第23話 【リョウの力】
リョウ達の道案内で、思いのほか早く目的地の、クリスタル鉱山に着く事が出来たが、鉱山は前回来た時よりも闇の気が増して、アンデット系の魔物がダンジョンよりあふれ出して来ている。
「ちょっと待て!」
リョウがダンジョンに入ろうとしていた調査隊に声をかける。その声に振り返った面々はリョウの顔色の悪さに驚いた。
「どうしたんだ! 顔色が酷いぞ」
「あっ、いや、これはちょっと………………実は、俺は魔導士でも聖魔導士なんだ。闇の気にあたると、どうしても具合が悪くなる。しかし、これ程の闇の気はお前達にも悪影響が出るだろう。だから、俺が聖の魔力防御の魔法を皆にかける。ダンジョンに入るのはそれからにして欲しい!」
「聖魔導士だと⁉ 本当に存在したんだな」
「…………嘘じゃないだろうな⁉」
「こんな時に嘘を吐いる場合じゃないだろ!」
リョウは、呆れながら言った。
聖魔導士は闇の魔法以外、全ての魔法を使う事が出来ると言われているが、ここ最近で聖魔導士として確認されたのは、シャギーリースの前の『双赤を纏う者』だったので、ゆうに百年以上は聖魔導士はいなかった。
ゆえに、聖魔導士はおとぎ話の中の存在とすら言われている。
「まあ、そう言う事なら頼む。やってくれ!」
調査隊リーダーのスヴェンが、そう決めたので皆それに従う。
杖を取り出し、短い詠唱をする。白銀に輝く美しい魔法陣がメンバー全員を包み込み、防御魔法が完成しする。
防御魔法がかかったお陰か、先ほどと違い動きが断然良くなり、それぞれが得意の得物を構え、ダンジョンに向かう。
リョウもダンジョンに向かって歩きながらセイに、
「バスターソードを出せ! 魔法を付与する。聖と光と火を付与出来るがどれにする⁉」
「アンデット系が多いみたいだから、聖で!」
「分かった!」
と言って、聖の魔法をバスターソードに付与した。
それを見ていた他のパーティーの一人が、リョウに向かって、
「なあ? 俺の武器にも魔法を付与してくれるか?」
「ん? ああ、良いぜ! 得物を出せよ」
「助かるぜ。俺は火の属性を持っているから火で頼む!」
「任せろ」
当然の様に一人に行えば、我も我もとなり、いちいち一つずつやるの面倒くさくなったリョウは、
「分かった! 魔法を付与して欲しい奴は、得物をここに全部出せ! みんなまとめて付与してやる‼」
結局、『ブラット』を良く思っていないA級パーティーのボリスを除く、すべてのパーティーメンバー全員の武器に魔法を付与した。そして、先ほどから魔法を使いまくっているリョウの、魔力量の多さにドン引きされた。
アンデット系の魔物は取りつかれる事に気を付けるのが鉄則だ。取りつかれたら最後、少しでも傷をつけられたら、自分もアンデットと化してしまう恐れがある。
そう言う事なのだが、とにかく数が多い。
「これはもはや、スタンピードと言っても差し支えないのではないか⁉」
「これじゃあ、中に入る事さえ出来ねえ」
どうするか悩んでいた時、例のA級パーティーのボリスが、
「お偉い聖魔導士様が居るんだからよ、聖魔法でパッと始末してもらった良いんじゃねぇか⁉」
何がそんなに気に入らないのか、リョウに喧嘩を売る様に突っかかってくる。
調査隊のリーダーでもあるスヴェンも、少し考えて、
「リョウ! あいつの言い様はどうかと思うが、言っている事は一考の余地が有ると思う。先ほどから魔力を使わせてしまって申し訳ないが、突破口を開くためにも魔法で何とか出来ないか?」
あのA級の奴らは気に入らないが、このままででは何も進展が無いので、しぶしぶリョウはOKした。
ひとまず皆を入り口から遠ざけて、リョウ自身が入り口の少し手前に陣取る。
杖を構え、いつもの様に低く呟くように、囁くように詠唱する。
「……………………闇を払い、我らの道を示したまえ【聖波動光竜】‼」
辺り一帯を目を開けていられない程の光が、渦巻き流れダンジョン目掛け放たれた。
光の奔流が収まった時、あれほど居たアンデットはすべて姿を消していた。
(…………スゲェ…………!)
