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第21話  【アルスラとの対決】

さっきの場所に戻り、ベーナの戒めを解きながら話しかける。

「密造場所は完全に使い物にならないようにしたが、俺達は他の奴らに見つかる前に、急いでここを出る」


「僕達は『ガディヤ』が効いているふうを装うから、上手く合わせてね! じゃないと僕は君をどうするか分からないよ!」


度重なるセイの行き過ぎた脅しに、とうとうリョウが切れて、セイの頭にこぶしを落とす。

「セイ! そこらへんにしておけ。あまりビビらせると、上手くいかなくなるぞ」

頭を押さえながら舌を出すセイに、リョウは小さくため息を付いた。


幼い頃、人買いによって虐待を受けていた、セイの気持ちは分からないでは無い。そう言う奴らに加担した者を憎く思ってしまうのは、仕方の無い事だとは思う。が、こうも続くと今後に支障が出る恐れがある。心を鬼にしてセイを叱るリョウだった。


「そんな芝居してどうするんだ?」

「ああ、『ガディヤ』が効いているふりをして、アルスラの所に行き、あいつとの決着をつける‼ そして出来れば、あいつを宰主の座から引きずり下ろしたい‼」

(今行くからな、アルスラ! 首を洗って待って居ろ‼)

ベーナの疑問に答えながら、リョウはアルスラと決別すると強く心に誓っていた。



「ところで兄さん、これどうする?」

セイがさっき握りつぶした、魔力封じの首輪の残骸を差し出した。


「アルスラが付けろって言ったからには、付けていないと不自然だよな…………だが、お前はそれを握り潰してしまったからな。さて、どうするかなぁ~?」

腕を組み、思案するリョウ。


「……なぁ、予備が一つ有るんだが………付けてしまうと魔法が使えなくなるけど………どうする?」

「有るのか? だったら問題無い。魔力封じの機能そのものを、無効化させる事は簡単だからな」


セイが握り潰してしまった、魔力封じの首輪の予備があるとベーナが差し出してきたので、これ幸いと受け取ったリョウは、二つの首輪の機能をいとも簡単に無効化させた。


無詠唱で、しかも魔法陣など描かずにあっという間の出来事だった。


そんなリョウの実力を垣間見てベーナは、

(この男は、ただ者じゃねぇ!…………アルスラ宰主にゃ悪いが、勝ち目が無いんじゃねぇか?)

心の中でアルスラの敗北を感じ、時世が変わって行くのかも知れ無いと思った。



機能を無効化させた首輪を、リョウとセイは自分で付けたが、

「正直言って、これをはめるのは嫌なんだよ! 犬か何かになったようでな!」

「そうだよね、デザインがいまいちだから、オシャレには向かないよね!」


緊張のカケラも無い二人のトンチンカンな感想に、ベーナは脱力感に見舞われ体中の力が抜けそうだった。

(何だ、こいつら! これで大丈夫なのか?)

先ほどその実力を評価した男とは思えない。あの時感じた思いを取り消したいと考える、ベーナは悪くは無いだろう。



「アルスラ宰主、ご希望通り二人を連れてきました」

「ご苦労だったな。下がっていいぞ」


ベーナは、躊躇いがちにアルスラに話しかける。

「…………あなたに言われた通りに、この二人に『ガディヤ』を使いここまで連れて来たのですから、女房達を連れて帰っても良いですか⁉」

アルスラは、目の焦点が定まっていないリョウとセイを見ながら、

「そうだな…………まぁ、良いだろう。だが、この先もお前達の働きには期待しているからな」


酷薄そうな笑みを浮かべ、次も、お前達を使うと。その際は、また卑怯な手で束縛してやるとその目が語っていた。


ベーナとジルが部屋から出て行き、アルスラと『ブラット』の二人が部屋に残っている。


アルスラはリョウに近付き、リョウの顎に手を当て、

「お前が素直に俺のところ来ていれば、こんな事はしなかったんだぞ。俺は、お前のその『記憶持ち』の前世の記憶と、画期的で自由な考え方が気に入っていたんだがな。…………薬で束縛されたお前に、あの自由な発想が出来るかな?」

