表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/112

第3話  【イースが欲しい‼】

 一瞬、シャギーの言葉の意味が分からなかったが、理解が及ぶと思わず全員引いた。


「なっ! お前! そういう趣味があるのかよ!」

 いつもは無口なディーも思わず大声を出す程の衝撃だった。


 アシューナも、

「……そう、そうなのね。だからいつもイースを構っていたのね…」

 と、気持悪そうに、シャギーに目を向ける。


「……っは⁉ そんな趣味ある訳ねえだろ! 俺はまともだ! 女が好きだっつうの‼」


 シャギーは、思わず大声を出したが、出した瞬間クラッとよろめき、テーブルに手をついた。


「じゃあ何なんだよ」

 ピットも困惑している。


シャギーは力なく、

「…ああ、それな。俺、正直言ってもう力が出ねえんだよ。日々力が無くなってくるのが分かってよ、自分の荷物どころか、自分の体も動かすことが出来なくなるんじゃないかとおもってよ、……それでイースを荷物持ち兼、俺の暇つぶしのおもちゃとして、欲しいって事だよ……」


「お前なぁ、俺達だって、荷物持ちが必要な事くらい分かっているだろうに」


「…アラバス。お前らA級に昇格しただろ、これから『光の聖剣』に入りたいって奴が間違えなく増えるだろ、その中からイースより重宝する剛力を雇うなり、新たに奴隷を買うなりすれば良いじゃねぇか」


「そうは言ってもね」

 アシューナはためらう。


 他に使える剛力を新たに雇えば、その分給金を払わなければならず、イースだと、ほぼただ同然の現状である。『光の聖剣』のメンバーは何故か全員、金にうるさいのだ。


「しかしなぁ」

 アラバスも迷っている。シャギーの言う事はもっともだと思うのだが、だからと言って、ただ同然の奴から、金を払う事になる奴に変わるのは、釈然としない思いがある。


「…だったら、これをやるよ」


 と言って、シャギーが腰につけたポーチから取り出した物に、一同目を見張る。

 それは、赤子のこぶし大のミスリルの原石だった。


「お前!こんな物どこで手に入れた!」

 ダルトンが吠えるように叫ぶ。


「……これか?これはまだお前達と出会う前、ミスリル鉱山で働いていた事があってさ、その時に偶然手に入れたもんだよ。……ああ、言っておくが、かっぱらったもんじゃねえからな‼」


 この大きさのミスリル原石であれば大金貨1枚はするはずで、簡単に手放そうとするシャギーにピットは疑問を口にする。

「これを換金すれば、足代でも治療費でもなんにでもなるだろうに、なぜ手放そうとする? お前は何を考えているんだ?」


「…俺はもう、アレッドカまでもたないような気がするんだよ…換金先を探したりする時間も無いし。……だから、爆発して粉々になる位なら、使ってもらった方が良いと思っただけさ」


「……分かった。正直、イースをお前にくれてやるのは惜しい気もするが、こんな物をもらってしまってはな。しょうがない、イースはお前にやる、皆もそれでいいな!」


 アラバスはイースを惜しむふりをしつつ、このミスリル原石をどうするか、内心ほくそえんでいた。


「で、いつ出発するの?」


 マージュに問われたシャギーは、

「…今、自分の体の事を思えば、なるべく早くここを出たい。明日、朝一番の定期巡回馬車で行こうと思ってる、一刻も早く出て行きたいからな。……俺が、新たに剛力を探す時間がもったいねぇんだ。……ホント助かるよ」

 と、力なく言った。


「イース!そう言う事だ。明日から、シャギーに付いて行け!」


 今まで、黙ってみんなの話を聞いていたイースは、こんなことは今まで生きてきた中で、いつもの事だった。

 しかし、気性の荒いシャギーとの旅は、人生最悪の旅になると心の中でため息をついた。

(僕は、明日から、死ぬ事になる旅に出るんだ。……これで楽になれるかな?……)


「…じゃぁ、イース、これからよろしくな」

 と、シャギーはイースの肩に手を置いた。


 翌朝、『四色街道ししょくかいどう』左回りの定期循環馬車で、シャギーとイースは旅立って行った。


読みやすいように、少し手を加えました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