第27話 【オアシスの結界】
遺跡調査の件は、家に帰ってからセイと話し合うとして、とりあえず冒険者ギルドに寄って、ギルマスに報告する事にした。
王宮に設置してある転移陣で、冒険者ギルドの私室に転移する。
ギルマスの部屋を訪ねるリョウ。その姿を見ていた者が居る。『光の聖剣』のピットである。
彼は、驚くほど存在が薄く、周りに埋没して目立たない。その特徴を生かし、情報収集なども得意にしている。
(あいつだ、あのインチキ魔導士め! 今度は何をするつもりだ?)
ひっそり、誰にも気づかれる事無く二階に上がり、ギルマスの部屋の扉に張り付いた。
息をひそめて中からの声を聞く。
(と、言うわけで、新しく発見されたオアシスの調査に行くことになりました)
(ああ、その話は私も聞いている。何か、良くない事になっているようだな)
(そうみたいですね。被害が出てからでは遅いので、早急に内密に調査せよとの事ですので、今かかっている案件を急ぎ片付けて、向かいたいと思います)
(……くれぐれも無茶はするなよ)
(やだな~、いつも冷静に仕事してるでしょう⁉)
(…………ドラゴンを狩ってくる奴が何を言ってる!)
(てへっ!)
(可愛くない‼)
密かにその話を聞いたピットは、これはチャンスだと思い『光の聖剣』が根城にしてい要る所に急ぎ戻った。
この話を聞いた『光の聖剣』面々は、
「このオアシスの調査を我々が、あいつらより先にこなせばS級への評価に繋がるはずだ!」
「そうだなアラバス! これであのくそ生意気な魔導士の、奴の鼻を明かす事が出来るぜ!」
「……ダルトンの言う通りだな。……何にせよ、あいつは今すぐには動けないようだしな……」
「そうね、私たちがいち早く行って、片付けてしまいましょうよ!」
「でも、大丈夫かな?そんな結界が張ってあるのに?」
「マージュは心配しすぎだ。お前なら、そんな結界すぐに解除できる!」
(ピットはそう言うけど……私の魔法じゃ、あのリョウって人の足元にも及ばないと思う……)
第七オアシス『ラグーン』は聖都からかなり遠く、西の国境都市『ガドシュ』からでもラクダで二週間以上はかかるので、リョウ達を出し抜く為に、急ぎアラバス達一行は西に向けて出発して行った。
そんな事になっているとは思ってもいないリョウは、家に帰りセイと今後について話し合った。
「と、言う訳でまた砂漠の仕事だ」
「イエロキーは砂漠の国だけどさ、こう砂だらけの仕事ばっかりだと、そのうち干からびてしまいそうだね」
「全くだな! まあでも『ラグーン』にはこの間行ったから、転移陣があるんで楽って言ったら楽だけどな」
「じゃあ、今の仕事を早く片付けて『ラグーン』に行こう!」
「ああ、そうするか」
ここの所、次から次へと仕事が入り、ろくに休みが無い二人だが、さっさと二つの依頼を片付けて、今度こそゆっくりしたいと願うのだった。
遠い西の果てにあるオアシスでも、リョウ達には転移と言う移動手段が有るので、夜は家に帰る事が出きる。
今回、自分の足で移動しなければならないのは、『ラグーン』から新しく発見されたオアシスまでであり、それもいつものサンドバギーで行くつもりなので、たいした苦にもならない。
新しく発見されたオアシスに、先に着いた『光の聖剣』のメンバーは、早速結界の解除に手を付けた。
しかし、案の定と言うかマージュでは、結界の魔法陣の構成を読み解く事さえできなかった。
「何やってんだよ、早く結界を失くせよ!」
ダルトンのイライラは頂点に達していた。この場所に来てから早六日が立っている。
他のメンバーも、『ブラット』が来る前にどうにかしたいと思っていただけに、この時間のロスがまどろっこしく感じる。
「でも…………。私じゃ、こんな見た事も無い結界魔法、解く事なんて出来ないよ!」
マージュも、魔導士としては優秀な方ではあるが、ここにかかっている結界は見た事も無かったのである。
