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第二章『ブラクロック王国』と『シャギー過去との邂逅』編  第1話  【新たな厄介事の予感】

 領主紋りょうしゅもん

 それは領主が代替わりをする時に、正当な血筋の次代の者に出現する。

 右手の甲に淡く光る領主である事を示す紋章である。

 その紋章の出現を持って、新たな領主が誕生する。


「なぜだ⁉ なぜ誰にも領主紋が出現しない⁉」


 男はいら立ちを隠せない。前領主であった、自分の妻が死んでからもう20年もたつのに、未だ領主紋を持つ者が現れない。

 男は、自分は入り婿であるため紋章が現れる事が無いと分かってはいる。後妻に亡き妻の遠い親戚筋の女を迎え、生まれた子供に領主紋が出る事を期待した。

 しかし、生まれた娘は二人とも領主紋は出なった。

 あとは、亡き妻の弟の忘れ形見である甥に出るかと思っていたが、それも無かった。


 領政に必要な、領主のみが使う事が出来るペンと領主印を使う事が出来ずに、この20年のすべてが仮の決済になっている。

 正直、何もかもが行き詰まっていた。


「あいつだ! あいつが生きているに違いない! あの時、確かに死んだと言う事を確認しておくべきだった‼」


 17年前、男は、8歳になる血を分けた実の息子を亡き者にしたのだった。




「うっ! はっくしょん‼」

「兄さん、風邪?」

 鼻の下をこすりながら、

「いや、誰か俺の事を噂でもしているんだろ」

「良い噂だといいね!」

 リョウは、鼻をかもうと手に取ったティッシュボックスを、笑いながらセイに投げつける

「…………だから、その含みを持った言い方やめろ!」

 相も変わらず仲の良いリョウとセイの兄弟である。


 ここは、イエロキー聖教国の聖都サマリーアートの郊外に、ポツンとある一軒家。リョウとセイ、猫獣人メイドのミーニャが暮らす家である。


 ふた月前、新しく発見された謎のオアシスで、『光の聖剣』との死闘を繰り広げたのも、もう記憶から徐々に薄れようとしていた。

 当時、休みなく依頼をこなしていた所の、あの事件であった。


 で、ギルマスから休暇をふた月程もぎ取る事に成功したリョウ達は、休みをエンジョイしていた。

 惰眠だみんをむさぼり、魔法の研究にいそしみ、錬金術はやり放題、ダラダラと過ごしていた。


 そんな時ギルマスから、手紙鳥が舞い込んできた。


 それを見たリョウは、

「あ~あ、とうとう休みも終わりか~!」

 長期間休んでいたので、俗にいう五月病みたいな気分である。


「ホント~、こんだけ長い間休んだこと無かったよね~」

 セイも、長期の休みで少しだらけている。


「まあ、しかし、そろそろ依頼を受けないと他のパーティーから、クレームが来そうだしな」

「アハハハハ、そうだね!」



 心機一転、気合を入れてギルマスを訪ねた。


「え~と、ブラクロック王国のロザリード辺境伯領ですか?」

「そうだ、知っているのか?」

「まあ、名前くらいは聞いた事ありますけど…………」

「何だ?何かあるのか?」

「確か北の方ですよね? あ~、俺、寒いの苦手なんです! 断る事出来ませんかね?」

「寒さが苦手だけでは、断れないだろうな。それに、今回は特級魔導士であるリョウを指名しての依頼だ」

「…………そこを何とか! お願いできませんか?」

「今回、やけにこだわるな。他に何か行きたくない訳でもあるのか?」

「……分かりました。行きます。行ってきます! そして、凍死してきます‼」

 行きたくない感満載で返事をする。

 ムーンシャーナは一言、

「大袈裟な」


 ムーンシャナーから貰った資料には、ロザリード辺境伯領の事が詳しく書かれていた。


 北の大国、ブラクロック王国最北のロザリード辺境伯領は、『氷雪ひょうせつの荒野』とよばれる一年中雪と氷に覆われた大地と接している。

 氷雪の荒野のさらに北には『雪銀白せつぎんぱく山脈』があるとされ、そのさらに北に魔族の国があると言われていて、そのせいか、氷雪の荒野と接しているロザリード辺境伯の領境には絶えず魔物が出現していた。


 ロザリード辺境伯の初代が、その魔物からの被害を少しでも減らそうと、領境に大規模結界を張り巡らし、魔物の被害を減らす事に成功したと記されていた。


 初代は、魔導士として最高峰の特級魔導士であり、大賢者の称号を有していた。その見識は深く、また他人とは違う考え方をする事で、新しい魔法を数々生み出したとされている。

