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第22話  【『魔海人』】

『魔海人』とは、早い話半魚人のような魔物である。


だが、ただの半魚人では無い。海に住む魔族のような存在なのだ。

魔族と違い水魔法しか使えないが、腕力は魔族を上回り、一握りで人間の頭など卵の様に、簡単に潰してしまえる程である。


北方に住むとされている魔族は人間の血と精気を糧とし、その亡骸はミイラの如く干からびていると言われているが、魔海人は人間そのものを喰らう。特に人の内臓を好むので、ひとたび魔海人が出没するとはらわたの無い死体が山積みになる。

また、雄しかおらず、繫殖する為に人間の女をさらい、子が生まれた後その女をエサとして喰ってしまうのである。


アルスラはここアレッドカで生まれ育っている。リョウは10歳から15歳までアレッドカで暮らしていた。セイは、生まれはどこなのか不明だが、ここで10年近く過ごしていた。

3人共、魔海人の事は良く知っていて、その恐ろしさも身に沁みている。


「アルスラ! 一時休戦だ! 俺達は、魔海人を掃討して来る!」

「頼む‼ 俺は宰主として、ここに詰めていなくてはならないから動けん…………まぁ、たとえ動けたとしても、俺では戦力にはならないだろうからな…………シャギー、死ぬなよ‼」


阿吽の呼吸のようなやり取りに、お互い、昔に戻ったような気安さが心地良い。


「誰に対してそんな事を言ってる⁉ 俺達『ブラット』はS級だぜ。魔海人討伐は任せろ! お前は、指揮系統を確実に機能するようにしておけ‼」

「それこそ、誰に言っている! 俺は、初代アレッドカ宰主だ‼」


リョウとアルスラ二人はお互い顔を見合わせ、ニヤリと笑いながら息の合ったやり取りをしていた。



転移で街に移動したリョウとセイは、そこで信じられないような光景を目にする事になる。


今までに見た事の無い数の魔海人が人々を襲い、阿鼻叫喚のさながら地獄絵図のようだった。大人も子供も男も女も、魔海人の目に入った人間はことごとく襲われている。

ある者は腹を喰い裂かれ、ある者は頭から貪り喰われ、人としての原形をとどめていない死体さえあった。


「……………………酷い‼」

「セイ! この惨状への思いは後にしろ‼ 今は一刻も早く奴らを掃討する事を考えろ!」


リョウとてこの惨状に何も思わないでは無い、しかし、そう思っている間にも人が襲われているのだから、魔海人の一匹でも多く屠る事に時間を使いたい。


魔海人には火属性の魔法が良く効くとされている。そして、体表が乾燥しないように水状の粘液で覆っている為に雷属性と、後は物理的に土属性の魔法で攻撃が効くとされてる。


リョウはセイのバスターソードに、火属性と雷属性の魔法を付与して、

「良いか! 奴らに絶対に捕まるな‼ いくらお前でもあいつらの力には敵わないぞ!」

と忠告する。


「うん! 分かった‼ でも、兄さんも気を付けてよね。それこそ兄さんは僕より力が無いんだから!」

「ああ! 俺もあいつらに喰われたくないからな! 十分距離を取って魔法を発動させるさ‼」


二人はそこで分かれ、手分けして魔海人を掃討する事にする。


セイは、魔海人の動きを読み取り、バスターソードに付与に付与された魔法、火と雷を発動させながら、奴らをバターを切るかの様に切り捨てて行く。

リョウは、近くの2階建ての建物の屋上に転移で上がり、土魔法【石針】に火と雷の属性を纏わせ、確実に魔海人の頭を打ちぬいていった。


しかし、如何いかんせん数が多すぎる。リョウは広域魔法を使いたくても使えない、逃げ惑う人々も巻き込んでしまう事になってしまうからだ。


(どうにかして、奴らを一か所に集める事が出来ないだろうか? このまま、一匹づつ倒していてもらちが明かない! 何か良い方法は無いのか⁉)


と、焦るリョウがふと目を下に向けた時、先日の『二角ボーガル』討伐の時にギルマス代理になった男が、人々を安全な場所に誘導しているのが目に入った。


(…………あいつ、あの時はこんなんでギルマスが務まるかと思ったが、案外良い働きをするじゃ無いか!…………そうだな、魔海人を排除しつつ住民を移動させ、人が居なくなった所で纏めて魔法で倒すか⁉)


