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第18話  【『白の魔森』】

「それと『ルルナスの雫』以外に、それを守っている魔物『ビッグポイズンビー』の女王バチの魔石が必要なんだそうだ。その魔石に含まれる魔力マナが、薬を作るうえで重要になると薬師が言っていたな」


 魔力が無い物質から作る物はただの薬と言い、魔力を含んでいる物質から作る物は魔法薬と言う。

 そして魔法薬は非常に良く効くとされている。だが、症例は非常に少ないが強い副作用が出る事もある。

 そのうえ、素材も高価な物が多く値段もそれなりになり、貧しい者は手に入れる事が出来ない薬である。


「魔法薬を作るのか? それでは、多くの人には行き渡らないんじゃ無いのか?」


 リョウの疑問はもっともで、高価な魔法薬はお金が無い者は買う事が出来ない。


 しかしアルスラは、

「まあ、普通に考えるとそうなんだが、今回作ろうとしている魔法薬は『ビッグポイズンビー』の魔石さえ手に入れば、『ルルナスの雫』はたくさん自生しているので、量産が可能なんだ。だから、この病気にかかっている人すべてに、無償で行き渡る様にしたい!」


 自分の思いを熱く語るアルスラに、リョウも昔に戻ったような錯覚を覚えたが、

「しょうがない、お前がそこまで言うなら協力してやっても良いが…………だが、また、俺を嵌めようとしたら、今度こそ縁を切り絶交するからな‼」

 と、強く釘を刺した。



 一応釘は刺したが、したたかなアルスラの事だから、今回の事でも何かしら仕掛けてくるだろうとリョウは踏んでいる。

(アレッドカに行く前に、十分な下準備が必要だな。セイにも手伝ってもらわなければな)


 セイのスキル『検索』で『ルルナスの雫』と『ビッグポイズンビー』の魔石から出来る薬を調べてもらった。結果、その二つで出来る薬は魔法薬の『ガディヤ』だと判明した。


「兄さん! 大変だよ! これは危険魔法薬に指定されていて、許可が無いと作れないみたい。…………そう、前世の覚せい剤のような作用があるんだって。それも、覚せい剤より何十倍も強いみたいだ‼」

「…………あいつは、何でこうも懲りないんだ‼ こんな危険なもの作っていったいどうしようって言うんだぁ~‼」

 度重なるアルスラの奇行に、頭を抱えブチ切れるリョウ。


 セイが、もっと詳しく調べて行くと、

「正しい使い方だと、本当に精神の病の特効薬になるみたいだね」

「…………本当にこの薬を患者に使用するのか、それとも他に使うのかによるな」

「そうだね、薬じゃなく使うと、使われた人は相手の意のままに動く、あやつり人形のようになる副作用があるって書いてあるよ。…………だから、危険魔法薬に指定されているのかもね」


