表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/146

第22話  【スタンピード?】

 2人で30人をどうにかするのは、実は簡単な事だった。リョウは魔導士なら誰もが知る実力者で、魔法で眠らせることも出来るし、痺れて動けなくすることも出来る。結局やり放題である。


「さて、どうするかな?」

「以前、人身売買の組織を壊滅させた時と同じに、悪夢を見せるとか?」

「それでも良いが、俺達の事を思い知らせるって事にはならないよな」

「だったら、痺れさせてから、一人ずつボコる!」

「ワォ!過激~! よし!それでいこう‼」


 ニヤっと笑ってリョウは杖を取り出し、広域魔法の詠唱を始めた。


 薄黄色い魔法陣が形成される。その魔法陣に気付いた男達が騒ぎ始めるが、一足遅かった。リョウの魔法が発動される。

「【極痺破】!」


 途端に30人は痺れて動けなくなってしまった。だが、口は回るようで、

「てめぇ! 何しやがる!」

「何って? 俺達をるって言ってたから、殺されたらたまらんから、先制しただけだが?」

「魔法なんて卑怯だぞ!」

「魔導士にそれを言うかね? 頭は大丈夫か?」


 などとツッコミながら、リョウとセイは次々に男たちをボコって行く。最後の一人の首根っこを掴み、

「ドルセン男爵の悪だくみの証人になれば見逃してやる。だが嫌だと言うなら、お前らが俺達にしようとしていた落盤事故に遭うだけだ。どうする?」


 イケメン顔のリョウではあまり凄味は出ないが、せいぜい凶悪そうな表情を作り男らを脅した。

 が、結局、全員を縛り上げ近くの小屋に放り込み、出入り出来ないように進入禁止の結界を張っておき、その場を後にした。


「さて、これからどうするかね?」

「ん~、一応、そのクリスタルホーンディアを、見に行った方が良いんじゃない?」

「まあ、そうだな」

 二人は、クリスタルが取れると言う鉱山に向かう。



 鉱山に向かうにつれリョウの体調がおかしくなる。そう、あの謎のオアシスの時と同じように。

「ちょっ、ちょっと! 大丈夫兄さん⁉」

「…………やばいかもしれん……魔力防御の結界をはるわ…………」


 あきらかに闇の気配が強くなっていくのが分かるので、具合の悪くなったリョウは急ぎ結界を張る。

「ハァ~、息が楽に出来るぜ!」


 セイはそんなリョウの様子を見ながら、躊躇ためらいがちに話を切り出した。

「…………兄さんに聞きたい事が有るんだ。…ああでも、話したくないならそれで良いんだけど、出来れば、聞かせて欲しいんだ」

「何だ、改まって?」

「…………この間の話で兄さんは闇属性の、魔族になってしまったって言ってたよね? どうやって聖属性に戻ったの?」


 その疑問はもっともな話で、本来、聖属性と闇属性とでは、水と油の様に相反するものである。

 現状、リョウは聖魔導士として、聖の魔力しか有していない。なのに自分には、半分は魔族の血が流れていると言う。


「……正直、俺にも良く分からん。あの10歳の日、ディールに置き去りにされ時、見た目は人間と変わらないようになってはいたが、まだ魔力的には闇属性だったんだ。それが、一か月程で聖属性に変わったのには本当に驚いたがな」


 リョウ自身も、常々疑問に思っていた。それで、仮説とも言えないが思い当る事が有る。

「あの最後の日に、ディールが俺の胸に埋め込んだ、魔石が関係しているじゃないかと思うんだ。まあ、状況的にそれしか考えられないしな」


「その魔石って、今も胸にあるの?」

「ああ、ある。…………俺も、聖属性の魔力に満たされてから、どうにか出来ないか色々試したけど、取り出す事が出来なかった。だから、正直言って、魔族に変貌する時限爆弾を抱えている様な状態だ。…………何かの切っ掛けで、魔族に変わってしまうかもしれないと考えると、恐怖でどうしようもなくなる時が時々あるんだ……」


