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第24話  【魔力銃】

 気味の悪い笑顔のアルスラに目を向けながら、リョウは気になった一言がある。


「錬金術士が犠牲になったって言うのは、どう言う事だ⁉」

「なに、簡単な事さ! 錬金に失敗した奴に『魔力銃』の存在を覚えていられては困るからな。この世界から永遠に消えてもらっただけの事だ。…………もっとも、この完成品を作った錬金術士も、消えてもらったけどな」


『魔力銃』の秘密保持の為に錬金術士達を殺して、口封じをしたアルスラだ。

 そのあまりの、非情さにリョウは非難の叫びをあげる。

「なっ! なんて事をしているんだ‼ お前って奴は‼」


 リョウの言葉が聞こえていないかのように、アルスラは魔力銃をウットリと見つめながら、

「この魔力銃の事は、俺とお前だけが知っていれば良いんだ。他の奴らが知っている必要は無い!…………それに、他の奴らに同じような物を作られても、俺としては面白く無いからな」


 目的の為なら良心の呵責も無く何でもするアルスラに、セイは面識も何も無いが、同じ錬金術士が無為に殺された事で、いい加減頭に来て黙っている事が出来なくなった。

「チョット‼ それはいくら何でも酷すぎなんじゃない⁉ 人の命を何だと思ってるのさ‼」


 嫌な笑みを顔に浮かべたアルスラは、怒りで顔が真っ赤になっているセイに目を向け、

「そうだな。君ともっと早く出会っていれば、処分する錬金術士の数も減らせたかもしれないな」

「…………。どう言う事⁉」

「分からないのか? 君程の優秀な錬金術士なら、君一人でこの『魔力銃』を錬金する事が出来ただろうからね! そうすれば、この世から消えるのは君一人で良かったと言う事になるだろ⁉ 大勢の錬金術士が命を落としたのは、君のせいでもあると思わないか?」


 そう高らかに話すアルスラは、もう正気の沙汰では無い。頭がおかしくなっているとしか思えない。


「言うに事欠いて! おかしな事をほざくのもいい加減にしろ‼ もう、我慢出来ねえ! お前とは今日を限りに絶交だ‼」

 リョウの怒りが頂点に達し、アルスラに絶交を言い渡す。


 が、アルスラは芝居がかった悲しさを装いながら、銃口をセイに向ける。

「そんな寂しい事は言うなよ。俺とお前の仲だろ?…………そうだ! そいつが居るから、お前が俺の所に来れないんだろ⁉ だったら俺がそいつを始末してやるよ。そうすれば、お前は安心して俺の所に戻る事が出来るからな」


 そう言うが早いか、アルスラは引き金を引いた。


「ダァーーーーーン!」


 乾いた発砲音が聞こえ、ドッサと人が倒れる音がする。


 そこに倒れていたのは、セイを庇って胸を撃ち抜かれたリョウだった。


「……………………兄さーーーーーーん‼」

 一瞬の間の後、セイの絶叫が響き渡る。


 隅で、一塊になっていたアルスラの部下達は、聞いてはならない事を聞いてしまった事と、魔力銃の威力に恐怖で震えが止まらないでいる。


 セイは倒れているリョウを必死になって抱きかかえ、魔力銃で撃たれた所を確認している。心臓の真上辺りを撃たれていて、息をしていない。


 目を見開き、動きを止めたアルスラだったが、慌てふためきリョウに駆け寄った。そして、リョウに手を掛けようとしたが、骨が折れるのでは無いかと思う程の力で、セイにその手を掴まれてしまった。


