表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/146

第17話  【結婚します…………】

 マリアーナのその言葉が理解できず、一瞬呆けてしまったが、我に返り、

「………バッ、バカか! 何考えてる! 今の話を聞いただろ‼」

「ちゃんと聞いていたわよ! あなたが謝罪を態度で示してくれるって!」

「そこじゃねぇ! 魔族の血の事だ‼」


 マリアーナは真剣な顔になり、

「ねぇレッド。う~うん、今はレッドって呼ばせて。……あなたはそう言うけど、絶対じゃないでしょ?……絶対に魔族の子が生まれるって事は無いのでしょう?」


 レッドと呼ばれ反射的に訂正しそうになったが、今はそれどころでは無い。

「確かに絶対ではないが。……だが、魔族の血は人間の血より生命力が強い! 俺は、あいつのディールの血一滴で、体が魔族に変っていくのが分かった位だぞ!」


「でも、だからと言ってあきらめるのは早いんじゃないのかしら?」

「そんな事を言って、生まれた子があきらかに魔族の外見をしていたらどうするんだ! たとえ人間に育てられたとしても、子供は辛い思いをするんだぞ! それに人間の姿形で生まれても、俺の血を継いでいる時点で魔族の血も受け継いでいる事になる。いつ、魔族に変貌へんぼうするか分からない。そんなかわいそうな事出来るか‼」


