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第7話  【寒いのは嫌だ~!】

 こんな事も有ろうかと、あらかじめ細工をしていたリョウだった。

 初めは、隠ぺい魔法を掛けて、見えなくするつもりであったが、どう言う仕掛けになっているのか、魔法で誤魔化す事が出来なかったのだ。

 次に、手っ取り早く手の甲にファンデーションを塗って誤魔化そうとしたが、薄く光っているのでこれもまた誤魔化す事が出来なかった。

 最後に、いつも付けているオープンフィンガーの手袋の下に、もう一枚隠ぺい魔法を施した極薄の手袋をし、ついに領主紋を誤魔化す事に成功したのだった。


 項垂うなだれて座り込んでいるセバスを横目に、二人は領主邸を後にする。

じい、悪いな。レッドはもう死んだものとして、諦めてくれ!)

 と、心の中で、子供の頃に庇ってくれ、良くしてくれたじいに謝ったリョウである。



 その頃屋敷では、リョウ達が屋敷から遠ざかるにつれ、ランプの炎も少しづつ明りを落としていた。

 それを見た、ガルバンは不審と怒りで配下の者に当たり散らす。

 机の上の物を手で乱暴に払い飛ばしながら、


「何なんだ⁉ いったいどう言う事なんだ⁉ あの黒髪がレッドだと言うのか⁉」

 と、配下の一人が思いだしたように、

「ガルバン様! あのリョウとか言う奴ですが、特級魔導士で魔法に関しては右に出るものが居ないと言われているんですよ」

「それが何だと言うんだ⁉」

「ですから、魔法で姿かたちを変えていてもおかしくは無いって事です!」

 と、魔法を使っているのではと進言する。


 レッドの子供の頃を思い出し、

「…………そう言えば、あいつは洗礼前から魔法の素養があったな…」

(では、やはり、あの口の悪い方がレッドなのか?)


 疑心暗鬼で、決定的な答えが出せず、

「そうだとしても、今さら何をしにここに来たと言うのだ⁉」


 事実は、自分が冒険者ギルドに、結界調査の為に特級魔導士の依頼を出した事が、原因だとは考えが及ばないガルバンである。


「くそっ‼ やはり領主の地位を取り返しに来たのか⁉…………そうはさせるか‼ 今度こそ、息の根を止めてやる‼」

 リョウ達の力量も見分ける事が出来ないのに、無駄な決意をする。


「とにかく、あいつらから目を離すな! 何かあったらすぐに報告しろ! いいな!」

「はい! 分かりました!」

 配下の者に、そう指示を出した。



 一方リョウ達は、依頼について話していた。

「結界と魔物どっちを先に片付ける?」

「ん~、結界だな。もし、結界が破れていた場合、破れた穴をふさがないと、次から次と魔物が入って来るからな」

「…………網戸の穴から蚊が入って来る訳じゃないだけどな~」

 と、あきれながらセイは言った。


 結界の修復を簡単そうに言うリョウであるが、本当の所は結界を見てみないと何とも言えないのである。


「領境まで行くのに、時間的にも距離的にも結構かかるよなぁ。あそこの森も『白の魔森』程じゃないが、魔物がうじゃうじゃいるし」

「そうなんだ」

「まあしょうがないさ、北の果てだし『氷雪の荒野』とも接している所だからな」



 ともあれ、領境に行くにしても、一度行った事がある所以外は転移で行くことが出来ないので、地道に足で行くしない。しかし、アイテムボックスも『百貨店』も有るので、特に準備はいらないからこのまま領境に向かう事にした。

 それに、どのみち夜はイエロキーの家に転移で戻るのだから。


 行き先は領境の森『氷雪の荒野』に接している最北の大規模結界。

 もう、雪も降り出して来たし、おそらく領境では雪が積もっているに違いないと思うと、リョウは気持ちも足取りも重くなる。

 森の中でしかも雪も積もっていると言う事で、移動手段は自分の足のみである。しかも、冬になると闇の力が増すので、魔物の数もその他の季節を上回る。それらを排除しながら進むので、領境の結界にたどり着いたのは、ロザリード邸を出てから1週間もかかってしまった。


