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第26話  【お偉方との話は、肩がこる】

「では早速ですが、クジョウ卿が手に入れたと言う、闇組織の証拠類を見せて頂きたい」

 と、ローランがこの場を仕切り、話し合いを始める。


 本日は、女王陛下は出席せず、ローランと『新月の黒蝶』の当主、それと国防を担うクラウス将軍が、王宮にある秘密の話し合いに使われるような部屋に揃っていた。


 クラウス将軍は、クラウス・デイヤー準伯爵と言い、イエロキー東部のデイヤー領の出身である。デイヤー領主の次男で、幼い頃から武芸に秀でていた為、15歳で聖都の騎士として出仕した。

 以来順当に出世を重ね、将軍に取り立てられ、とうとう一代限りの準伯爵の地位を賜った、豪の者である。


『新月の黒蝶』とは、女王陛下直轄の極秘の秘密組織である。当主は一応貴族でありネントレス子爵を名乗っていた。

 一族全てが『新月の黒蝶』に属しており、女王陛下を裏切る事の無い忠実なしもべである。その仕事は多岐にわたり、表舞台も裏舞台も、果ては暗部のような事もやってのける、凄腕が集まる組織なのである。



 ローランに言われた通りに、アイテムボックスから証拠の品々を取り出しながら、リョウは場違いないごごちの悪さを感じ、

「え~と。私がここに居ても良いのでしょうか?」

 と、思わず尋ねてしまっていた。


「何をおっしゃっているのですか? この品々を手に入れたのは、あなたのお手柄では無いですか? ここに居る権利は十分ありますよ」

「そうです! ローラン殿の言う通りです。私ども『新月の黒蝶』でさえ、ここまでの証拠を集める事は出来ませんでしたからね」

「…………おぬしの冒険者としての活躍は言いておる。ドラゴンを倒す猛者だそうだな。…………いや、惜しい、本当に惜しい。初めから貴族であったのなら、わしが手元に置いて鍛えてやる事も出来ただろうと思うと、誠に残念じゃ!」


 前者二人の言葉は有難く思ったが、後者の将軍の言葉にリョウは、

(あっぶねぇ~。子供の頃に、あの将軍に関わっていたらと思うと、ゾッとするわ! ホント、ボコボコにされている自分が見えるようだぜ)

 と心の中で、自分が冒険者である事を、今ほど良かったと思わずにはいられなかった。


 しかし、こうも国の重鎮が集まる場所で、その上秘密裏に動く『新月の黒蝶』等と言う組織の存在を、一冒険者が知って良いのだろかと言う思いも、拭い去る事は出来そうに無かった。


 ローラン達3人とリョウは、アルスラ宰主が行っていた、闇組織の悪行の数々が記されている書類の検証を始めたが、そこに記されていた物は目を覆いたくなる程の物だった。


 出した証拠の書類もだが、密売品の多さも酷い物である。貴重で入手困難な物が大半を占めている。これらを違法に手に入れ、高値で売り捌いているとしたら、販売価格が幾らになるか考えただけでも頭が痛い。


 ローラン達3人はそろって頭を抱える羽目になった。


「こっ、これは酷いですな!」

「何と言う事だ‼ アレッドカだけでは無く、我がイエロキー、ブラクロック、果てはロブルアにも闇組織の末端があるのか⁉」

「…………この様に四色大陸全土に広がる組織等は、私共『新月の黒蝶』でも聞いた事はございません! 良く隠し通せたものです。逆に、感心いたします!」


 闇組織の証拠書類は多岐にわたり、人身売買、貴重な素材の密猟や密売、違法魔法薬の製造販売、殺人請負、等々数えたらきりが無い程の、まさに犯罪のオンパレードと言っても、言い過ぎでは無いと言えるような物だった。



 暫く書類を睨んでいた3人だったが、おもむろにローランがリョウに話しかけて来た。

「クジョウ卿は、アルスラ宰主と旧知の仲だと伺っておりますが、この様な事を彼が行っている事をご存じでしたか⁉」


 リョウはアルスラとの関係を、ローランに事前に報告書として提出していた。

 こんな事をしているアルスラと同じと思われ、自分に有らぬ疑いを掛けられても面白くないからだ。


 ローランの問いは他の2人に聞かせる為の問いであり、それをリョウも分かっていて、報告書と重複するが、改めてアルスラとの係わりを説明する事にした。

「私の、幼い時の事は事前に提出した報告書通りです。10歳~15歳までアレッドカで、アルスラとは相棒のような仲でした。…………ですが、私達に金と力、そして権力が集まり始めた辺りから、アルスラの考えている事が分からくなってしまいました」