 その初代が、自身の総力持って作った結界魔法で、700年たった今でもその機能が衰えてはいなかった。


 しかし、ここ最近魔物の出現率が上がり、上級の魔物の出現もあり、被害が相当になっているらしい。

 そこで、S級冒険者であり、初代と同じ特級魔導士であるリョウに調査の依頼が来たのである。

 依頼内容は二つ、北の果てにある領境の結界の確認、それと上級の魔物の討伐である。そして、結界に異常がある場合、補修できるのであれば、直してほしいとの依頼である。



 リョウは書類をめくりながら、

(…………ロザリードに行くことになるか。正直言って、生きているうちに、あの地に足を踏み入れる事になるとは思わなかったな…………)

 憂鬱ゆううつな気分でギルドを後にした。



 家に戻って来たリョウは、セイに今回の依頼について説明する。

「…………と言う事で、今度は北の寒い場所に行くことになった」

「……兄さん、寒いの苦手だったよね? 大丈夫なの?」

「かなり粘ってみたけど、俺を指定しての依頼だから断れなかったんだ……ハァ……」

 その様子を見たセイは、半分かわいそうに思い半分面白がって、

「大変だね、ご愁傷しゅうしょうさま」

 と言った。


「良いよな、お前は! 寒いの平気でさ!…………まあでも、見た事無い結界が見られると思えば、それも我慢できるか」

 とりあえず前向きに考える事にした、魔法大好きっ子なリョウである。


 そうと決まれば、行動は早い方が良い。今は夏前だが、あの国は冬が早く来るのでモタモタしていると、すぐに雪の季節になってしまう。寒さが苦手なリョウとしては、一刻も早く依頼を終わらせて、イエロキーに帰って来たい所である。


 今回は、イエロキーの北の国境門までは転移できるが、それ以北は転移陣を設置していないので、『四色街道』右回りの定期循環馬車で、ブラクロック王国に向かう事にした。

 このコースは、以前シャギーとイースがズーミニから来た時を、反対にたどるコースになった。


「なんか、この道懐かしいね」

「まぁ、あの時は色々あったけど、今では良い思い出か?」

「ん~、そうだね?」

「何で疑問形なんだ」

「色々ありすぎて、いい思い出かそうでないか分からないや」

「そうか…………」



 長期間の馬車での旅は、正直辛い物であった。

 ここ最近の移動はもっぱら転移で済ます事が多かったので、ブラクロック王国、西の国境都市ウエスニアに着いた時には二人とも、体中痛いしガチガチになるしで、散々だった。


「やっと、着いたな……」

「……ハァ、長かった」

「まあでも、これからこの国を縦断して、一番北に行かなきゃならんから、まだまだ馬車に乗る事になるな……」

「え~! うそ~!」

 正直、もう当分馬車に乗りたくないセイである。


「とりあえず王都のホラストロイズに行って、そこの冒険者ギルドで情報を集める事にしよう」

「あとどれ位で王都に着くの?」

「王都は、ちょうど国の真ん中あたりだから、馬車で10日位ってところかな?」

「え~、って言う事はロザリードには倍かかるって事だよね?」

「まあ、そうなるな」

「…………あと20日も馬車に乗らなきゃいけないなんて、…………辛すぎる!」

 珍しく弱音を吐くセイだった。


「じゃぁ、馬で行くか? 時間を短縮出来るぞ!」

「…………いっそ、車で行くとか?」

「まあ、そうしたいのは俺も同じだが、なんせ人目が有るからなぁ~」

「ですよね~」


 結果、馬を借りての移動にした二人である。



 しかし、ロザリード辺境伯の領門に着いたのは、イエロキーの国境門を出てからふた月以上かかってしまった。


 王都の冒険者ギルドで話を聞いたが、ロザリードの今の領主代行は閉鎖的な考えであるらしく、詳しい事を聞く事が出来ないそうで、〔高名な魔導士に結界の補修と、力のある冒険者に魔物を退治してほしい〕と、ただそれだけを言ってくるので、王都の冒険者ギルドでも手を余している状態だった。


「まずここの冒険者ギルドに行くか?」

「また、無駄足にならないと良いけどね」

「……そう願いたいよ」


 ギルドに着き受付で要件を話すと、ギルドマスターが会いたいと言っているとの事で、部屋に行こうとした時セイが、

「僕は、ちょっと他からも情報を集めてくるから、ギルマスには兄さんが会いに行って」

「おう!よろしく頼む」

「任せて!」


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