「その汚い手で兄さんを触らないで‼ あんたが兄さんを殺したんだ‼ 僕の兄さんを返せ‼」

「何を言ってる! そもそも、お前が大人しくこれで撃たれて死んでいれば、シャギーが死ぬ事は無かったんだ! シャギーが死んだのはお前のせいだ!」



 死んだ者は生き返らない。たとえエリクサーでも生き返らす事は出来ない。

 セイは、ほの暗い思いで、錬金術の絶対禁忌とされている死者蘇生を、一瞬だが考えてしまった。


 その時セイが抱えている、死んだと思っていたリョウが言葉を発した。

「……うるせえなぁ! 人をダシに使って言い争ってるんじゃねぇよ‼ ったく!」

「………兄さん⁉ 生きてるの⁉ 生きてる! 良かった‼良かったーーーー‼」


 リョウが殺されたと思って、半狂乱になっていたセイが、泣き笑いでリョウを力任せに抱きしめる。

「ウッグッ‼ 死ぬ!死ぬ!…………セイ! 力を緩めてくれ‼ 折角助かってもお前に絞殺しめころされたんじゃ笑えねぇ~!」

「えっ!あっ! ゴメン!…………テヘッ‼」

「テヘッ! じゃねぇよ。…………まあでも、セイ、心配かけて悪かったな!」


 優しい目でセイを見ながら、リョウは起き上がり、いつもの様にセイの髪をクシャクシャにかき混ぜた。


 一方、アルスラは目を見開き、

「なぜだ⁉ 銃弾はお前の心臓を撃ち抜いたはずだ。現に、お前のその服、胸に空いた穴に血が滲んでいると言うのに。………シャギー、お前が生きている事は嬉しいが…………これではこの魔力銃が欠陥品みたいじゃ無いか⁉」


 リョウは呆れた様子で、

「この期に及んで、俺の心配より魔力銃の性能の心配かよ⁉」


 セイは、アルスラの言葉では無いが、あの状態で死ななかったのは奇跡のようだと思い、

「あいつじゃないけど、僕は本当に兄さんが死んじゃったと思ったよ。……ああ、もしかして、良くある『あるある』で内ポケットに何か入っていたとか?」

「それだと血は出ないんじゃないか? それに、この服には内ポケットなんてもんは付いてねぇよ!」

「えっ? だったら…………どう言う事⁉」


 リョウは、アルスラが引き金を引く寸前に、セイの前に飛び出した。その際、防護障壁魔法を発動させたが、ほんの僅かタイミングがずれて、未完成の障壁の所に銃弾が胸に当たってしまった。

 障壁は完全とは言えなかったが、障壁の役割を果たして即死は免れた。しかし、やはり未完成の魔法だったのでケガを負ってしまったと言う訳である。


「お前らが、言い争っている間に、自分で自分に【ハイヒール】をかけて、傷を塞いだのさ」

「そうなんだ………でも本当に良かった、兄さんが生きていて」

 リョウの説明に安堵したセイである。



 そんな二人のやり取りを、複雑な思いで見ていたアルスラは、

「なぁ、シャギー! そんな奴は後腐れなく殺してしまってさ、俺の所に来いよ‼ この先、そいつはお前にとって足手まといにしかならねぇぞ!」

 と、リョウの気持ちを逆なでするような事を言い放つ。


 自分だけがシャギーを理解できるのだ、自分だけが彼を守っているのだと。


 しかし、そんなアルスラの一方的な思いを、リョウとしては受け入れる事は出来無い。ましてや、家族であるセイを殺す等、言語道断である。

「ハァ? 何を根拠にそんな事言ってるんだ⁉ 俺にとってセイはかけがいの無い弟であり、親友であり、命を預けるのに足る同志だ‼…………アルスラお前こそが、俺にとっての害そのものだ‼」 


 狂気に満ちた目で、魔力銃の銃口をリョウに向け、

「……………………だったら、もう、何も言わないさ‼…………俺の力にならないって言うのなら、他の奴らにその力を使われない為にも、シャギー‼ 今ここで俺の為に、死ね‼」

 理不尽な言葉を叫びながら、その引き金を引いた。


「ドゥッガーーーーーーン‼」


 先程とはけた違いの爆発音が響き、アルスラの魔力銃を持った手の、手首から先が魔力銃ごと吹き飛んだ。


「ギャーーーーー‼」

 アルスラの絶叫が響き渡る。


 隅の方で固唾を飲んで成り行きを見ていた彼の部下達が、口を押えて声にならない悲鳴を上げている。


「アルスラ…………拳銃は、銃口に異物が詰まっていると、暴発するんだよ。悪いが、転移の魔法で氷の粒を銃身に詰めさせてもらった…………そんな物は、そんな銃なんて物は、このラドランダーには必要ないから、俺が処分させてもらった」


 手首を抱え、痛みにのた打ち回っているアルスラを見下ろしながら、リョウは冷めた声でそう告げた。


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