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第21話  【ドルセン男爵】

 あらかた決めなければならない事を決めたのち、国王は改めてシャギーの着ている物に目をやり、

「さっきは驚いたが、その方、とんでもない物を着ているな」


 自分でもやりすぎたと思っていたので、苦笑いをしながら、

「まあ、高貴な方々をお相手するには、少し気合を入れねばとこうなってしまった次第です」

「ハハハハハ……! あの、爺共の相手は俺でも一苦労するからな! 初っ端から度肝を抜かせる事にしたんだな。良い考えだったと思ったか? 逆に、完全に目を付けられたようだぞ」

 国王に、面白がられてしまっている。


「あの方々に目を付けられた位なのは、たいした事では有りません。こちらは日々、命を懸けて戦っている身ですからね」

 と、肩をすくめてみた。


 シャギーが冒険者だと言う事を改めて認識した、国王と宰相だった。



 国王の御前を辞して帰路に就くべく王宮内を歩いていると、一人の見るからに鼻持ちならない貴族に声を掛けられた。

「ロザリード卿、おぬしを探していた!」

「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

「きさま! 隣の領地の領主の顔も分からぬのか⁉」


 そう言われても、なったばかりの領主であり、今日会ったばかりの人では覚えようが無い。


「隣の領地と言う事は、ドルセン男爵で」

「ふん! そうだ、さすがに名前は知っているようだな」

「で、私に用とは?」

「我が領で暴れているクリスタルホーンディアを始末しろ!」


その物の言いように呆れて、しばし言葉が出ない、

「……………………それは、冒険者『ブラット』のリョウとして依頼しているのでしょうか? それとも、隣の領主なのだからそれ位やれと言う事でしょうか?」

「両方だ! 分かり切った事を言わせるな!」


 余りと言えばあまりに考えなさすぎの言い様である。男爵が辺境伯に対しての言葉遣いでも無いし、ましてや爵位の順位を完全に無視した言動である。恐らく冒険者に対するの蔑みと、若造に対しての驕りによるものと思われるが、このまま言わせておくわけにはいかない。


「では、冒険者に依頼をする場合は、冒険者ギルドの方に依頼を出してください。なお、私への依頼はイエロキーの冒険者ギルドへお願いします」

「なんだと! そんな手間をかけられるか⁉ つべこべ言わずにさっさとやれば良いんだ‼」

「と言われましても、私はイエロキーの女王陛下の子飼いの冒険者です。ですので、勝手な事は出来かねます。依頼はぜひイエロキーの方へお願いしますよ」


 呆れた様子を隠そうともせずにそう告げるシャギー。

 片や、自分の言い分が通りそうも無いと悟ったドルセン男爵は、ぐぬぬぬ…と言う歯ぎしりが聞こえてきそうな様子で、

「……若造が! いい気になるなよ‼」

 捨て台詞を吐く。


 段々とギャラリーが増えてくる中、シャギーはその場を離れようとしたが、肩越しに振り向き、

「言い忘れたが、確かに俺は若造だがな、爵位の上では男爵位よりずっと上の辺境伯って事、あんたは分かって言っているんだろうな⁉」

 そう云い捨てて、その場を後にした。


 後に残されたドルセン男爵は、今さらながらその事に気づき、周りの冷たい視線を避けつつ、顔を青くして慌ててその場を去って行った。


 シャギーはロザリード辺境伯の控室になっている部屋に行き、マリアーナとシュテハンと合流して帰路に就いたが、さっきの出来事を話すと、シュテハンが、

「あの御仁は、何かにつけてロザリードに、言いがかりをつけて来るんだ。それで、私も困っていたんだが、正式な領主のお前が立ってくれたので、これで大人しくなるかと思えばそうでも無かったようだな」

「もしかすると、あのくそ野郎とつるんでいたのかもな」

「あのくそ野郎?」

「…………俺の血の半分だ!」

「ああ、有りそうな事だな……」


 それぞれ思いだしたくもない事を思い出して、馬車の中の空気が淀む。

 そんな嫌な気分を馬車で長々と味わいたくないシャギーは、力技とばかりに馬車ごとロザリードに転移させてしまい、マリアーナとシュテハンを驚かせ、呆れさせていた。



 そんな事が有った数日後、イエロキーの家で久しぶりにのんびりした1日を過ごしていたが、冒険者ギルドから手紙鳥が来た。


 ギルドに向かい、ギルマスからブラクロックのドルセン男爵から、クリスタルホーンディアの討伐依頼が来たと言われ、

(あいつ、マジに冒険者ギルドに依頼を出したのかよ⁉ 全く、何をしたいんだ?)