そうと決まれば行動は早い方が良い。転移でギルマス代理の側に移動する。


突然現れたリョウに、思わず小さな悲鳴を上げるギルマス代理。

「悪い、驚かせてしまったか? 所で、住民の避難はどうなっている⁉」

「はい! ギルド所属の冒険者達が頑張ってくれたおかげで、後は、もうこの一区画でみんな避難し終えます!」


そのギルマス代理の言葉に、リョウはニヤリと笑い、

「そりゃぁ、良かった! お前も早く移動しろ! これから俺は強力な広域魔法を展開するからな。巻き込まれないようにしろ‼」


リョウは、その一言を残して再び転移でその場を離れた。


後に残されたギルマス代理は、避難誘導をしている冒険者達に、

「彼の話を聞いただろ! ここに居る全員で急いで住民を避難させるんだ! 良いな‼」

と、強く言い放った。



リョウは、一人孤軍奮闘をしているセイの元に転移して行き、

「あの時のギルマス代理が、住民の避難をし終わりそうだ。…………で、危険な目に合わせる事になるが、セイ、お前と俺がおとりになって魔海人を一か所に集める! そこに、俺が広域魔法を展開させる‼」


セイは目を丸くして、あのギルマス代理に対しての感想を言った。

「へぇ~、あのギルマス代理がそんな事してるんだ。やっぱ、ギルマスになるだけの人ではあるんだね! 後、おとりの件は、やるよ!…………だって、この状況じゃぁ、やらなきゃ終わらないでしょ‼」


「絶対に無茶はするなよ‼」

「うん! 大丈夫、任せて‼」


かくして、リョウとセイ二人は、魔海人の目につくように派手に暴れながら、アレッドカ建国記念碑がある、中央広場に魔海人を集めるのに成功した。 


アレッドカ建国記念碑は、アルスラが共和制の政治体制を作り上げた記念に作られた物で、10m位ある石碑に、アルスラの偉業と共和制の理念が刻み込まれている。


その石碑の上に転移したリョウとセイは、下を見下ろしながら、

「いや~、壮観だな~!」

「凄いね、この数‼」


ワラワラと石碑に群がる魔海人の群れ。どこにこれだけの魔海人が居たのか不思議な位である。しかし、不思議がっても居られない。石碑の下のほうで魔海人が積み重なって、登って来ようとしている。


リョウは、アイテムボックスから愛用の杖を取り出し、構えて詠唱を始める。

低くつぶやくようなリョウの詠唱が聞える。それに伴い広場一体の上空に、鮮やかな赤色と黄色そして黒色の複雑な魔法陣が形成されて行く。


リョウの詠唱が終わった途端に魔法が発動された。


「【火炎雷豪弾雨】‼」


炎と雷を纏わせた拳銃の弾のような形状の石が、リョウとセイのいる石碑以外の広場中に、豪雨のごとく降り注ぐ。

その威力は凄まじく、右往左往し逃げ惑う魔海人達だったが、逃げる場所など有る訳もなく、次々に倒れて行く。運よく、広場の端に居た魔海人もただでは済まず、深手負っている物が多く、待機していた冒険者達に打ち取られて行った。


もうもうと立ち込める水蒸気のような煙が収まった時、広場には魔海人の屍が、死屍累々と積み重なっていた。


その様子を見た人々は一斉に歓喜の雄たけびを上げる。

「やったーーーーーーー‼」

「俺達は、助かったのか‼⁉」

「生きているわ! 私、生きているのよ‼」

「凄い! 凄すぎるぞ‼ あの魔法の威力は!」

「お父さん~!お母さん~!私たち助かったのよ~‼」


口々に、生きている喜びの声を上げ、リョウの魔法を称え、まるでお祭り騒ぎのような広場だった。


リョウとセイも生きて助かった事に喜び、ハイタッチをしながら、お互いの健闘を称え合った。

「やったな!」

「やったね!」



「…………後は、アルスラと決着をつける迄だ‼」


そう、強くリョウは決意する。


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