(なんだ? 何が起こった?)
(あれだけの威力の魔法を使って、立っていられるって、やっぱり特級魔導士は違うんだな‼)
(化け物か?あいつは)
皆、良好な感じで受け止められた。あのボリス以外は。
スヴェンは今が好機と、
「今のうちに中に入るぞ。あらかたアンデットは消滅したが、おそらく中にはまだかなりの魔物が居るはずだ!気を引き締めて行くぞ‼」
「おお‼」
と、全員の返事と共に、ダンジョン攻略が始まった。
一階層はリョウの先ほどの魔法で、結構な数のアンデットを始末したので、割と簡単にボス部屋まで辿り着いた。
中に居たのは、スケルトンジェネラル1体とスケルトンナイト3体。4つのパーティーで、それぞ1体づつれ受け持って戦う事にしたが、ここでまた例のボリスが、
「ジェネラルはドラゴンスレイヤーが殺れば良いじゃないか⁉ それだけの力が有るんだろう⁉ やらなきゃドラゴンスレイヤーの名が泣くぜ⁉」
とうとうリーダーを務めるスヴェンが切れた。
「いい加減にしろ‼ きさまはさっきから何がしたい! 場を乱すのは止めろ‼」
ボス部屋に居るのに、彼に食って掛かるスヴェン。これはまずいと思いリョウはスヴェンに近寄り、
「大丈夫だ! 俺達はあれを殺れる! 今は、全員戦いに集中しろ!」
「しかし…………」
「全て事が終わってからで良い! 話し合いはそれからでも遅くない!」
それで方針が決まった。それぞれのパーティーで、1体づつスケルトンナイトを葬っていく。
『ブラット』の任されたスケルトンジェネラルは、セイのバスターソードの1激であらかたバラバラにされ、止めにリョウの光属性魔法で綺麗に消滅させられた。
他のパーティーは、唖然としてその様子を見ていたが、ボリスは悔しさを隠そうともせず、『ブラッと』の二人を睨んでいる。
続く2階層は闇属性の魔物のオンパレードであった。
リョウとしては、またあいつらにあれこれ言われる位ならと、率先して光魔法で数を減らす。
その他のパーティーの魔導士達も、精力的に光魔法や火属性魔法で数を減らしていく。
2階層のボス部屋に居たのは、闇の気に犯され黒く変色をしたクリスタルホーンディアだった。
本来、クリスタルホーンディアは聖の気を纏い、純白の毛並みが美しい聖獣に近い魔物である。この、クリスタル鉱山に淀んでいる闇の気に当てれられ、本物の魔物と化していた。
聖の気が闇に変わる。この状態をリョウは複雑な思いで、クリスタルホーンディアを見つめている。
そこに自分の魔族と化した姿が重なり、何とも言えない思いが、戦う行動を妨げている。
「何、ボサッとつっ立てんだよ! やる気がねえなら退けよ! 邪魔だ! お偉いお貴族様よ‼」
ボリスがリョウに向け暴言を吐く。リョウがロザリード辺境伯であると言う事は、S級には通達が行っているがA級には伝えていない。どこからその情報を得たのかは分からないが、今、それを指摘する場合ではないはずである。
リョウを指さし、
「あいつはロザリード辺境伯だと言うのに、イエロキーに籍を置いているんだ! ブラクロック王国を売った売国奴だ‼」
セイが、真っ赤になって反論する。
「違うよ! 先に兄さんを要らない者としたのは、この国じゃないか! 何も知らないくせにいい加減な事言うなよ‼」
「だったら何で姿を変えてる⁉ やましい事が有るからだろ! ないなら堂々と『双赤を纏う者』で良いじゃねぇか⁉」
唇をかみしめ、握り拳を震わせていたリョウが吠えるように叫ぶ。
「やめろ‼ 今はそんなこと言っている場合じゃない‼…………あいつは俺が倒す! 全員手を出すな、黙って見てろ‼」
リョウは指輪を外し『双赤を纏う者』の姿になり、一つハイポーションを飲み干し、ブラッククリスタルホーンディア向き合い、詠唱を始めた。




