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第17話  【アルスラからの依頼】

 アレッドカ共和国の前身は、アレッドカ王国と言った中規模の王政の国だった。


 元々は沢山存在するダンジョンからの上利で国の経済を賄ってきたが、砂糖の生産販売で力を付けたアルスラとシャギーによって、経済中心の共和制の国に移行していった。

 しかし、ダンジョンが消えて無くなる訳では無いので、相変わらず冒険者達で賑わっているのも事実である。


 そんなアレッドカのダンジョンの中で、最も規模が大きいダンジョンを『ルルナス大迷宮』と言う。

『ルルナス大迷宮』は海沿いの崖の上に神殿のような入り口有り、今の所72層までは踏破されてはいるが、最下層は100層を超えるのでは無いかと言われていて、いつ最下層に到達するのか未だに見当さえも付かないダンジョンなのである。



『ルルナス大迷宮』の入り口付近には、冒険者達を相手に様々な物を売る商売人たちが沢山店を出していて、結構な賑わいを見せている。


 そんな店の一つに繁盛している串焼き屋があり、串焼きを2本買っているセイが居た。


「はい! 兄さん。これ美味しいよ!」

「お前な~! 遊びに来た訳じゃ無いんだぞ‼ もっと真面目にやれよ!」

「え~! だっておいしそうだったんだもん…………ほら、腹が減っては戦が出来ぬって言うじゃない⁉」

「ハァ~!」

 盛大にため息をつきながらも、串焼きを頬張るリョウだった。


 ここ『ルルナス大迷宮』に『ブラット』が来ているのには訳がある。それは今から2週間ほど前の事だった。



 アレッドカの『二角ボーガル』騒動から半年程が過ぎたある日の事、リョウにイエロキー聖都サマリーアートの冒険者ギルドのギルマスから呼び出しがかかった。


 いつもの様に扉をノックし部屋に入ると、ギルマスのムーンシャナーとギルマス助手のアーノルドが迎えてくれたが、その他にもう一人見知った顔の人物がいた。


 それは、何とアレッドカの宰主アルスラその人だった。


 リョウにしてみれば、会いたくない人物の筆頭である。何故、宰主自らがこんな所まで出向いて来たか疑問はあるが、それを口にすればろくでも無い事になりそうな予感がして、あえて聞かずにスルーした。


 しかし、リョウの嫌な予感はいつも良く当たるのである。


「こちらは…………まぁ、お前に改めて紹介する必要はないな?」

 ムーンシャナーの言葉にリョウは頭を搔きながらながら、

「はぁ、よ~く知っていますよ」

 と、嫌々ながら肯定した。


「酷い言い方だな! 遠い所をわざわざ来たと言うのに。お前は、親友を労うと言う言葉を知らないのか?」

 笑いながらアルスラが話しかけて来た。


「またそれか⁉ 罠に嵌めるのは親友がする事か?…………悪いが、もう俺はお前の事を友とは思えない。だから、友情を盾に俺に何かを求めるのは止めてくれ‼」


 嫌悪の表情で自分を強く拒否する物言いのリョウに、アルスラは一瞬で表情を消した。


 シャギーにここまで言われて、アルスラは自分の思い違いに今更ながら気が付いた。


 お人好しのシャギー。頼めば断る事が出来ないシャギー。そんな甘ちゃんのシャギーと思っていたが、どうやら別れてからずいぶん性格が変わったようだ。


 だからなのかと、『二角ボーガル』騒動の時のシャギーの態度に納得がいった。あの時シャギーに良かれと思ってした事を、彼は受け入れる事を拒んでいたからだ。


 しかし、アルスラはシャギーの性格が変わろうが変わらなかろうが、今の自分には彼の頭脳がどうしても必要だったのだ。


 今回、イエロキーまでやって来たのは、彼を自分に付かせる為の計画の一環である。その計画に絶対の自信をアルスラは持っている。シャギーの甘さが無くなったとしても、彼は基本的に困った人間を目の当たりにすれば、助けるであろうとアルスラは踏んでいる。


