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第8話  【シャギーリースのアリバイ】

 ロザリードに滞在することななったヴィーゴは、積極的にシャギーリースの事を聞きまわった。


 特に、屋敷以外でシャギーリースの事を聞いて回ったが、全員口をそろえて20日前前後、御館様はここにいたと証言していた。


 このロザリードの領都にある冒険者ギルドでも、下っ端の職員や下位の冒険者に至るまでみな同じ意見だった。


 ここでのシャギーリースの評判はすこぶる良いものが多く、悪く言う者も多少はいるが概ね良い評判だ。だからこそ、ここの領民に同じような証言を強要するのには無理がある。


 八方ふさがりになってしまったヴィーゴは、領主邸でふさぎ込んでいたが、そこにシャギーリースが声をかけてきた。


「どうやら俺への疑いが晴れそうだな。…………実はだな、ここの所俺達『ブラット』を騙る2人組がいる様で、あちこちで悪さをしているらしいくて、俺も対応に苦慮している所なんだ」


 その様な話は聞いた事が無い。ない事実をさも有るように話す、シャギーリースの態度が気に入らない。いつか必ずそのシャギーリースの顔に、泥を塗ってやると心に決め、ヴィーゴは胡散臭うさんくさげに、シャギーリースの顔を見る。


「それがどうした⁉」

「あんたは、俺がリョウになったりシャギーになったりするのを知っているか?」

「ああ、実際この手できさまの指輪を外した時に、姿が変わるのを確認しているからな」

「それだ!」


 突然シャギーリースがヴィーゴを指さし、

「その指輪の事だ。確かに俺はいつも左手中指にこの指輪をしているが、これをはめていようが外していようが何も変わらん。そんな小細工などしなくても、俺はいつでも姿を変える事が出来るからな」


 と言って指輪を外してテーブルの上置き、シャギーリースからリョウに姿を変えてみせ、またすぐにシャギーリースの姿に戻っても見せた。


「なっ、関係ないだろ? 俺は姿を変えるのにそんな小細工は必要ない。俺へ罪を擦り付ける為の変装をするのに、そんな魔道具を使っているんだろうな。元々の自顔が俺に似ている人物が、魔道具でリョウに姿を変える。そしてそれを他者に見せ、さも『ブラット』のリョウが犯罪を犯したと世間に思わせる。なかなか上手い手だ。…………ただし、相手が俺じゃ無かったらだがな」


 フンと鼻で笑うかのようにシャギーは言い、あくまでも、アレッドカに行った『ブラット』は、自分達では無いと振舞うシャギー。


 驚きで目を見開いたヴィーゴは、これでは計画していた事がだめになる。本当に偽の『ブラット』が居ると、他人に思わせる事が出来てしまう。


 もう完全に完敗だった。



 しかし、本当の所は姿変えの指輪の機能を、今は髪飾りに移しているだけで、基本は何かしらのアイテムが無いと姿変えが出来ないシャギーなのである。



 ヴィーゴは、粘れるだけ粘って調べてみたが、シャギーリースのアリバイを崩す事はとうとう出来なかった。


 アレッドカに来た『ブラット』は間違いなく本人達であると、ヴィーゴも当のシャギーも分かっている。だが、お互いの騙し合いの結果はシャギーの知恵が勝っていて、ヴィーゴは消化不良な思いを残して、アレッドカに帰って行く事となった。


 今回は、シャギーに軍配が上がったが、次に会う時は必ず今回の恥をすすがせてもらうと、涼しい顔でこちらを見ているシャギーリースを睨みながら、イエロキーの冒険者ギルドに転移して行った。