と、ようやく自分のものになったと喜び、ぼんやりとしている彼に語り掛けた。


その時である、リョウの顎に充てられていたアルスラの手を、そのぼんやりしていた彼に掴まれた。

驚きに目を見開き、リョウを見るアルスラ。


「残念だが、あんな薬を使われちゃぁ、さすがの俺も自由な発想なんて出来ねぇな!」


ハッキリとした視線と明確な言葉を話すリョウと、いつの間に動いたのか、扉の前でバスターソードを構えているセイが居た。


「チョと待て!『ガディヤ』が効いていなのか⁉ お前らに使ったのは一番強力なやつだぞ! なぜ意思があるんだ⁉」

「アルスラ! 自分だけが優位に立っていると思うなよ! 『ガディヤ』を無効にする薬は俺達だって用意できるって事だ!」

あり得ない状況に頭が付いて行けないアルスラに対し、彼の腕を掴んでいたリョウはその手を振り払い、魔力封じの首輪を外しながら彼の思い違いを指摘した。



「アルスラ! お前との関係も今日を限りに終わりにする! 正直お前のやり方に俺は付いて行く事は出来ない‼ …………そもそもの基本的な考え方が、お前と俺では水と油ほどに違うんだ。お前が俺に望む役割は、俺にとっては到底受け入れる事が出来ない事ばかりだ‼…………残念だ! ガキの頃、俺はお前の事を本当の兄貴の様に思っていたからな‼」


リョウの血を吐くような慟哭ともいえる言葉に、アルスラは打ちのめされた。

アルスラとて、リョウの事を兄弟同然と思っていたのだ。


なので、この絶縁の言葉に信じられない者を見るかのように、

「なぜだ⁉ 何がお前をそんな風に変えたんだ‼ 俺達は上手くやっていたじゃないか⁉ シャギー! 目を覚ませ!」


リョウが変わってしまったと思っているアルスラは、自分の行動がリョウを自分から遠ざけたとは考え付かないのである。


「あの日、俺がアレッドカを出て行くと決めた時に言ったはずだ! 奴隷制度は止めろと。しかし、お前は俺の言葉に耳を貸すどころか、儲かれば何でもやって良いと言うような事を言ったよな⁉ 俺の前世の記憶が欲しいなら俺の言葉を聞けよ! この世界より色々な意味でずっと進んだ世界にいたんだからな‼」


「…………なぜだ‼ 奴隷を売り買いして何が悪い! 誰だってやっているだろ! 貴重な物を欲しがっている奴にそれを売って何が悪いんだ! そうやって金を儲けて何が悪い‼ 俺はお前はお前の言っている事こそが分からんぞ‼」


「チッ! ラドランダー四色大国で奴隷売買をしているのは、もうこのアレッドカだけだ!」

リョウは、アルスラにの利己主義な考え方に舌打ちをして、他の国の現状を訴えたが、おそらく彼は耳を貸さないだろう。 


アルスラの考え方や信念、彼の常識がリョウには受け入れられない。前世の民主主義の日本の常識で考えると、アルスラの考え方は犯罪行為に等しいのである。


リョウは、かなり危ない事やヤバい事をやって生きて来た事は認めるが、唯一、犯罪に加担する事だけはして来なかった。それだけが、自分の譲れない信念である。


二人の言い争いは、リョウの予想道理に水掛け論になってしまった。


結局、封建制度で生きて来たアルスラと、民主主義で育ったリョウは、この先も分かり合う事は出来なのであろうと、悲しくなったリョウである。



その時である、部屋の外が急に騒がしくなり、扉が激しくたたかれた。

「宰主! 大変です!」


今、己とリョウの事で手一杯になっているアルスラは、扉に向かって激昂し怒鳴った。

「うるさい‼ ここには誰も近づくなと言っておいたはずだ‼ 後にしろ‼」


しかし、扉の外の者は一大事を告げる。

「大変なんです‼ 『魔海人』が大挙して現れました‼」


その一言に、部屋に居た3人は、

「「「魔海人⁉」」」

同時に顔を見合わせ叫んでいた。


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