第28話 【闇の力】
リョウ達は、早速転移で聖都サマリーアートの冒険者ギルドに転移し、ギルマスに結界の事を伝え、女王陛下に今後どうしたら良いか指示を仰いだ。
指示が出るまでの間、監視も兼ねて新しいオアシスに居るように言われてしまい、夜は家に帰れなくなってしまった。
「…………家に帰れなくなっちゃったね」
「……夜は家のベッドで寝たかったんだがな~」
「今晩、どうする?」
「そうだな~。……以前、二人で修業しながら旅をした時と同じように、コンテナハウスで寝るか?」
「ん! そうだ! それがあったね!」
と、言う事で『光の聖剣』の面々が見ているとも知らずに、アイテムボックスからコンテナで作られた簡易ハウスを取り出し、中に入って行った。
「何だあれは⁉」
「あの四角い箱の様な物は、家なのか?」
「…………あれなら、こんな砂だらけの所に寝ないで済むのに‼」
アシューナは、自分がこんな砂漠に直に横にならなければならない事に、みじめさと理不尽さに憤りを感じていた。
『光の聖剣』のメンバーの『ブラッド』に対する不満や、憤り、恨みなど様々な負の感情が高まり、殺意までに変わるのにそう時間はかからなった。
(何で、あいつらだけがチヤホヤされるんだ⁉)
(私たちの方が優秀なのに⁉)
(くそっ! インチキ魔導士め!)
(…………あいつら!絶対殺してやる!)
不満が頂点に達したその時、それは起こった。
結界で封じられているはずの、オアシスの底にある遺跡の扉が突如開いた。
禍々しい気をまき散らしながら、オアシスの水をすべて吹き飛ばし、邪悪な気配を纏った網の様な物が『光の聖剣』全員を掴み、遺跡に引きずり込んだ。
異様な気配と衝撃にリョウとセイは、転がる勢いでコンテナハウスから飛び出し、
「何だこの気は‼」
「兄さん、オアシスの方からだよ‼」
「………うっ、なんなんだこの強い闇の力は⁉ 吐き気がする!」
「あっ!あれ見てよ‼」
セイが指さす方向に目を向けると、『光の聖剣』が遺跡に引きずり込まれる所だった。
「何で! あいつらがここに居るんだ⁉」
「そんなの、僕が分かる訳無いでしょ!」
「別に、お前に聞いた訳じゃないって‼」
徐々に強くなる闇の気に、
「ううっ……闇の気が強くて気分が悪い!」
次第に具合が悪くなるリョウ。
セイはそれ程闇の力に影響されないようだが、リョウは強力な闇の気に体が侵食され、徐々に力が抜けて立っていられなくなった。
「…………あんな奴らでも……助けない訳には……いかないだろうな」
「その体で、大丈夫なの⁉」
「ハァ…………ちょっと待て……対闇魔法の聖結界を張る……それで少しは楽になるはずだ…………」
リョウは、愛用の杖を取り出し、詠唱をつぶやく。白銀に輝く魔法陣が現れ二人を包む。
リョウの呼吸が楽になり、動きも元に戻った。
「ハァ~何とか楽になった! 本当にいったい何なんだって言うんだ?」
セイがオアシスを指さし、
「……ねぇ兄さん、……もしかして結界が無くなっている…………?」
セイのその言葉に、リョウは愕然とする。あれほど強固な結界が、跡形もなく無くなっていたのである。
「……どう言う事だ⁉」
考えられるのは、マージュが結界を解いたと言う事だが、リョウ自身が結界の解除に苦労すると考えているのに、言っては悪いが格下のマージュに、あの結界が解除出来るとは思えないのである。
ともあれ、『光の聖剣』をこのままにしておく事は出来ないので、救出する為に遺跡の中に入る事にした。
「中がどうなっているか分からんから、準備は万全にしておけ‼」
「分かった‼」
リョウは、セイのバスターソードに聖魔法を付与し、自分達にさっきかけた聖魔法結界をさらにかけ上書きして強め、対魔法、対物理結界も重ね掛けした。最後に愛用の剣もアイテムボックスから取り出した。
一方セイは、エリクサー、ハイポーション、HP・MP両ポーションを、いつでもアイテムボックスからすぐに取り出せるようにした。
「行くぞ!」
「うん!」
水が一滴も無くなったオアシスの底に、遺跡の入り口が不気味に開いている。
中に入ると、外とは比べられない程の闇の気が充満している。聖魔法結界を強めてあるとは言え、やはりこの闇の気はリョウには堪えるようだ。
「兄さん、大丈夫?」
「ああ、まぁ、何とかな……」
リョウは、闇の気に押され気味ではあるが、こんな事で弱気になる訳にはいかない。気持ちを強く持って遺跡内を進む。
遺跡内部には、これでもかと言うほどの、闇系の魔物が居た。
セイは、聖魔法を付与されたバスターソードで、魔物を狩る。一振りする度に白銀に輝く機軸が描かれ、無数の魔物が姿を消す。
一方リョウは、闇属性の弱点である、聖魔法・光魔法を次々放つ。
「【光球弾】!【聖光矢】!」
数を減らしながら奥へと進むが、進むにつれ魔物の数も増えてくる。
「これはではキリが無いな‼」
「ホント! どっから湧いてくるんだろう⁉」
二人とも、もうかなりの数のポーション類を使っている。このままだと、ポーション切れになってしまいそうな状態である。
リョウは、
(どうする⁉ いったん外に出て、体制を整えて出直すか?)