 しばらくして、セイが転移で戻って来た。

「セイ! ありがとうな! 助かった。お前にとっては、死ぬほど嫌な奴の送り迎えをさせてしまった。本当にすまなかった」

 と、帰って来たセイを抱き潰さんばかりに抱きしめたシャギー。


 一方、手荒な感謝に恥ずかしさがMaxなセイは赤くなりながら、

「良いったら! もう!…………これで兄さんとの貸し借りは無しだからね! 今度何かあった時は見返り貰うからね⁉」

「おう! 俺に出せる物なら何でも出すぞ、好きなだけ持って行ってくれ!」 


 太っ腹は良いのだが、安請け合いをして後で後悔すると、何度学習してもすぐに忘れてしまうシャギーである。



 アレッドカに戻って来たヴィーゴは、すぐさまアルスラに報告に行き、今後の対策を話し合う。


「宰主閣下。今回は我々の完敗です。あいつは、シャギーは一筋縄ではいかない奴だ! ことごとく俺の裏掻いてくれやがった!」


 今回の件を失敗させられたのが、よほど悔しかったのかギリギリと歯ぎしりが聞えそうな程、歯を食いしばっているヴィーゴに対し、何がそんなに嬉しいのかと思われる程の笑顔のアルスラが、


「さすがはシャギーだ! これくらい難なく凌げなければあいつじゃない! 全く、楽しませてくれる。これで益々あいつが欲しくなった! 何としてもこちらに引き入れるぞ‼」


 気味が悪い程上機嫌のアルスラを見ながら、

(この切れ者の宰主が、あの掴み所の無い男を欲しがるが…………あいつは絶対にこっちには付かない! むしろ、こっちの方が手酷い痛手をこうむりそうだ!)


 ロザリードで実際にシャギーに相対したヴィーゴは、知らぬ事とは言え真実をついていようとは、知る由も無かった。



 その数日後、アレッドカの宰主邸に驚くべき知らせが入ってきた。上級魔物の出現と、被害の報告だった。


 その魔物はリョウ達『ブラット』をおびき寄せる為にいつわった、『二角ボーガル』が本当に出現したのである。『二角ボーガル』は過去100年位は目撃証言が無く、書物に記載されているだけの、幻の魔物とさえ言われている。


 しかし、その被害は恐ろしく甚大で、4つの島を易々と消し去ってしまった。これはもう、アレッドカの国軍及び冒険者だけで討伐する事は不可能だ。そう、アルスラは判断して、ラドランダー大陸全ての冒険者ギルドに、S級冒険者の派遣を要請した。



 しかし、各国の冒険者ギルドでも、対応に困っていた。相手は海の魔物である。特に、ブラクロックとイエロキーは海が無い国なので、海の魔物の討伐は経験が無く、非常に難しい。

 唯一、海に接しているロブルア神皇国は、今、自国が謎の魔物の被害で手一杯なので、早々に冒険者の派遣を拒否してきた。


 となると、やはり『二角ボーガル』の事を知っており、海の魔物にもそれなりに対応出来る『ブラット』のリョウに白羽の矢が立つ事になる。


 しかしリョウとしても、それに対して討伐に向かうのは構わないが、この間の濡れ衣の件があるうえ、たとえアレッドカのS級冒険者達と協力した所で、『ブラット』二人だでは到底『二角ボーガル』を討伐する事は困難だと思わざる終えない。


「ギルマス⁉ イエロキーでアレッドカに行けそうなS級冒険者パーティーってどの位ありますかね?」

「詳しくは、調べなければ分からないが、せいぜい2~3パーティーと言った所だろうな」

「…………まあ、少しでも多いに越した事は無いですが、相手は海の魔物ですからね。尻込みするでしょうね」

「だろうな……」


 リョウとムーンシャナーの話を聞いていたアーノルドが、

「とりあえず、サマリーアートのS級に声をかけてみてから、考えてみても良いんじゃないですかね」

「…………そうだな。そうするか」


 結果として、サマリーアートの役所街にある冒険者ギルド『獅子の館』に所属する、『金の箱舟』が討伐依頼を受けると言って来た。

『金の箱舟』のリーダーは、ロブルア生まれのロブルア育ちで、若い頃は海の魔物討伐も数多くこなしていたらしい。メンバーはリーダー以外はイエロキー出身者だが、リーダーの方針で水の魔物討伐を多くこなしているとの事だった。



 リョウは心強い協力者を得て、アレッドカに向かう事となった。…………一抹の、不安要素抱えながら。


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