 リョウ自身も、魔族の血のなせる業なのかどうか、数年に一度だが、無性に破壊行動を取りたくなる事が有り、抑え込むのに大変な苦労をしているのである。

ただ、幸いと言って良いかどうかは分からないが、冒険者と言う職業はある意味、暴れている血の高ぶりを押さえるのには、とても好都合でもあった。


「あなたは今でも、姿が魔族の様になる事が有るの?」

 気まずそうに眼を逸らし、

「ある」

 と、ただ一言いった。


 とは言ったものの、本当の所は瞳の瞳孔を縦瞳孔にするくらいで、それもかなり意識しないと出来ないのである。

 しかし、そう言っておけば諦めてくれると期待したのだが、マリアーナの意思は変わらず、むしろ楽し気に、

「結婚したら、内緒でその姿を見せてね!」

 などと言って、マリアーナのあまりの呑気さに、リョウは虚脱感で崩れそうになる。


「何で、そこまで俺が良いんだ? 今このリョウの顔ならともかく、正直言ってシャギーリースの顔は最悪だぞ⁉」

「あなたは自分自身事が良く分かって無いのね! 顔では無いのよ。あなたの良さはその心だもの!」


 目を潤ませ、顔を赤らめて下から見上げる様に、リョウを見つめるマリアーナ。

「幼い頃、本当にあなたは優しかったし、頼もしかった。私の小さな騎士様だったの」

 彼女は、嬉しそうにそう話す。


 その様な可愛い態度を取られると、リョウとしてもドストライクで心を撃ち抜かれてしまう。

顔が赤くなるのが分かる。恥ずかしさを隠すために口に手をやり、目を背けたまま固まってしまった。

「……………………」


 固まって動けないでいるリョウを横目に、マリアーナはベッドを降り扉を開け、部屋の外に居る人々に向かって高らかに宣言する。

「シャギーリースが、私と結婚してくれるって!」


 ハッと、我に返ったリョウが慌てて、

「言って無いって! 俺はそんな事言って無いぞ‼」

「あら、だって、さっき何でもしてくれるって言ったでしょう? あれは、嘘だったの?」

「いや、そうは言ったが、結婚は問題が違う!」


 傍から見ていると、完全に恋人同士の痴話げんかに見える。


 呆れたようにシュテハンが、

「あ~、どうでも良いのだが、結局どうなったんだ?」

「だから、私はシャギーリースと結婚するの! もう決めたのよ。私に辛い思いをさせた、シャギーリースには拒否権は無いのよ!」

 もう完全にリョウの負けである。


 マルクスがリョウに向かって歩いて行き、

「娘と何を話したかは分からないが、あの子を苦しめたあなたを、私は許した訳では無い! 許すつもりも無い事を覚えておいてもらおう‼」

 と言って、背の高いリョウの顔を拳で殴りつける。


「キャーーー!」

 マリアーナの悲鳴が聞こえ、リョウの口から一筋血が流れる。


 リョウは、おそらく殴られると思って構えていたが、角度と当たり所が悪く口の中を切ってしまった。

 冒険者などをしていれば流血沙汰は日常茶飯事なので、自分はあまり気にならないが、マリアーナはそんな事とは無関係の生活だったので、血を見て青くなっている。


 手の甲で血をぬぐい、覚悟を決めてマルクスの前に跪き、

「本当に、申し訳ありませんでした。こんな非常識な私ですが、マリアーナを私の妻にもらい受ける事を、どうか許してほしい」


 その正式な求婚の言葉を聞き、マリアーナは両手で口を押え、嬉しさで涙目になりながらリョウを見ている。

一方マルクスは渋面でリョウを見て言葉を発する。


「良いでしょう。…………ただ、一つだけ条件が有ります。あなたにはここロザリードで領主をやってもらいます。それが出来ないと言うのであれば、娘との結婚は無かったものとして下さい!」


「私は、イエロキー聖教国の女王陛下の手足の様な事をしておりますので、このロザリードに居を移す事は出来ません。ですが、時間の許す限りこちらに来ます。それで、妥協して頂けないでしょうか?」


 マルクスは跪いているリョウを立たせて、

「分かりました。それで良いでしょう」

 と言い、今度は逆に自分が跪き、

「お館様に手を上げました。私をどうか罰してください」

 と頭を下げた。


「あっ、いや、そんな事、俺は気にしていないから。むしろこれから俺のサポートをよろしく頼む!」

「…………サポート?」

「あっ! えっと、そう補助だ! 手助けだ!」

 つい、前世の言葉を言ってしまい、慌てるリョウ。


「承りました。誠心誠意お館様にお仕えいたします」

「その、お館様って言うの何とかならないか? 非常に恥ずかしいんだが……」

「このロザリードでは、代々領主はお館様と呼ぶ習わしですので、あなた様が慣れて下さい」


 そんなこんなで、一連の騒動は終結した。

 リョウの完全敗北で。



 それから、結婚に向けてのやらねばならい事や、取り決めなどを色々と行っていたら、夜も遅くなってしまったので、その日はロザリードに泊まる事にした。その旨を手紙に書いてセイに転移で送り、リョウは一人領主邸の自室(リョウは知らなかったが、リョウの部屋として豪華な部屋が用意してあった)で、今日の一日を振り返り、頭を抱える。


(ハァ~…………何がどうしてこうなった)


 出て来るのはため息と、予想外の自分の行動の後悔。

 結婚はどうしても避けたかった、にも関わらずマリアーナに求婚する事になったり。なりたくなかった領主に、本格的になる事になってしまったり。

 だが、もう決まった事は覆らない。辛い思いをさせたマリアーナに、これ以上悲しませない為にも、真剣に子供の事をどうするか、考えなくてはならないと心した。


 そんなリョウの自戒の念とは裏腹に、領主邸ではセバスを始めとした使用人一同が、密かなお祭り騒ぎの様になっていた。20年ぶりの正式な領主の誕生であり、しかも『双赤を纏う者』である。これが喜ばずに済まないはずが無い。皆、明るい顔で、これからのロザリードに期待を寄せていた。



 翌朝、ランズベル邸に赴き、しばしの別れをマリアーナに告げる。

「俺はこれからイエロキーに戻る。…………その、罪滅ぼしとは言えないが、俺に婚礼衣装のドレスを贈らせてほしい! いや!俺の贈るドレスを着て欲しい!」

 思いがけないその言葉に、昨日に引き続きマリアーナは目を潤ませながら、

「ええ! あなたの贈ってくれるドレスを着るわ!」

「それで、ドレスを仕立てるのに体の寸法を知りたい。領主邸にある転移陣でなるべく早く送ってくれると助かる」

「分かったわ。すぐに送るから」

「楽しみにしていてくれ。飛び切り綺麗なドレスを贈るよ」

「嬉しい! 楽しみに待ってるわ!」

「ああ、それと、式の後のお披露目に着るドレスは、マリアーナの好きに作ってくれ。費用はいくらでも用意する。俺は、そちらを楽しみにしているからな」


 と言って、二人で別れを惜しみつつ、リョウはマリアーナの頬に小さな口づけを落として、イエロキーに転移していった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