 気を取り直して、張り付けた様な笑いでアルスラは、今日ここまで来た事の理由を話し始めた。


「そうか…………まあ、親友の話は今は置いて置くとして、実は今日ここに来たのはお前に、と言うより『ブラット』に折り入って依頼したい事が有ったからだ」


 事前に話を聞いていたが、改めてムーンシャナーが疑問を口にする。

「依頼だけならわざわざここまで、宰主自らが来る必要は無かったのでは無いですか? ギルドを通せば済む事だと思いますが?」


 アルスラは、未だ、政務にかかわる人材不足を補う事が出来ずいたので、思わず大声で怒鳴ってしまった。

「そのギルドが機能していないので、自分がここまで来るはめになったんですよ‼…………あっ! 申し訳無い。口調が荒くなってしまいました」

「いや、構いません。今、そちらは大変でしょうし、気の休まる暇も無いでしょうから」


ムーンシャナーのねぎらいの言葉も、今のアルスラにとっては屈辱に感じる、複雑な思がしていた。


 そんな彼を見てリョウも疑問を口にする。

「…………お前じゃ無く、代理でも良かったんじゃ無いのか? まだ『二角ボーガル』の後始末は完全に終わった訳じゃ無いだろうに」


「まあ、代理でも良かったのは確かだが、アレッドカの国を代表してイエロキーの女王陛下に、この度の協力に感謝して謁見の目通りを申請した所、了承を得たのでここまで来たと言う訳だ」


「成程ね」


 リョウは、アルスラの言い分に少なからず胡散臭さを感じたが、理由としてはまともなので一応納得はした。


「女王陛下には、昨日お目通りする事が出来てお礼の言葉を述べた所、丁寧な労いのお言葉をかけてもらったよ。…………それで、ついでと言う訳では無いが、今、アレッドカでは『二角ボーガル』に襲われた島々で奇妙な病気が流行していて、その治療に使う為の素材が不足している。そこで『ブラット』にその素材採取を依頼したいと思い、このギルドをたずねて来たと言う訳だ」


「素材の採取など下位レベルの冒険者でも出来るだろう? なぜ、わざわざ俺達『ブラット』に依頼するんだ⁉」


 リョウの指摘は尤もで、素材採取は駆け出し冒険者の必須事項のような物であるからだ。


「まあ、そこら辺のただの素材ならそれでも良いのだがな、その素材の有る場所が厄介なんだ」


 アルスラが言うには、その素材は『ルルナス大迷宮』と言うダンジョンの丁度50階層に有り、『ルルナスの雫』と言う白い花で、その花を守っているのが『ビッグポイズンビー』と言うA級魔物だそうだ。

 この魔物が厄介で、数が異常に多く、A級・S級冒険者達でもおいそれと手が出せない状態だと言う。

『ビッグポイズンビー』は魔法耐性が強く、なまじな魔導士では歯が立たないらしく、かと言って物理攻撃をかけるにしても数の多さが仇になっている。


 そこで、強力な広域魔法を使える『ブラット』のリョウに、採取の協力依頼を頼みに来たと言う事らしい。


 そこまで話を聞いたリョウは、

「まあ、話の内容はだいたい分かったが、…………俺達だってS級だぜ、アレッドカの冒険者とそう変わらないと思うがな?」

「だがお前は特級魔導士だろ? 俺の所の特級魔導士はもう良い年齢としで荒事には向かないんだよ」


 実際、特級魔導士はほぼ名誉職のような状態になっていて、若く特級魔導士として活躍できるのはリョウ位なのである。


「ハァ、分かったよ。で、その病気ってどんな物なんだ?」


 アルスラの屁理屈のような理由でも、病気で苦しみ困っている人が居るのならば、リョウも納得するしかなかった。


 その病気とは、流行り病とアルスラは言っていたが、症状を聞く限り精神的な物では無いかとリョウは思った。

 曰く、昼夜を問わず眠る事が出来ない。幻覚が見える。幻聴が酷い。食事が喉を通らない。と、様々な症状が出ているらしい。数人なら程度ならPTSDの症状と言えるが、次々と人に広まっている事で精神的なものと言えなくなっている。


 治療に使う『ルルナスの雫』は、ある種の麻薬成分を含んでいて、それを使う事によって精神を安定させようと言う事らしい。

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