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第5話  【リョウ、誘拐される⁉】

 美味しいような美味しくない様な食事を食し、セイの重たすぎる身の上話を聞いて飯屋を出た。


 その足で、ここトラルーシュの冒険者ギルドに向かって行く道すがら、


「この前、俺とアルスラとの関係を話しただろ? おそらく、あのアルスラの事だ、公的機関はすべて掌握していると考えて良いだろう。だから、冒険者ギルドにもあいつの息のかかった奴がいてもおかしくない。いいか、何があってもすぐ動けるように用心しとけ!」

「…………え~と、そんなアルスラ宰主って、いったいどんな人なの?」

「一言で言うなら、超絶切れる奴だ‼ ウッカリしてると自分の知らないうちに、とんでもない状態になっててもおかしくないぞ!」


 その言葉が後に自分自身に降りかかろうとは、今のリョウには伺い知れ無い事であった。



 トラルーシュの冒険者ギルドのギルドマスターは、ヴィーゴと言う大柄でがっしりした体つきの褐色の肌、黒髪で緑の目の壮年の男で、元はS級冒険者だったそうだ。


 彼を一目見たセイが、目を見開き突然細かに震えだしリョウのローブを掴んだ。

 何かあると瞬時に悟ったリョウは気を利かし、

「セイ、すまんが、お前は下で何でもいいから、情報を拾っておいてくれるか?」


 そのリョウの言葉に、青い顔色のセイが頷きながら、

「ん? 良いよ、分かった! じゃぁ僕は別行動だね」

 と言って、その場を離れた。


「『二角ボーガル』の情報なら俺が詳しく話すが⁉」


 不信そうに聞いて来たヴィーゴに怪しまれない為の言い訳に、

「俺達『ブラット』はパーティーと言ってはいるが、二人だけだからな。どんな些細な事でも仕入れておきたいだけさ。別に、ギルマスあんたの情報を疑っている訳じゃ無いんだ」

 と、ありきたりだが、真っ当な返事をしておく。


 ギルドの職員だと思われるなかなかの美人が、コーヒーを淹れてリョウの前においた。

「イエロキーから来た客人にコーヒーを出すのも何だと思うが、今、アレッドカではイエロキーのコーヒーと、ブラクロックのシーレルワインが大流行おおはやりなんだ。まあ、飲み慣れているとは思うが、良かったら飲んでくれ」

「有難く飲まさせてもらうよ。コーヒーは俺も好きだからな」


 一口コーヒーを飲んだリョウは、

(香りはまあまあだな。味は、少し苦みが強いか?)

 と、心の内で評価していた時、体に違和感を感じた。徐々に力が抜けていくのが分かる。

「…………きさま! コーヒーに何を……入れた…………」

「すごいな! お前は! その薬は一口飲むだけで意識が無くなるんだぞ。普通だったら話す事なんか出来ないはずだからな」

「……悪いな………俺は、普通とは縁遠いんだ…………」


 リョウが、意識を保っていられたのはここまでだった。


 後に残ったヴィーゴは、倒れているリョウを見下ろしながら、

「お前は、アルスラ宰主のお気に入りだからな。手荒な事はしないさ」

 と言って、長身のリョウを軽々と担ぎ上げながら手下に指図する、

「おい! 下に降りたこいつの仲間を捕まえろ! 抵抗するようなら痛めつけても構わん! ただし生きた状態で必ず捕まえろ!」


 その声に、数人の男たちが部屋を飛び出していった。


 一足早く下に降りたセイは、忘れもしなあの男の顔を思い出していた。あの男こそ、イースがつかまっていた人買い組織のリーダーだった男だからだ。


 リョウが眠らされて捕まってしまったとは思いもしないセイは、リョウの事は心配いらないと考え、自身はギルドの外に出て人目を避け、隠ぺい魔法が施してるローブに魔力を通した。


 セイの姿が隠ぺい魔法で見えなくなってすぐに、ギルドから男たちが飛び出して来た。

「いないぞ! どこ行ったんだ!」

「バカな今、出て行ったとこだぞ!」

「まだ遠くには行って無いはずだ。探し出して捕まえろ!」

「あのリョウとか言う奴に、言う事をきかせる為の人質にするんだからな! 必ず捕まえろ!」


(えっ! もしかして、兄さん捕まちゃったの⁉…………自分で用心しろなんて言っておいて、自分が捕まちゃったら本末転倒じゃん‼)


 ひとまず、姿を消したまま人と接触ししないよう気を付けながら、ギルドの前で様子を窺っていた時、リョウを担いだあの男がギルドから出て来た。


 ヴィーゴは、ギルドの前に止めてあった馬車にリョウを放り込み、自分も乗り込んで馬車を走らせた。セイも何とか馬車につかまる事が出来たが、姿を消したままでは振り落とされないようしがみ付くのが精一杯だった。


 しばらく馬車で移動して到着した場所は、アレッドカ共和国の宰主邸。セイは、そっと馬車を離れ、物陰に隠れて機会をうかがう事にした。


 一方、ヴィーゴはリョウを担いで領主邸の中に入って行く。


 その様子を見ていたセイは、

(ホントに、兄さんって時々抜けてる時があるから困るんだよね~。頼りがいが有るのか無いのか。ハァ~………………でも、なんだかんだ言っても、兄さんと言うかリョウはイケメンなんだよね。変な事されなきゃ良いけど…………)