 そんなリョウの告白を聞いて、下を向き後悔したようにセイは謝る。

「ごめんね。嫌な事聞いて」

「気にするな! お前の疑問はもっともな事だからな。それに今は、闇の気配に超敏感な聖魔導士だ‼」


 と、いつもの様にセイの頭に手を乗せ、クシャクシャとかき混ぜた。



 鉱山の入り口に着いた二人が感じたのは、異常ともいえる闇の気配だった。リョウは、改めて二人に聖属性の魔力防御の結界を張る。

「どうやらこの鉱山は、ダンジョン化したみたいだな」

「そうだね。だとしたら、ダンジョンボスかダンジョンコアをどうにかしないとだね⁉」

「そうだな」


 二人は、警戒しつつ鉱山に入っていく。

 しかし、鉱山の中は闇の力によりダンジョン化が進み、異常なほどの魔物達であふれている。


「…………これは、もしかして、スタンピードの前兆なのか⁉」

「まずいよ! 僕たちだけじゃどうにもならない数だ!」

「いったん引くぞ! 王都の冒険者ギルドに行って報告しなければ‼」

「うん! 分かった!」



 王都ホラストロイズの冒険者ギルドに転移した二人は、ドルセン男爵領のクリスタル鉱山の事を報告した。

 もちろんドルセン男爵の、クリスタルホーンディアの密猟の事も含め、詳しく話をする。


 ホラストロイズのギルドマスターはボールスと言う男で、どう見ても元冒険者には見えない。

 詳しく聞いてみると、以前は、とあるS級冒険者パーティーに所属していて、主に会計とか雑務を行っていたらしい。

 そのパーティーが解散した事により、ギルマスに就任したとの事だった。

 なぜ、会計係がギルマスになったかと言えば、ボールスは人を纏めたり、人との折衝が上手く、なおかつ数字にも強く、結構人望も有るので、多数の推薦によりギルマスに決まった変わり種のギルマスである。


「そうですか。では緊急に調査隊を派遣して、詳しく調べる必要が有りますね。お手数をお掛けしますが、ロザリード卿も…」

「うっうん! 『ブラット』のリョウです!」

 一つ咳払いをして、強く注意を促す。リョウがロザリード辺境伯だと言う事は、リョウのたっての頼みで、ギルマス及びS級冒険者にしか知らされていない。


「あっ! これは失礼しました。『ブラット』のお二人も関係者として、ご同行して頂きたい」

「分かりました。いつ頃出発出来ますか?」

「これから人を集めるとしても、明日の朝には出発できると思います」

「では、明日の朝、ギルドに来ます」

「よろしくお願いします。…………ああ、それとドルセン男爵の件は、私に任せて下い。悪いようにはしませんから」


 ボールスは人によさそうな顔に、黒い笑顔を浮かべてそう言った。


 リョウは顔を引きつらせながら、こう言う人は絶対に怒らせてはいけない、そう心に誓うのだった。



 翌朝、S級1組及びA級2組の冒険者パーティーが、リョウ達を含め4組がギルドに集まった。


「今回の目的は、ドルセン男爵領にある、クリスタル鉱山のダンジョン化及びスタンピードの調査だ! 昨日、そこに居る『ブラット』からの報告で決まった」

 と、この調査隊のリーダーを務める、S級パーティー『暁の明星』リーダーのスヴェンが、説明を始める。


(『ブラット』って、イエロキーのS級でドラゴンスレイヤーだよな?)

(何だあれ? あんなんでS級だと?)

(本物か?)


 リョウの優男ぶりを見た、面々はヒソヒソとリョウの品定めをしていた。

(ひでぇ~言われようだな~。まあ、自分でもそう思うけどな)


 中には実際に声に出して疑う者もいる。まだ若そうな一つのA級パーティーのボリスだ。

「あんたら、本当に『ブラット』なのかよ⁉」

「まあ、疑うのは勝手だがな…………何だったら、冒険者カード見るか?」

「おう! 一応確かめさせてくれ。かたりだったりしたら足手まといだからな‼」


 分からないでも無い。隣国のS級冒険者で、ましてやドラゴンスレイヤー等とすぐには信じられない。簡単に確かめる事が出来ないので、いくらでも成り済ます事が出来てしまうからだ。


「静かにしてくれ! その事についてはもう確認が取れている。そんな事をして時間を無駄にしたく無い。出発するぞ!」


 一部パーティーの不満を残して、ドルセン男爵領に出発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