治め、イエロキーを発展にさせた国王として名を馳せたのである。

 国王を退いた後は子や孫に囲まれ、穏やかに後の人生を過ごしたとされている。


 後に、彼、ゼビュノウス・イエロキーは『シホワロイト教』中興の祖として、彼自身が信仰の対象になっていった。



 そんな経緯で成り立ったイエロキー聖教国ではあるが、他宗教を排除すると言う事は決して無い。

 強引な勧誘は禁じており、むしろ、信仰の自由を許している位なのである。

 それ故、他の宗教に関する研究も盛んに行われており、今回の『五色帝神』や『黒狼帝』の事も、少なからず記録に残されていた。

 しかし、記録はかなり古く、羊皮紙どころか薄い板や石板に書かれた物が殆どで、その様な材質だからなのか保存状態があまり良くはなく、インクがかすみ所々読む事が出来ない物も多々有ったそうだ。


「今回の調査で分かった事は、このイエロキーの『五色帝神』は『黄馬帝おうばてい』と呼ばれる馬のお姿をした一柱で、黄金の体毛を持ち紫の瞳で、その背には翼が有ると記されておりました」

 と、ローランが調査結果を公表する。


「黄馬帝?」

 書類に目を通していたクラウス将軍が、目を上げて不思議そうに聞き返す。


「はい。手元の書類にも書いてありますが、このラドランダー大陸の四色国家には、それぞれ一柱の帝神がおられるようです。北はロザリード卿がお会いになった、黒い体毛に金と銀の瞳で狼のお姿をした『黒狼帝』。ここ、西のイエロキーは、そこに書かれているように『黄馬帝』。南のアレッドカは虎のお姿をしており、朱赤の体毛に白い虎縞で瞳は黒の『赤虎帝せっこてい』です。しかし、今回リョウ殿が向かわれる東のロブルアの『五色帝神』の記述が読み解けませんでした。…………それと、『五色帝神』と言うからにはもう一柱、色を表す『帝神』存在するはずなのですが、名前も所在も分かりませんでした」


 と、ローランは申し訳なさそうに目を落とす。


 手元の書類を見ていたシャギーは、ふとある事の思い至った。

「もしかすると、最後の帝神は『白の魔森』にられるのではないでしょうか?」

「はあ? なにをバカな事を! あそこは魔物の巣窟と言って良い所だぞ! 神聖なる神が御座す所ではないだろう‼」

 シャギーの言葉をクラウス将軍は、あり得ないと強く否定する。


「それはそうですが、この『五色帝神』は各国の色を表しているようなので、このラドランダー大陸に残るは色は〔白〕では無いでしょうか? それは取りも直さず『白の魔森』を表していると、私は思った次第なのですが……」

 シャギーに明確な根拠は無いが、『帝神』の名に色が含まれているのだから、残りは〔白〕しかないと彼は思ったのである。


 そのシャギーの言葉を補足するように、ローランも自身の考えを口にする。

「そうですね、私もそう思いました。それに『白の魔森』の中心部分には『シホワロイト山』があります。あの山は、我がイエロキー聖教国の国教である『シホワロイト教』の聖地でもありますから」


「成程。そう言われたら、帝神には各国の色が含まれていて、残りは白で、しかもシホワロイトの聖地ですか。良く出来ていますな」

 感心しているのか、揶揄っているのか判別がつかないような事を、ネントレス子爵は口にする。 


 実際、出来過ぎの感が、無きにしも非ず有らずなのだ。

 各国を表す四色を含む『五色帝神』。

 とすると残る色は白しか無い。

 それは取りも直さず『白の魔森』を連想させる。


 何か人ならざる者の強制力を感じ、その場にいた者達は次の言葉を発する事を、躊躇わずにはいられなかった。



 だがその重苦しい沈黙は、マミーナリサ女王の明るい一言で霧散する。

「ひとまずここで休憩に致しましょう。このような状態では、頭を使うにしても良いとは言えませんからね。甘い物と、お茶…………では無くコーヒーを用意いたしましょう。…………シャギー、コーヒーを淹れ直してください」


「はい」

 一言返事をしてシャギーは、女王のこの提案をすんなり受け入れた。

 そのこころは……お偉方に囲まれて、凝り固まった体をほぐしたい……。

 出来る事なら、体の関節をボキボキ鳴らしたいところである。


 シャギーは、先程と同じようにコーヒーを淹れる、今度は先に出した物とは別の、甘未に会う少し苦みのあるコーヒーにした。


 マミーナリサ女王が手元のベルを一振りすると軽やかな音が響き、いつものメイド二人がワゴンを押して入った来た。


 マミーナリサ女王は、

「本日は、新たな産業として進めたいと考えています、新作のお菓子をお披露目しますね」

 と、言ってメイドがワゴンから取り分けたお菓子を披露した。


 それは、前世で言う所のチョコレートだった。



 リョウは以前マミーナリサ女王から、多くの人が働く事の出来る、新たな物を考えて欲しいと頼まれた事があったのだ。

 色々と考えはしたが、これと言って良い物が思いつかず、結局コーヒーの二番煎じの様に、前世の物でお茶を濁すような事をしてしまった。

 それが、カカオの栽培である。

 カカオ畑にも、チョコレートを加工するにしても、人手はかなり必要になるので、難民対策としては上々の物になったようである。


 砂糖は、アレッドカで年々増産が進んでいて、価格も下がってきているので、価格を気にせずチョコレートに使う事が出来るので、目新しいし好品としてウケるのでは?と考えての事でもあった。


『百貨店』から購入したカカオの苗木が、イエロキーに定着するかどうかは賭けのようなものではあったが、コーヒーの苗木同様に無事に育てる事が出来、チョコレートの作り方もセイの『検索』スキルで調べ、この程やっと口に出来る程の物を、作る事が出来たと言う事なのだ。


 クラウス将軍とネントレス子爵は不思議そうにこの黒いお菓子を見ていたが、シャギーはお構いなしに手に取り口にした。


(うん。まあまあなんじゃないかな? 前世の物と比べると多少ザラ付いている気はするが、ほとんど遜色は無い。それに、コーヒーにも良くあうしな)


「どうですか?」

 マミーナリサ女王の問いかけに、シャギーは素直に感想を口にする。

「とても、美味しいですね。これならば、他の菓子にも応用して使う事が出来るのではないでしょうか?」


 そのシャギーの言葉に嬉しそうに彼女は頷き、

「そうなのです。今、このチョコレートを使ったお菓子を、料理人に色々と考えてもらっている所なのです」


 シャギーと女王二人の話を聞いた、クラウス将軍とネントレス子爵は意を決して、この見た事も無い黒いお菓子を口に入れた。


「「……………………‼⁉」」


 今まで食べた事の無い食感と味と香り全てに驚き、あまりの美味しさに2度驚き、言葉を失くした二人だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