 何か非常に嫌な考えがリョウの頭をよぎる。

「…………奴は…………もしかしたらこれを俺に使って、俺を意のままに操ろうって魂胆じゃ無いのか⁉」

「ん~、無いとは言い切れないよね。アルスラ宰主って兄さんの事になると、異常って言える程の事するから……」


 二人は思わず目を合わせ、暗い溜息をついた。


「ハァ~、セイ! その『ガディヤ』に解毒薬ってあるのか?」

「ちょっと待って! 今調べるから…………………あっ! あった!…………でも、素材が『白の魔森』でしか取れないって書いてある」

 一度は喜び、すぐの落胆するセイ。


 所がリョウは、まるでコンビニに行くような気軽さで、

「『白の魔森』か…………まあ、チョッと行って取って来るか」


 そう言ってセイの目を丸くさせた。


「えっ! ちょっと待ってよ! 『白の魔森』だよ! 危険すぎるって‼」

 それに対してリョウの答えは、

「おまえなぁ~、この間話しただろ⁉ 俺が子供に時どこに居たのかを。俺にとって『白の魔森』は第二の…………と~っても危険な故郷だよ‼」

 ニヤっと笑ったリョウの口に、今はもう無いはずの、シャギーの尖った犬歯が見えた様な気がするセイだった。


 かくしてリョウとセイは、アレッドカに行く為の準備として、『ガディヤ』の解毒薬を作るべく、『白の魔森』に素材採取に出かける事にしたのだった。



『白の魔森』の植生はすべてが白色をしており、メジャーな魔物や珍しい魔物でさえも白一色である。

 とにかく『白の魔森』とは白一色の世界で、まともな神経の持ち主ならば、その異状さに1週間も森に居続ければ、気がふれてしまう程の場所である。


 リョウは、子供の頃に魔族のディールに連れられて、2年の間『白の魔森』で暮らしていた事がある。

 ディールの血のせいで魔族化していたとは言え、子供の精神での『白の魔森』の生活は大変だと思われるが、それ以上にディールの相手をする事のほうが、リョウにとっては辛く苦しい思いをしていたので、『白の魔森』での生活自体はそれ程精神的には辛くは無かったのである。


「で、どんな素材が必要だって?」

「…………」


 今現在2人は『白の魔森』に来ている。そう言う事は出かける前に、確認して欲しいと思うセイは悪くないだろう。


「兄さん、そう言う事は家を出る前に確認しようよ!…………まあ、もうここまで来ちゃったからそんな事言っても遅いけどさ」

「…………ほら! 病気で苦しんでいる人を助けるために、…………そう、善は急げって言うだろ⁉」


 リョウも、何も考えずに家を出て来た自覚はあるので、ろくでも無い言い訳をしたが、

「…………すまん!」

 と、素直に謝った。


『ガディヤ』の解毒薬に使う素材は、『白の魔森』に生息している白い『ポイズンスパイダー』の魔石と、『白の魔森』の中程に自生している白いリンゴのような実の『アプト』。それと、同じく『白の魔森』中央にある『シホワロイト山』から流れる『赤黄せきおう河』に生息する、『ホワイトジャイアントクラム』(巨大なシジミの様な貝)が必要である。


『ポイズンスパイダー』そこらへんにゴロゴロいるので、すぐに魔石を手に入れる事が出来た。

『ホワイトジャイアントクラム』も『赤黄河』の河を掘るとザクザク出て来た。この貝は『白の魔森』にしては珍しく毒が含まれておらず、食べる事が出来る。リョウも、子供の時にこれがあって非常に助かったと言っていた。ちなみに、リョウ曰、大変美味だそうだ。


 一番大変な物は白いリンゴの『アプト』だ。『白の魔森』の中程に自生しているが、そこまで行くのに非常に困難を要するのである。


 一般的に『白の魔森』の魔物達は、森以外の同じ種類の魔物に比べても、強さが2~3段階は強いと言われている。例えば、最低ランクのH級魔物のスライムでさえ『白の魔森』ではF級クラスの強さがある。

 なので、『白の魔森』の中程に行くには、かなりの実力と勇気が必要になる。


 …………のだが、リョウは気軽に散歩でもするかのように、『白の魔森』の中程に進んで行く。


「チョ…………チョッと! 兄さん! 待ってって! そんなふうに進んじゃ危ないって‼」

 セイの、焦ったような言葉を聞いてリョウは振り返りながら、

「大丈夫だって! この辺は俺達S級に対抗できるような、危険な魔物は出てこないから」

 と言いながら、白く巨大なカマキリのような魔物を、風魔法『風殺靭』で切り刻んていた。


(…………ハァ、なんか、僕の知らない兄さんがいるみたいだ)


 いつもと全く違う行動をするリョウに、ため息をつきながらは、子供時代の彼がいかに大変だったかを、セイは思わずにはいられなかった。


 リョウは『アプト』が自生している場所が分かっているらしく、迷うことなく『アプト』が自生している場所にたどり着いた。


 そこは、幻想的な白一色の風景が広がっている。セイにとっても見覚えのある草や花、木々も、なんなら土さえもみな白である。

 頭がおかしくなりそうだった。ここに長くいてはダメだと、セイの本能が危険を告げる。


 しかし、リョウはうっすら笑みを浮かべてその景色に見入っていた。



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