そんな事を考えていた所、通路の先に明るく広い空間が有るのが分かった。急いで通路を抜けると、その先に広がっていたのは、まるでどこかの神殿を思わせる様な場所だった。
そして、そこに居たのは、闇の気を纏った『光の聖剣』の面々だった。
「よう! 遅かったじゃねぇか? 俺達の方が先に着いたぜ! お偉いS級冒険者さんよ‼」
そういうダルトンは白虎の獣人族なのに、黒虎で白い縞模様になっていた。その姿からは、吐き気を催す程邪悪な闇の気を放っている。
完全に闇と同化している。
他のメンバーも闇に侵されているようで、身に着けている装備でさえ闇色になっている。
アラバスは、黒光りする甲冑を身に纏い、闇の気を放つ剣を下げ、その称号が「勇者」から「暗黒勇者」に変わっていた。
アシューナは、白髪に黒肌、黒曜石の様な瞳の、ダークエルフ。
ディーは、黒髪で白いメッシュが入っている。血の様に赤い目。
ピットは、白髪で顔に黒い幾何学模様の様な筋が入っている。
魔女っ子マージュは、全身灰色一色になっていた。
リョウは、『光の聖剣』の面々から只ならぬ負の強い力を感じ、
「どうした! 何があった⁉」
叫ぶように問いかける。
「ハァ? 何があっただって? 簡単な事さ! ここの何かが俺達に力をくれたのさ‼ お前達二人を殺る為の力をな‼」
アラバスが言うが早いか、『光の聖剣』全員がリョウ達に襲いかかって来た。
アラバスの最初の一撃をリョウは剣で受け止める。
「グゥッ‼」
(くっそ!なんて重いんだ!)
「はははは、この間の勢いはどうした⁉ やっぱりイカサマだったんだなぁ~!」
闇の気で力を増し、笑いながら攻撃を繰り出すアラバスに、リョウは苦戦する。
アラバスにだけではなく、ディーも絶え間なく槍を繰り出し、アシューナは速さにモノを言わせ切りかかってくる。
マージュは仲間に戦力増強のバフをかけ、傷を治すための癒しもかけている。
リョウは対物理結界が張ってあるとは言え、アラバスの攻撃を受けながら、その他の攻撃をかわし切れるはずもなく、次第に傷が増えてくる。
一方セイは、ダルトン相手に善戦しているが、ピットが弓で急所を狙ってくる。それに気を取られると、今度はダルトンのメイスが撃ち込まれてしまう。必然的に、矢は急所以外は当たるに任せるしかない状況に陥った。
この状況を打破すべく、リョウは大規模攻撃魔法を使いたいが、詠唱に必要な時間が取れない。小技的な魔法でけん制し、機会をうかがう。
リョウは攻撃を搔い潜り、セイの近くに走って行き背中合わせになり、
「魔法の詠唱がしたい! 時間を稼ぐこと出来るか⁉」
「長時間は無理だけど、何とかしてみる‼」
「すまん!頼む!」
残り少ないハイポーションを一気にあおり、リョウは詠唱を始める。