「それは、どう言う事じゃ?」

「私に隠れて汚い事をやり始めたのです。それこそ、今そこに有る書類のような事をです」

「おっ!おぬしは、それを黙認しておったのか⁉」

 

 思わず大きな声を上げたクラウス将軍は、非道な行いをリョウが知っていて、加担はしていなくても黙認し、その事を放置したのでは無いかと思ったのである。


 それに対してリョウは、テーブルの上に置いた、組んだ自分の手に目をやり、

「いえ、分かった時点で、そんな事はやめろと言いました。ですが、それらの事に対して、あまり頻繁に口うるさく私が口にするようになったからか、彼はその事について私に何も言わなくなりました。…………以前はその事に付いても、それなりに相談されてはいたのですがね」

 と、静かに淡々と答えた。


 クラウス将軍は、改めてリョウと宰主との係わりの確認をする。


「成程。では、その方と宰主との関係は、今は無いのだな⁉」

「先日、奴が私を殺そうとしたんで、その時に絶縁を言い渡して来ましたよ」

「…………殺す?」

「奴は再三に渡って、私に自分の配下になれと言って来ていたのです。ですが、私はあいつの金の為なら何でもやると言う考えに、付いて行く事と言う選択肢は有りませんでした。なので断り続けていた所、自分の言う事を聞かないのなら、俺…いや、私を殺すと言う暴挙に至ったみたいですね」


「何事も無かったのですか?」

『新月の黒蝶』のネントレス子爵が心配そうに聞いてきたが、リョウは淡々と答えた。

「こう言ってしまってはなんですが、正直言いまして、普段体を動かす事が無い宰主と、S級冒険者として活動している私とでは、おのずと結果は見えています」

「…………宰主自身が、あなたに手を下したのですか⁉」

 子爵の驚きに対しリョウは簡単に、

「ええ、そうです。ですから、私としては、痛くも痒くも有りませんでした」

 そう答えた。


 S級冒険者に対して(何て、無謀な宰主なんだ!)3人そろって、そう思った。


 しかし、真実は、魔力銃などと言う物を持ち出され、苦戦したのは言わないで置く事にしたリョウである。



「では、クジョウ卿はここまで結構です。後は我々にお任せ下い。…………ああ、いつもの部屋で、あの方がお待ちになっていますので、帰りにお寄りなって下さい」

「…………」


 居た堪れない空気の部屋から、やっと解放されると思っていたが、どうやら、まだまだリョウの忍耐は続くようである。


 しかし、リョウとしてはもう一つ、この部屋の方々に話したい事があったので、

「申し訳ありませんが、最後にこの書類に目を通して頂けないでしょうか?」

「これは?」

「今、アレッドカの首都、トラルーシュの冒険者ギルドで、ギルドマスター代理を務めているディランと言う男の身辺調査書です。彼は、とても有能な男ですので、頭の片隅にでも記憶しておいて頂けたらと思い、こうして調査書としてお見せしたのです。…………まあ、ただ、彼を優遇しろと言っている訳では無いので、そこの所はお間違え無きようお願い致します」


 そう言って、書類をテーブルの上に置き、リョウは部屋を退出して行った。



 いつもの小部屋に入ると、そこにはすでにマミーナリサ女王陛下が優雅にお茶飲んでいた。

「あら? 思いのほか早かったのですね。もう少し時間がかかるかと思って、お茶を飲んでしまいました」

 そう言って、マミーナリサ女王は少し不満そうに、リョウを見る。


(えっ! そんな事俺に言われても、俺の都合じゃないし~。俺に、どうしろと言うんだよ~!)


「それに、……今日は赤では無いのですね⁉」

「……………………。本日は、リョウスケ・クジョウ準公爵として出仕致しましたので、装いは黒と致しました」

 自由気ままなマミーナリサ女王に、一瞬言葉が出てこなかったリョウである。


「まあ、私もその辺は分かっておりますから、その事に付いては気にする必要は特にありません。…………ですが、次回は、必ず赤で来てくださいね!」

「…………はい」

(ハァ~。俺は、女王陛下の着せ替え人形か何かなのか?)


 リョウは表情に出ないようにしながら、心の内で一つため息をつく。


「では、いつもの様に、コーヒーをお願いします」

「本日は、どのように?」

「そうですね? フレーバーコーヒーをお願いします。スッキリした香りが良いですね」

「はい、承りました」


 リョウは、慣れた手つきでコーヒーを淹れ始めた。


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