第8話 【結界を直すには?】
風呂で十分温まったリョウは、風呂上がりのビールを飲みながら、同じく風呂上がりにコーヒー牛乳を飲んでいるセイと魔石について話をする。
「ご先祖さんが作った魔石だろうから、ロザリード邸に何かヒントが有れば良いんだけどな」
「でも、…………あの人の事をどうするかだよね?」
「そうだな!……………今度、あのくそ野郎の顔を見たら殺りたくなりそうだ‼」
と、ギチギチと拳を握り締めるリョウ。
「か、過激だな~!」
シャギーの子供の頃の事を思えば、そう思うのも仕方が無いと、納得するセイ。
とりあえず、もう一度領境に転移して魔石を詳しく調べる事にし、ミーニャの作った心づくしの夕飯を食べ、今日は早めに休むことにした。
翌朝、領境に行く前に、魔石についての報告と資料が無いか確認するために、再びロザリード邸を訪れた。
しかし、今回は屋敷に入る事が許されず、
「ったく! 何考えてんだ、あのくそ野郎は!」
「自分で、結界の事調べろって依頼出しておいて、それは無いよね!」
取次に出て来たセバスは、先日の領主紋でショックを受け、いまだに立ち直れていない様子だった。
「ガルバン様は、あなた方にお会い致しません」
「はっ? そっちからの依頼で来てるのに、どう言った了見なんだよ!」
「どうぞ、お引き取り下さい」
かなりやつれているセバスに、これ以上無理はさせたくないので、
「分かったよ! じゃあ悪いけどよ、結界の魔石の資料が無いか調べておいてくれ。それが有るのと無いのでは、結界を修復する事が段違いになるからな。頼んだぜ!」
「僕たちは、大通りの『森のみのり』って言う宿屋に居るから、お願いね!」
と言っていったん引き下がる事にした。
セバスは、先日のリョウとの領主紋のやり取りをガルバンの報告をしていたが、彼は配下からのまともな報告が上がってこない事も含め、もう、何を信じていいか分からくなっていた。
『領主の灯』も相変わらず、リョウ達の動きに合わせて、灯の明るさを変えている。
「こうなったら、あの黒髪の奴らを殺すしかない! それで、領主紋が他の奴に出ればそれですべてが解決する!」
ガルバンは無謀にも、配下の者にリョウとセイを殺してしまうよう指示を出した。
そんな事になっているとは思っても居ない二人は、転移で領境に飛ぶ。
領境は…………一段と雪と寒さが増していた。
「しっ! しっ! 死ぬ! 凍死するーーーーー‼」
「にっ! 兄さん! 魔法で寒さは防げないのーーーー⁉」
セイの叫びで、リョウはハッと気が付く、
「そうだよ!その手があったぜーーー‼」
「…………今さら⁉…………」
そうしてリョウは、防寒の為の魔法の詠唱を始める。赤い魔法陣が現れ二人を包み込む。途端に寒さが遮断され快適に動けるようになった。
「何で、これに気が付かなかったのかな、俺は?」
「もう、兄さんは寒いって言っただけで、思考がどっかに行ちゃうんじゃない?」
「…………反論できません」
難なく動く事が出来るようになったので、昨日に引き続き魔石を調べる。
「やはり、このヒビは近いうちに割れに変わってしまうだろうな」
「じゃあ、やっぱり新しい魔石が必要だって事だね」
「ハァ、そうだけど。………どうすんだ、こんなにでかい魔石? やっぱ、爺の情報を待つしかないか⁉」
「ねえ、兄さん」
「何だ?」
「それって口癖なの?」
セイは先日から気になっていた事が有って、思い切って聞いてみた。
「あのセバスって人の事、爺って呼ぶの?」
リョウは、片手で口を押え真っ赤になって、
「ばっ!ばっ! バカか! お前! な!な!何言ってんだ‼」
子供の頃にそう呼んでいたので、無自覚にそう口にしていたらしい。思わずどもってしまうリョウである。
それはさておき、とりあえず魔力が無くなっている魔石に、魔力を補充する事にした。
リョウの魔力量をもってすれば、この大きさの魔石3個でも補充するのに何の苦労も無いが、ただ補充しても時間がたてばまた魔力が無くなってしまう。
