表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/146

第9話  【ドライアドと使い魔】

 同時に二種類の真っ赤な魔法陣が形成され、火炎魔法が発動した。


 巨大な火炎球がブリザードスネークを包み込み、時を同じくして激しく燃える炎で作られた無数の槍が、ブリザードスネークに突き刺さり、内側から焼き尽くさんばかりに燃え上がる。

 さすがのS級の魔物でも、強力な火炎魔法を外と内から同時に二種類も受ければ一たまりも無く、耳をつんざく様な咆哮を一声あげ力尽きた。


 ありったけの魔力を注ぎ込んだ魔法の発動であった為、リョウはその場に倒れこむ。当然、自分にかけていた防寒の為の魔法も解けたので、極寒の中に倒れたまま動けない。


 そこに、遠くに投げ飛ばされたセイが駆け戻り、

「兄さん! 兄さん! ごめん! ごめんなさい! 謝るから起きてよーーー!」

「…………だ、大丈夫だ。……い、意識はあるから…ハイポーションくれ……」

「じゃあ、飲ませてあげるから!」

「…………いいから! 自分で飲めるから‼ よこせ!」

「ざんねん!」

 と、セイからひったくる様にハイポーションを奪って、一気に飲み干し防寒の魔法を二人にかけなおした。


「おまえ! 懲りない奴だな! こんな時にふざけるなよ!」

 今度ばかりは、マジに頭に来たリョウがセイを怒る。


 叱られうなだれた犬の、耳としっぽが見えそうなセイが、

「ご免なさい」

 と愁傷に謝った。


 と、その時、突然その場の空気が変わった。


 闇の気が薄れ、静謐せいひつな気に包まれる。そばにあった大樹の幹が光り出し、雪が降り積もっているにも関わらず、まるで春の様な暖かい空気がその場を占める。


 光が一か所に集まり、人型を形成してゆく。その光る人型は森の守護者ドライアドであった。


「この地を治める赤を纏う者よ」


 ドライアドのリョウに向けられたその一言で、顔を引きつらせながら、

「どなたかとお間違いなのではでは無いでしょうか?」

 と言ってみるが、ドライアドは不思議そうに、

「今の姿がどうであれ、あなたが纏うその赤きオーラを間違える事など有りません。あなたがこの地を 治める者です」

 と言い切られてしまった。


 人外の者では誤魔化しが効かないと、がっくり肩を落とし、

「だとして、私に何か御用でしょうか?」

 と尋ねた。


 ドライアドの話によると、ブリザードスネークが脆くなっていた結界を破って、この彼女が守護する森に侵入してきてから、森の秩序が無くなり、魔物達が増え他の森の生き物たちを、魔物に変えさせれらてしまっていたと言った。

 他にも、雪の降る季節では無いのに雪が降ったり、冬の魔物が暴れたりと、もうドライアドの守護の力では手に負えない状況になっていたらしい。

 そこに、この地を収めるリョウが現れ、ブリザードスネークを倒した事で、森の秩序が戻って来た。


わたくしは、この森の守護者として、あなたに一言礼を言いたかったのです」

「いいえとんでもございません。私は私の仕事をしたまでで、あなたにお礼を言われる事をした訳ではありません」

「ですが、それではわたくしの気が収まりませんので、あなたに私の力を少しだけ送りますので、受け取って下さい」


 リョウは、

(なんか、いやな予感する。これは貰っちゃ絶対ダメなやつだ!)


 と、思ったが、すでにドライアドから白く輝く小さな光の玉が、リョウに向かって飛んできていた。

 その光の玉は、まっすぐリョウの胸を目掛け飛んで来て、胸の中にスッと入ってしまった。


「えーーーーーーー‼」

 驚いて、思わず胸を手で払ったが、どうにかなるわけでもなく、唖然とする。


「それは、あなたに贈る私の力を宿した使い魔です。名を付けて呼べば応えて出て来る事が出来ます」

 その言葉に、正直に言ってそんなモノは要らないので、恐る恐る聞いてみた、

「……………………えっと、返品する事は…………」

 ドライアドはニッコリ笑って、

「出来ません。もうそれはあなたの一部になりましたから」


(勝手に押し付けておいて、返品不可って、どんな悪徳商法だよーーー!)

 リョウは、心の内で叫ぶ。


 ドライアドはリョウをせかすように、

「では、名を付けて呼び出してみて下さい」


 と言ったが、そんな事を急に言われても名前など浮かぶはずも無く、考え込むリョウ。

 そこにセイが、

「今は冬だから、雪とか氷とかにちなんだ名前にしたら?」

 他人事ひとごとだと思ってか、呑気にアドバイスをしてくる。


 そんなセイをジト目で見ながら、しばし考え、

「ハァ、……じゃぁ、フブキ。お前はフブキだ‼」

 と言った瞬間、リョウの胸から光の玉が飛び出し、真っ白なドラゴンになった。


 ドラゴンが出て来た事にリョウとセイは、目も口もまん丸にしてそれを見て、

「……………………ハッ⁉ ドラゴン? えっ? …………」

「…………うっそ⁉ ドラゴン? ホント?…………」

 とても信じられない出来事である。


「その子は、もうあなたの一部になっています。可愛がってやって下さい。その子はあなたの魔力を糧にしていますので、特別何かを与える必要はありません。大きさも自由に変える事が出来ますので、その辺りの事で、不自由をかける事は無いでしょう」

