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第18話  【結婚するって、本当ですか?】

「で、結局マリアーナさんと結婚する事にしたんだ」

「…………ほぼ成り行きだけどな」

「そんなこと言ってさ、兄さんは前からマリアーナさんの事好きだったでしょ?」

「バッ! 何言ってる! おっ、俺は…………」


 イエロキーに戻ったリョウを待っていたのは、セイの何とも言えない生ぬるい視線と、盛大な冷やかしだった。

 リョウは、常々ポーカーフェイスで通しているが、セイからしてみればリョウは、結構表情が顔に出るので、非常に分かりやすいのである。


「それで、これからどうするの? ロザリードで暮らす事にするの?」

「ああ、それなんだけどな…………」


 基本はイエロキーに居て、女王陛下の依頼を受けつつ、その他の時間はロザリードで、領主仕事をやると決めて来たとセイに告げる。


「結局、領主もやる事にしたんだ……」

 何か、可哀そうな子を見ている様なセイに言われてしまった。


 二重生活にはなるが、転移が有るのでそれ程大変な事では無いとリョウは言うが、この先ブラクロック王国との係わりも出て来るであろう事を考えると、たとえ転移が有っても大変になる事が目に見えている。


 それを指摘してみたら、

「まあ、その時はその時に考えるさ」

 と、諦めた様な、達観した様な、答えをするリョウだった。


「それで式にはお前も出てもらうからな!」

「…………ええっ! 何でさ⁉ 僕は関係ないじゃん!」

「関係あるさ。俺の弟だからな。唯一の親族代表だ!」

「違うし! 僕はシャギーリースと血が繋がっていない赤の他人だってば!」

「酷いな、お前は! リョウだろうがシャギーリースだろうが、お前は俺の弟だろ⁉ それにもう、決定事項だから変更は出来ないからな!」


 ロザリードで、自分の意見がほぼ通らなかったので、セイに対して子供っぽい八つ当たり的な事をしているリョウである。

 セイにしてみれば、完全に貰い事故になってしまった。



 さて、一息ついたリョウは、結婚する旨を冒険者ギルドのムーンシャナーに報告に行った。


「と、言う訳で、ロザリードのランズベル卿の一人娘、マリアーナと結婚する事になりました」

「と言う訳では無い! お前は女性にそんな酷い事を言ったのか⁉ そんな奴だとは思わなかったぞ‼」

 リョウの報告に、ムーンシャナーは怒りもあらわに憤慨している。


 言われた事は、もっともな事なので、

「はい! 海よりも深く反省してます‼」

 直立不動で、敬礼でもしそうな勢いで、リョウが言った。


「……まあ、それにより結婚する羽目になったし、領主もしなくちゃいけないしで、結局全部自分に返ってきましたよ………」

 肩を落として、トホホ……と言う言葉が聞こえてきそうである。


「まあ、結婚をあれほど嫌がっていたからな。…………ところで、なぜ結婚をしたく無かったのだ?」

「色々と諸事情が有るんですが、一番の理由は、ただ身軽に自由で居たかっただけです」

「お前もいい加減だな! まあ、なんにせよ、結婚はいいぞ! 子供が生まれたら人生バラ色になるからな!」

「それは、アーノルドの経験ですか?」

「そうだ! リョウお前も早く子供を作れ! 可愛いぞ子供はな‼」


(そうは言っても…………俺は子供は作れないからな……)

 マリアーナに申し訳ない思いを抱え、結婚の準備は進んで行った。



 そんな折、女王陛下からの手紙鳥が飛んで来た。

 今後の方針を決める事と、マリアーナを連れて来いとの事であった。


 リョウは、いったんロザリードに転移をしてから、マリアーナを連れて改めて王宮に転移した。

 その折、マリアーナは着て行くドレスをどうするか悩みまくっていたが、シャギーの今日のコスプレ衣装は、普通の貴族の子弟風だったので、無難なドレスに落ち着いた。

 いつの時代、どの世界でも、女性のファッションにかける意欲は、リョウには分からないとしみじみ思うのであった。


「お召しにより、シャギーリースと婚約者であるマリアーナ、参上いたしました」

 今日は、立位の略式の礼で挨拶をする。


「良く来ましたね。まずは、椅子に座って下さい」

 座る事を進められたが、シャギーは、

「本日、コーヒーはいかが致しましょうか?」

 と、伺いを立てる。

「今日、あなた方は私の友人としてのお客様ですので、お茶はこちらで用意いたします」

 友人と言われ、慌てて、

「そんな、友人だなんて恐れ多いです!」

「あら、私はいつでもあなたの事はお友達と思っておりますよ」

 ホホホと品良く笑いながら、楽しそうに二人を見る。


 その間、マリアーナは以前ここに来た時と違い、ガチガチに固まっていた。

 前回来た時は、シャギーを絶対に連れ戻すと言う決意をしていたので、そう硬くならずに済んでいたが、今回はシャギーの婚約者としての訪問である事で、心が舞い上がってしまいどうしたら良いか分からなくなっていた。