 と、少し場違いで変な心配をしていた。



 意識が戻って来たリョウは目を開けて、

「知らない天井…………では無いな、これは天蓋か?」

 などと独り言を言ったつもりだったが、答える声があった。


「気が付いたか?」


 起き上がり、声の方を向けば、そこには10年前に袂を分かった男。アルスラが居た。


「ずいぶんな、招待の仕方だな。ここはどこで、あんたは誰だ? そして、どうして俺は何も着ていない⁉」

 恐らく無駄だとは思うが、とりあえずアルスラを知らないふりをするリョウ。


 笑いを含んだ声でアルスラは一つずつ答えていく。

「まずここは、アレッドカ共和国の宰主邸だ。そして俺は宰主のアルスラ。お前が裸なのは、以前お前が言っていた武装解除は徹底してやれと言った事を実行したまでだ」

 と言って、彼が見せたのはリョウがいつも指にはめている指輪だった。


「面白かったぞ、指輪を外した途端にリョウからシャギーに変わったからな。これは、どう言う仕組みなっている? 売り出したら凄い値で売れそうだ」

「そんな物売っても何の価値も無いぞ! それは俺専用だからな!」


 憮然とした表情のシャギーはそう答え、正体がバレているなら遠慮はいらないとばかりに、

「アルスラ! 俺の服を返せ! 裸の男にゃ興味は無いだろ‼」


「まあ、俺はそんな趣味は無いな。しかし、裸にしておけば逃げる事も出来んだろ? それに…………」

 と言って、自分の首を指さし、

「お前にはとっておきの首輪をプレゼントしてやったからな、感謝しろよ!」


 その時シャギーは初めて自分の首に首輪が嵌めてあるのに気が付いた。魔力封じの首輪である。これを嵌められると、いかなシャギーでも一切魔法を使う事が出来なくなる。魔導士の天敵のような物だ。


「まさかあの悪知恵の働く悪ガキシャギーが、今じゃS級冒険者の魔導士になっているなんて、誰が想像したかね。しかも、この大陸に5人しかいない特級魔導士だって、ホント、参ったよ。あの時は、魔法のマの字も使った事無かったくせに」


 魔法を使う事を封じられたシャギーは、とにかく時間を稼ぎたかった。考える時間が欲しい。そう切実に思わずにはいられなかった。


「あの時は、魔法を使わなかったんじゃなくて、使えなかったんだよ! 確かに俺のジョブは魔導士だが、誰かに使い方を教わらなければ、ただの宝の持ち腐れなんだ! とにかく、早く俺の服を返せ!」


 アルスラは、久しぶりのシャギーとの、この気の置けないやり取りを楽しんでいた。やはり、シャギーとは気が合うと感じている。どうしてもまた、自分の配下に置きたい気持ちが強くなる。


「服を返したら、お前がどうするか想像できるから返す訳が無いだろ。それに、裸のお前に用がある奴もいるからな」

 と言って扉の方に目を向ける。


 そこにはアルスラの情婦のゾフィヤが居た。


 そのゾフィヤの様子がおかしい。目はうつろで、どこを見ているのか分からない。その手には何が入っているか分からないが、小瓶を大事そうに持っている。


 彼女は今、アルスラの情婦になってはいるが、昔はシャギーの年上の恋人だったのである。お互い純粋でシャイだったが、二人の思いが強くなりある日とうとう身も心も一つになり、愛を確かめ合う事が出来たのである。シャギー15歳、ゾフィヤ18歳、二人とも初めての経験だった。


 そのゾフィヤがうつろな表情のまま、シャギーに近付いて来る。


「てめぇ! ゾフィヤに何をした‼」

「彼女には薬を飲ませてある……まあ、俗に言う媚薬だ。これからお前との楽しいひと時の足しにと思ってね。ああ、彼女が持っているのがその媚薬だ、シャギーお前にも飲んでもらう。…………そして、お前はこのアレッドカ共和国宰主アルスラの女を寝取ったとして、罪滅ぼしの為に俺に仕える事になるんだ! 良い考えだろ⁉」


 あまりの事に、シャギーは頭の血管が切れそうな程、頭に血が上って来るのが分かった。


「アルスラてめぇ‼ こんな卑怯な事する程落ちぶれたのかよ! やって良い事と悪い事の区別も付かなくなたってか⁉」

「シャギー、お前はいつ迄たっても甘いな‼ いい歳こいてまだそんな青臭い事言ってんのか? いい加減大人になれよ。……冒険者とか貴族とかお前にゃ似合わん。そんなもん辞めちまって、俺と2人でこのラドランダー大陸のすべてを手に入れようぜ‼」


 お互いに、もう引き返す事が出来ない程、考え方に違いが出来てしまっていた。相容れない、水と油のようである。


「…………まあ、兎に角お前にはゾフィヤを抱いてもらう! 俺はひとまずここを出て行く。お楽しみは二人だけの方が良いだろうからな!」


 嫌な笑いを残して部屋を出て行くアルスラ。あとに残されたゾフィヤは、相変わらずの表情でシャギーに近付いて来る。


 シャギー、絶体絶命なピンチになってしまった。


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