そこで、まだ、魔力が残っている魔石を調べると、大地から絶えず魔素を取り込み魔力に変換し、補充する魔法陣が組み込まれていた。
それを見たリョウは、
「すっげぇな! こんなの見た事無い! これを作ったご先祖様に会いたい位だぜ!」
「そんなに凄いんだ?」
「ああ! いったいどんな頭してたんだか。ホント、会ってみたかった!」
自分もかなり魔法の知識が有ると思っていたが、この魔法陣を見てると、ただ己惚れていただけと思い知らされる。
その魔法陣の構成を解析して、魔力が減っていた魔石に魔法陣を書き加える。すると、すぐに大地から魔素を取り入れ魔力として貯め始めた。
「んーーーー‼ この件が終わったら、絶対この魔法陣の研究をするぞ!」
やっぱり、魔法大好きっ子なリョウであった。
ヒビの入った魔石は今どうこうする事が出来ないので、今度は魔物の討伐に移る事にする。
上級魔物の被害及び目撃情報は、やはり森に近い村や町に多かった。当然と言えば当然の事で、人を襲ってその血肉を食らうからである。
一番被害の多かった村に行ってみると、もうそこに人は住んでおらず、廃墟となっていた。
「ここに住んでいた人達はどうしたんだろうね? みんな魔物にやられちゃったのかな?」
「それはどうかな? 集団でもっと町の方に移転したかのもしれないぞ」
「そうだと良いな」
そんな話をしながら村を見て回っていたその時、背後に、突然巨大な魔物の気配を感じ二人はバッと振り返る。
そこに居たのは、雪と氷で出来ているかのような巨大なブリザードスネークが、鎌首をもたげて二人を見降ろしていた。
以前、イエロキーのデザートドラゴンの大きさにも驚いたが、今回は超ドデカい蛇である。
二人は目が点になり、パックリ口を開け、一瞬放心状態になってしまった。
「何、これはーーーー‼」
「何って! こいつはブリザードスネークだ‼」
S級クラスの魔物の突然の出現に、二人ともパニックになってしまった。特に、セイは蛇が大の苦手なのである。
「待て待て待て! ちょっと待て! セイッ!バスターソード出せ! 炎の魔法を付与するから!」
「ヤダ~‼ 蛇は嫌ーーーーー‼」
頭を抱えてうずくまってしまってセイを見て、
(あっ!ダメだこりゃ! セイは使い物にならない‼)
今回は自分一人で、大物を相手にしなければならなくなったと、覚悟をしたリョウ。
蛇に対して、使い物にならないセイをどうにかしないと、正直邪魔になるので、セイの襟首をむんずと掴み、腕に身体強化をかけ遠くに投げ飛ばした。
(あぁーーーーーーー!…………)
と言うセイの叫びが遠ざかる。
改めて、ブリザードスネークと向かい合う。
(まあ、当然弱点は火だよな! しかし、どれだけの炎系の魔法が通用するんだか⁉)
リョウは、ブリザードスネークの攻撃を避けながら思案する。
ブリザードスネークの攻撃はブレス。それは、一瞬で辺りの物を凍らせてしまう威力である。そして、凍った物はブリザードスネークの尾に払われて砕かれてしまい、粉々にされてしまう。
今回はセイによる時間稼ぎがない。自分で、詠唱の時間を稼がなければ、大規模魔法を使う事が出来ない。
(どうすりゃ良いんだ⁉)
ふと思い出した物がある。以前セイと冗談半分で、現代の武器の様な魔術具を作る事が出来ないかと、錬金術と魔道具作りの掛合わせで作ったものがあった。それは、4代属性を付与した手榴弾の様な魔術具だった。
この際、何でも使ってやろうと、アイテムボックスから火の属性を付与した手榴弾をいくつか取り出し、再び腕に身体強化をかけ、ブリザードスネークに次々に投擲した。
正直あまり期待はしていなかったが、これがかなりの威力が有り、ブリザードスネークに多大なダメージを与えていた。
このチャンスを逃すまいとリョウは詠唱に入る。
一人でこの難局を乗り切るには、いつもの詠唱の魔法では威力が足りない。持っている魔力を全部使い、二重詠唱を試みる。リョウのつぶやく声が二重に聞こえてくる。
「「……………………この闇に染まった氷の力を打ち砕く、聖なる力をわが炎に与えたまえーーーーー‼」」
「【聖爆炎弾】‼ 【聖爆炎槍】‼」