 例のごとく二人のメイドによって、高級なお茶が入れられ、女王陛下と二人に供される。


 女王陛下は、マリアーナを見つめ、

「先日お会いした時も美し方と思いましたが、今日は一段と美しさに磨きがかかっていますね。きっとこれは、婚約が調ってあなたの幸福感が影響しているのでしょうね」

 その言葉にマリアーナは耳まで赤くなり、

「はい! 今はとても幸せです」


 隣に座っていたシャギーは自分が言われた訳でも無いのに、自分の髪と同じくらいに顔が赤くなっている。


 目を細め微笑みながらシャギーに向け、

「良い家庭を築いて下さいね」

 心からの、温かい言葉をかけた。


 女王陛下が纏う雰囲気が一瞬で変わり、直ちに本題に入る。


「あなたは、正式にロザリード辺境伯なったと伺ってますが、間違いはありませんか?」


 イエロキーのあの家を本拠地にしていたいリョウは、

「…………はい。間違いではありません。ですが、私は女王陛下の手足でもありますので、今後とも是非依頼をして頂けたらと思っております!」


 それに対し女王陛下は、また違う事を考えている。

「そうですね。その事については特に変更は有りませんが……ブラクロック王国の正式な貴族となる事で、あちらの国とこちらの国との間で、いささか問題が出て来るようになるでしょう」

「やはりそうなりますか?」

「此度の件では、二国の貴族籍を有する事になります。今までそのような前例は有りませんので、私も覚悟を決めてかかるつもりです」


 二国に迷惑をかけてしまうと分かっているので、

「お手数をおかけして申し訳ございません」


 と謝る事しか出来ない。…………が、


「いいえこちらこそ、あなたを手放す事など絶対にしたくはありませんので…………」

 微笑んでいる目が怖い女王陛下だった。


 その後、二人の馴れ初めを根掘り葉掘り聞かれたり、このイエロキーの社交界でも、リョウスケ・クジョー準公爵として結婚のお披露目をしろと言われたり、結婚祝いは何が良いかと聞かれたりと、心身ともにとても疲れた王宮参内になった。



 ここ最近リョウは、マリアーナに送るドレス選びに苦労をしていた。

 早い話『百貨店』で前世のウエディングドレスを買うつもりでいたが、これが、沢山有りすぎてどれにして良いか決めかねていたのである。

 このラドランダーの常識的なドレスでは面白みが無いし、かと言って前世の斬新的なドレスでは奇抜すぎる。その兼ね合いが難しい。


 そして決めたのは、純白でシルクの光沢が美しく輝くドレスである。

 随所に丁寧な刺繍が施され、真珠とスワロフスキーのビーズが縫い込まれている、マーメイドラインに近い後ろ裾を長く引くドレスに決めた。

 マリアーナの髪色に合うように、ドレスと同じ真珠とスワロフスキーのビーズが飾られたプラチナのティアラ。透ける様な真っ白のベール。ベールの裾には繊細で優美な刺繍が施してある。


 このドレスを持ってシャギーリースとして、ランズベル邸を訪れたリョウ。

 少し時期が早いかと思っていたが、試着して不都合が有れば直す必要が有るので、これくらいで良いとマルクス夫人に言われた。

 ドレスと一緒に持ってきたトルソーにドレスを着せて、マリアーナが来るのを待つ。

 部屋に入って来たマリアーナはドレスを目にした途端、口に手を当て目を見開き、固まってしまった。


「あ~、マリアーナに似合うと思っていたが、気に入って貰えなかった様だな。すまない…………」

 精一杯頑張って選んでみたが、やはり男の自分にドレスは無理だったかと気落ちしていたが、


 マリアーナは、首がもげるのは無いかと思うほど横に振って、

「違うの! あまりにステキなドレスで、言葉が出なかったのよ‼」

「そうか、喜んでくれたなら俺も選んだ甲斐があったと言うもんだ!」


 少しのためらいの後マリアーナは、

「ごめんなさいね…………実は、あなたがこんなにステキなドレスを贈ってくれるなんて、正直期待していなかったのよ。だって、言葉遣い悪いし、態度も悪い冒険者だったから…………」

 リョウは、頭をかきながら、

「ひでぇなぁ~。と言いたい所だけど、まあ、事実だからしょうがないさ」

 辺りが、明るい笑いに包まれた。


 その後、ドレスを試着したマリアーナは、雪の妖精の様に美しかった。


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