 と、ドライアドが説明した。


 当のフブキは、姿を小さくさせてリョウ目掛けて飛んできた。思わず、顔を庇ったリョウだったが、フブキは彼の頭の上に着地して、くつろいでしまった。

 自分の一部だからなのか、全く重さを感じない。むしろ、今まで自分のそばに居なかった事が不思議に思うほど、馴染んでいた。


「そうですね、あなたの求めている魔石ですが、取りあえずわたくしが用意をしますので、これからもこの地を治める者として、力を尽くして下さい」


 と言って、大きな魔石を残しドライアドは消えてしまった。


 残されたリョウとセイは、フブキを見て二人同時に長い長い溜息をついたのであった。


「ハァーーー、どうすんだ、このドラゴン?」

「ハァーーー、僕に聞かれても、貰ったのは兄さんだし」

「…………だよな…………」


 当のフブキは、小さなあくびと共に小さい火を噴いた。

「ワッ! 火を噴いたよ!」

「…………腐っても鯛だってか?」

「いや、ドラゴンだって!」

 現実逃避をしたくなるリョウ。


 一番の懸念であった、巨大な魔石をどうするかが、ドライアドから魔石を貰った事により解決したので、すぐにアイテムボックス入れ領境に持って行き、ヒビの入った魔石と交換した。その際忘れずに、魔素を吸収する魔法陣を組み込んで設置した。


 新しい魔石を設置した瞬間から、結界に力が戻ったのが分かった。


「これで、700年とは言わないが、当分結界の心配は無くなったな」

「結界の力が戻ったから、上級魔物の被害も減るだろうしね」

「そうだと良いな」


 ちなみに、フブキは作業の間中リョウの頭の上で居眠りをしていた。

 これ以降、リョウがフブキを頭に載せているのを度々目にする事となったのである。


 これで受けた依頼をすべて完了したので、完了した事を報告しサインを貰うべく領主邸に戻る事にした。

「まあ、あの野郎が素直にサインをするかどうかだよな⁉」

「ずっと僕たちの事つけまわしていたしね」

「あー!やだやだ! 性格悪いやつを相手にするのは、疲れるぜ!」 



 ロザリード邸に転移した二人をを待っていたのは、以外にも領主代行ではなく、レッドの幼馴染でいとこの、淡い金髪に濃いオレンジの瞳のシュテハンだった。


「君達がイエロキーから派遣されて来たS級冒険者か?」

「そうですが、あなたは?」

「私は、ロザリード辺境伯の分家の者でシュテハン・ロザリードと言う者だ。ガルバン殿に変わって話を聞きたい」


 リョウにとって、実に17年ぶりのいとことの再会である。懐かしいと思う反面、何か釈然としない思いも湧き上がる。


「あのクソ野………んっん! あの御仁はどうしたんですか?」

「あの人は、何か急用が有るとかで出かけてしまったんだ」

「そうですか…………」

(あいつ!逃げやがったか⁉)


「ところで、さっきから気になっているのだが、君の頭に上にいるモノは…………もしかしてドラゴンかね?」

「……まあ、そうです」

 と、ここでドライアドとの一件をシュテハンの話した。もちろん、ドライアドからの赤を纏う者のくだりは避けてだが。


「そんな事があるのか⁉」

 現実味の無い話に驚くシュテハン。それに応えてリョウも、

「有るか、無いかと言われましても、実際目の前にこうして存在しているので、事実と受け止めるしかないんです。まぁ、正直に申し上げますが、私もこんな物貰っても困るんですよね」


「と、言う割にはそのドラゴン、君にやたら懐いているみたいだな」

 笑いをかみ殺しながら、あまりにもリョウに懐きまくっているドラゴンをみる。

「こうして見ると、なかなか可愛いモノだな。……だが、ドラゴンである以上魔物だ! 被害が出る事があれば当然君が討伐するのだろうな⁉」


 当然と言えば当然の事で、そう言われるだろうとは思っていたリョウは、

「そうですね、それは十分覚悟をしています。ですが、これは見かけはドラゴンですが、どちらかと言えば精霊に近いモノみたいです」


 何故そんな事が分かるの不審に思い、

「君に分るのかそんな事が⁉」

「私は聖魔導士なので、闇の力に犯された物には敏感なんですよ。むしろ、こいつは聖の力が有るみたいで、そばに居ると落ち着くんです」


「そんなものかね」

 と、ひとまずドラゴンの話を終わりにした。


 シュテハンは領主の机と思われる豪華な机に目をやり、そこに置いてあるランプを指さし、

「君は、あのランプが何であるか知っているか?」

 と、リョウの一挙手一投足も見逃すまいと言う目つきで尋ねたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