「チィッ! 使えねえ奴だな‼ こいつもイースの様な役立たずのお荷物だな!」
「そう言うな。これでも居ないよりマシな魔導士だからな」
ダルトンもアラバスも自分の価値観でしか、人を評価できない人間である。
しかし、実際の問題として、この結界をどうにかしないと遺跡の中に入る事が出来ず、リョウ達の鼻を明かす事など夢のまた夢になってしまう。
そんなこんなで、時間が過ぎていた所にそれは聞こえてきた。
遠くから響いてくるけたたましい爆音に、『光の聖剣』のメンバー全員は、魔物が現れたと思い緊張が走ったが、それは、見た事もない乗り物に乗ったリョウとセイであった。
「あー!酷い目にあった‼」
「何言ってるのさ! 兄さんが砂除けの魔法掛けなかったのがいけないんじゃん‼」
「俺が悪いのかよ⁉ 確認せずにバギーを走らせたお前はどうなんだよ⁉」
「えっ! 僕のせいだって言うの⁉」
全身砂まみれで言い争う二人だったが、そんな事していても時間の無駄であると気付き、リョウは風魔法で二人の体から砂を取り除き、バギーをアイテムボックスに収納した。
リョウはさそっくオアシスの結界を知らべるが、
「…………凄いな、これは…………」
サッと、見ただけでリョウでも解析するのに一苦労しそうである。
「こんなに複雑な防御結界なんて見た事無いぞ‼」
「そんなに凄いの?」
「ああ…………。以前、北西の神殿遺跡調査に行った時に手に入れた、古代魔法の書にこれと同じような魔法陣が記されていたんだ」
「それって、兄さんがライフワークにしている研究だよね?」
「そうだな…………。それにしても、これは本当に凄い!」
魔法に関しては第一人者でもある、リョウがそこまで言うのだから相当なものである。
それを二人に見つからないように様子を窺っていた、『光の聖剣』のメンバーは、
(そんなに凄い結界じゃ、私じゃどうにもならないよ!)
悲痛そうにマージュは言う。
(それじゃぁ、どうすんだよ‼)
(このままだと、あいつらに先を越されてしまうぞ!)
(…………奴らが、結界を解除した時を狙って奇襲をかけ、二人を殺ってしまえば良いさ)
(あら!良い考えね!あの魔導士はこの私を足蹴にしたのよ、仕返しにちょうど良いわ)
リョウは、改めて詳しく慎重に結界を調べ始める。
「………ふむ。この結界は古代魔法の防御、防魔、それと人が入る事を防ぐように、五重、いや六重の結界が張ってあるな」
「えっ? 何それ? それって明らかに絶対入るなって事じゃないの?」
「そうだろうな」
それでも、女王からの指示は遺跡の調査も有るので、セイは、
「兄さんは、この結界を解く事が出来る?」
「出来なくはないと思うが…………。これは、このままにしておいた方が良いような気がする」
「どうして?」
「おそらくだが…………何か良くない物を封印しているんだと思う」
リョウは、ここに来てから絶えず感じる嫌な気に、両腕をさすり不快を抑えきれない。
「セイは、感じ無いか?」
「何を?」
「こう、爪でガラスをひっかいた時の様な、神経に触る嫌な感じ。絶えず背筋がピリピリする様な?」
「う~ん。なんとなく感るけど、気のせいだと思ってたよ」
セイも、なんとなくだが不快さを感じていたが、リョウの様に聖魔法の使い手では無いので、さほど影響を受けないようである。
「とりあえず、陛下にこの事を報告して、指示を待った方がよさそうだな」
「兄さんの感は良く当たるから、ここは慎重になった方が良いかもね」
二人はそう結論付けて、その場を離れようとしている。
しかし『光の聖剣』としては、結界を解除せずにここを離れられても、計画が立ち行かなくなってしまう。
色々思案してみたが、所詮考える事が苦手なメンツであり、結局良案は出なかった。
「仕方がない、相手の出方を見て、それから行動しても遅くはないだろう⁉」
結局、行き当たりばったりの結論になってしまった。