 ドルセン男爵の目的が何か分からないので、どうするか思案に悩むリョウである。


 とりあえず、ブラクロック王宮での出来事を、ムーンシャナーに話をした。

「そんな事が有ったのか? おまえの言う通り、その御仁は何を考えているんだろうな?」

「王宮で会った時は、生意気な若造に難癖をつける様な感じでしたが、こうなると本当にクリスタルホーンディアの被害に困ってるんじゃないでしょうかね?」

「まあ、それもあり得るか。では、行ってくれるな」

「正式の依頼ですので、相手が誰であれ行きますよ」


 何が待ち受けているか分からないが、リョウとセイ二人は再びブラクロック王国に向かう事になった。



 王都のホラストロイズの冒険者ギルドで、情報を得ようと寄ったのは良いが、途中、リョウの姿でいたにも関わらず、お忍びで街にくり出していたアサール国王にシャギーとバレてしまい、街中くまなく引きずりまわされたのには、苦笑するしか無かった。


 その時アサール国王にセイを紹介したのだが、のちにセイは、

「なんか、暴れん◯将軍みたいな国王様だね」

 と、当たらずとも遠からずな、笑いたくなるような感想を言っていた。



 ドルセン男爵領に入り、領都に向かいがてら情報を集めた。クリスタルが取れる鉱山でくだんの魔物が人を襲い、人的被害と経済的困窮が深刻らしい。


 領都に入り、ドルセン男爵の館に向かう。


 ドルセン男爵は、たずねて来た冒険者『ブラット』のリョウの姿を訝し気に見て、

「誰だお前は⁉」

「依頼を受けて来た『ブラット』のリョウと弟のセイだが?」

「顔が全然違うではないか⁉」


呆れた様子で、ため息一つ付き、

「ハァ~。まさかと思うが、ロザリード辺境伯で来ると思って無かっただろうな? このブラクロックで赤い姿で冒険者なんか出来る訳ねぇだろ。一発でロザリード辺境伯だってバレる! 少し考えれば分かる事だろが‼」 

 吐き捨てる様に告げる。


 ドルセン男爵はリョウからの暴言の数々に苛立っていたが、相手は辺境伯なのでそれを表に出す事が出来ずにいたが、ふと気がついた。今リョウは赤いロザリード辺境伯ではなく、黒い冒険者だと言う事に。


 ニヤっと嫌な笑みを浮かべて、

「きさまは、今、冒険者としてここに来ているのだな?」

「ああ、そうだ。それがどうした⁉」

「だったら、何でも言えるな! さっさとクリスタルホーンディアを始末してこい! お前の言う通りギルドに依頼を出してやったんだ! 金も払ったんだその分働け! 冒険者風情が‼」


 まさに、権力を笠に着るお手本の様である。


 呆れた様子を隠そうともせずに、

「言われなくても行くさ。それが俺達冒険者の仕事だからな。ただ、一言言わせてもらうが、今は冒険者だが、領地に帰ればロザリード辺境伯だからな、俺は!」

 と言って男爵邸を後にした。



 問題のクリスタル鉱山に行く道すがら、リョウは考えていた事を口にする。

「なあ? クリスタルホーンディアって、魔物と言うより聖獣に近かったように記憶してたんだがな?」

「あっ! やっぱりそうなんだ。僕もおかしいなって思ってたんだ」

「この依頼、何か裏が有るのかもな」

 何があっても、良いように気を引き締めて鉱山に向かって行った。


 鉱山近くの村に着き、村長に話を聞こうとしたが、村人が誰もいない。それでも、人の気配がする方向に向かって行ったが、明らかに真っ当な村人とは思えぬ男たちがたむろっていた。

 リョウとセイは隠ぺいで姿を隠して近づき、男たちの話に耳を傾ける。


「男爵は、冒険者ギルドに依頼を出したって?」

「ああ、何でも例の『双赤を纏う者』をわざわざ指名したそうだぜ」

「あのおっさん、貴族社会では身分が下なもんだから、ポッと出の若い辺境伯がずいぶん気に入らないようだからなぁ!」

「そうそう! 前のロザリードの領主代行とは気が合ったみたいで、色々悪だくみしてたからな!」

 キシシシㇱ……と、品の無い笑いをしている。


 何の事は無い、思った通りの事に脱力感すら感じてしまうリョウとセイだった。


「で、あいつらが、クリスタルホーンディアを倒したら、あのクリスタルの角をどうやって俺達が手に入れるんだ?」

「まあ、あっちは2人、こっちは30人から居るんだ。全員であの2人をっちまえって事だ!」

「良いのか? 相手は辺境伯様だぞ⁉」

「構うもんか! 死体は鉱山に放り込んで、落盤した事にすりゃあ良いんだよ!」


 どうしてこう悪い奴らは、皆同じような事を考えるのだろうか? 頭が痛いリョウである。


 クリスタルホーンディアは、滅多にお目にかかれない希少な聖獣である。そのクリスタルで出来ている角は、超高値で取引される。それを狙っての事らしい。たまたま、この辺りで見かけたらしいが、誰にも捕まえる事が出来ず、リョウ達に討伐と偽ってギルドに依頼を出したらしい。


「これからどうするの?」

「あいつらに、俺達がどうにかされる訳が無い事を、ちょっと思い知らせてやるか⁉」

「そうだね!」


 二人は、悪い顔でうなずき合った。


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