「さ! さ! 寒い‼」

「さ、さすがの僕でも、これは寒いわ!」

 寒さに強いはずのセイでさえ思わず寒さを口にする。


「家に帰りたい! 温泉に漬かりたい! こたつに入りたい! 熱燗が欲しーーーーーい‼」

「ハイハイ! 現実逃避していないで、さっさと結界を調べようね!」

 極度に寒さに弱いリョウは、防寒着でモコモコになりながら、今さらながらこの依頼を後悔していた。

 そんなリョウを、呆れ顔でしった激励をするセイだった。


 領境結界と『氷雪の荒野』は面白いほどハッキリと別れていて、まるで線を引いたかのように森が途切れている。その線上に結界が張ってあるのだ。

 これが700年も前に張られた物だとは信じられない程、強力な結界である。


「す…すごいな⁉ こ…これが700年前に張られた物なのか? つ…つい最近張ったと言っても俺はな…納得できるぞ」

 寒さでろれつが可笑しくなっているリョウに対し、普通に話せるセイ。

「そんなに凄いの?」

「ああ、結界魔法の魔法陣の構成に、な…何一つ無駄が無く、なおかつ最新の理論も組み込まれている。俺の、ご…ご先祖さんはとてつもない人だったと、い…今さらながら感心するわ!」


 良く見ると結界には、乗用車のタイヤ位の大きさの魔石が置かれており、それにより結界の強度が保たれているようだ。

 結界は、ロザリード辺境伯領の『氷雪の荒野』に接する領境の端から端まで張られており、そこに等間隔に魔石が10個置かれていた。これ程大きな魔石が自然界にあるとは思えないので、何かしらの処理を施してこの大きさにしていると思われる。


「と…とにかく、こ…この結界に沿って穴が無いか、し…調べるしかなさそうだな」

「そうだね。…………ところで、兄さん大丈夫?」

 鼻を赤くして、息でまつげが凍っているリョウに心配そうに話しかける。


 リョウは、

「マジ。凍死する‼」

 と、叫んでいた。


 今晩は、絶対に転移でイエロキーの家に帰って、暖かい風呂に漬かり、暖かい食事をすると固く誓うリョウである


 リョウ達に付けられていたガルバン配下の者達も、この寒さで極度に疲弊していた。

 リョウ達は夜になると転移でイエロキーに戻ってしまうが、配下の者はそのような事が出来るはずも無く、極寒の夜を過ごす事になった。

 初めの内は、夜になると突然消えてしまう二人に恐怖を覚えたが、リョウが転移魔法の使い手である事を思い出したが、しかしそうなると、自分達だけが夜の極度の寒さと、冬の狂暴な魔物が居る中に取り残される事に納得できず、一人二人と脱落していき、とうとう誰も二人を見張る者が誰も居なくなってしまっていた。


 自分たちに見張りが付けられている事をリョウは気づいていたが、寒さに耐えながら魔物と戦い、結界を調査しなければならなかったので、放置していた。しかし、気が付いた時には誰も居なくなっていたので、もうその事について考えるのは止めにした。


 結界に沿って歩きながら不備が無いかを調べているうち、置いてある魔石の一つにヒビが入っており、三つ程込められている魔力が無くなっていたりしていた。

これが原因で結界が弱まり、魔物が入り込んできていたらしい。現に、今も目の前に、『氷雪の荒野』からA級指定されているアイスポイズンスパイダーが、結界の綻びから入って来た。

慌てず騒がず、二人はサクッと仕留める。


「ま…魔力が無くなっている物は魔力をほ…補充すれば良いけど、ヒ…ヒビはな~ど…どうしたもんかな~」

 リョウの口ぶりに疑問を感じ、

「えっ?どう言う事?」

「ヒ…ヒビが有ると言う事は、い…いずれ魔石が壊れる可能性がお…大きいんだよ。こ…この大きさの代わりの魔石をどうするかが、い…一番の問題だな」

「…………こんな大きな魔石ってあるの?」

「ま…まあ、自然界には存在し…しないだろうな。ど…どんなにでかい魔物、例えばド…ドラゴンでさえこんな大きな、ま…魔石では無いだろ?」

 と、以前倒したデザートドラゴンの魔石を思いだす。


 とにかく、原因が分かったのと、ここに来た事で次回からは直に、転移でこの場所に来ることが出来るようになったので、いったんこの寒い場所から移動して、今後の対策を立てる事にした。

 リョウの寒さに対する限界値が、もう降り切れそうだったと言う理由もあったのだが…………。


 そして、速攻でイエロキーの家に転移で戻り、速攻で湯舟に漬かったリョウは、

「あ~、極楽、極楽」

 と爺臭いセリフ言いながら、寒さで凍えた体を温めていた。


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