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第26話  【ドラゴンのお値段】

 その後、正気を取り戻した『光の聖剣』のメンバーは、ギルド内に居た冒険者たちの、冷ややかな視線を避ける様に、ギルドを後にして行った。


 その心の内は皆、リョウに敵愾心(てきがいしんを燃やしていたが、本末転倒の完全な逆恨みである。

(クソッ‼ あんな魔導士なんかに負けるなんて‼)

(何か、いかさまをやったに違いない‼)

(ギルドごとぐるで、俺達をはめたんだ‼)

(この私が、速さで劣るなどあり得ない!きっと何かの間違いよ!) 


 しかし、マージュだけは違った思いにとらわれていた。

(……あの人……なんか、どこかであったような気がする……とても近しい人のような?)


 一方リョウは、

「で、ギルマス。ドラゴンの件どうするんです?」

「ああ、すまん、忘れていた。……あいつらに、あまりにも腹が立ったんでな!」

 ギルマスは、かなりご立腹である。


「……だからと言って、俺に相手させるのはどうかと思いますけどね? そんなに腹立たしかったら、自分で相手をすれば良かったんじゃないですか?」

「まあ、私は第一線を退いているからな。…………それに、今はお前のほうが私より実力が上だ」

「……ご謙遜けんそんを」



 と言うわけで、ドラゴンの件は振出しに戻り、リョウ達はいつもの日常に戻った。


 自宅に帰ったリョウは、事の顛末をセイに話し、『光の聖剣』との事を今後どうするか話し合う。


「そんな事があったんだ」

「ああ、ホント、面倒くさいったらありゃしないよ」

「でも、楽勝だったんでしょ?」

「まあな。あいつら以前と戦い方が、全然変わってなかったからな」

「進歩が無いんだね」

「全くだ」


 リョウとしては、セイに『光の聖剣』時代を思い出してほしくない。辛い目にあっていたので、本当は話さずにいたい所ではあったが、話さないでいて、街中でバッタリ会ってしまう事も考えられるので話したが、セイ本人はさほど気にしてはいないようである。


「さて、これからどうしたもんかね? 出来ればあいつらと関わりたく無いんだがな」

「『聖光の館』に所属するのかな?」

「あいつらじゃ、他の所に所属するのは無理じゃないか? 特にダルトン」

「………アハハ!、そうだね」

 ダルトンの性格を、よく分かっている二人である。


「あの後、あいつらがギルドを出て行く時に、俺に思いっきりガン飛ばしてたからな~」

「相当恨まれているね。特にダルトン!」

「ハハハ……。ハァ。やってられん!」

 乾いた笑いで、愚痴ぐちるシャギー。


「でも、何かにつけ絡まれそうだよね」

「なるべく、あいつらに会わないように、立ち回るしかないか!」

「それで、フラグが立たなきゃいいけどね!」

「嫌な事言うなよ‼」



 月日は流れ半年が過ぎた頃、ようやくドラゴンの解体作業が始まった。あまりにも巨大な為、作業場では無理な事は分かっているので、急遽、聖都の城壁門の外の草原に仮の作業場を設け、国中から腕の立つ解体者が集められ行われる事となった。


「ギルマス、おはようございます」

「ああ、リョウか。早速だがドラゴンを出してくれ」


 リョウがアイテムボックスから、取り出したドラゴンを見て、周りに居た大勢の人々がその大きさに、開いた口が塞がらないようである。


「改めて、全体を見てみると本当に巨大だな。……よくこんな物二人で倒したな⁉」

「まあ、運が良かっただけですよ。……ホント、あの時は死ぬかと思いましたからね」

「無茶をする……」

「って、言うか。あの時は戦わないで、逃げる事など出来ない状況でしたからね。どうせ戦わなくてはならないなら、絶対に勝つと思わなければ生き残れません出したよ」


 命懸けのドラゴンとの死闘をサラリと言うリョウを、ムーンシャナーは静かに見ていた。


 ドラゴンの解体は順調に進み、一週間ほどで終わった。

 リョウがその場にいてもやる事が無いので、いつも通りの日々を過ごし、解体が終わった頃ギルドに現れた。


「ギルマス居ますか⁉」

 ギルドマスターの部屋の扉をノックする。

「入れ」


 いつもの短い返事があり、部屋に入ると、

「丁度いい所に来たな。買取の総額が出たぞ」

 リョウは、ちょっと、いやかなり期待を込めて金額を聞く。

「いくらになりました?」

「色々な経費を引いて、お前の取り分は…………白金貨で五百枚だ」


「……………………はっ?」


 聞き間違いかと思った。日本円で五十億である。

「…………えーと、マジ?」

「嘘を言ってどうする? これでも少なすぎる程だ。総額の一割にも満たないからな。…冒険者やめて遊んで暮らせるぞ!」


 リョウの反応を面白がりながら、ムーンシャナーは彼を見る。

「それだけ、ドラゴンの素材は貴重なものが多く、かつ高値で売れるのだ」

「ハァ……、あまりに現実離れして実感がありません」

 放心状態のリョウである。


 ともあれ、デスクの上にあった白金貨が入った袋を渡され、心ここにあらずな体で自宅に帰って行った。



 あれから、案の定『光の聖剣』は『聖光の館』に所属の申請をした。

 その時に、ギルマスのムーンシャナーとひと悶着もんちゃくあったようだが、実力差がありすぎて相手にならなかったらしい。


『光の聖剣』はA級の依頼しか受ける事が出来ないが、ここ最近はA級の依頼も満足にこなせていないありさまである。しかし自尊心だけは天より高く、周りから煙たがれていた。


 リョウ達は、なるべく『光の聖剣』と鉢合わせしないように立ち回り、順調にS級ランクの依頼をこなして評価を上げていった。

 これもまた、『光の聖剣』からしたら面白くない事である。自分たちの実力の無さを棚に上げ、リョウ達が不正に評価を上げていると思っていたのだった。


 年が明け、女王陛下の新年のお言葉が発せられ、新しい年が始まる。


 そんなある日の事、いつもの様に女王から手紙鳥が舞い込んだ。内容は、一言「直ぐ来い」とだけ記されていた。


「お召しにより、シャギー、参上致しました」

「よく来ました。早速ですが話に入ります」


 いつもは、ここで少し世間話の様なコーヒータイムが有るのだが、今日はいきなり本題に入ったので、何か急ぎの依頼でも有るのかとシャギーは思う。


「話と言うのは他でもありませんが、実は第七オアシス『ラグーン』の先に新たなオアシスが見つかったのです」

「ここの所、良くオアシスが発見されますよね?」


 去年までは、第五オアシスしか存在しなかったが、今年に入ってすぐに第六・第七と見つかり、西への交易行路が伸びているので有る。


「そうですね。ですが、これが普通のオアシスなら問題が無かったのですが……」

「何か問題が起こったと?」

「そうです。オアシスの底に、遺跡らしき物の入り口が見えるとの報告が来ているのです」

「へぇ~。それはまた。聞いた事が無いですよね? オアシスに沈んでいる遺跡など」

 イエロキーは砂漠が多いので、水中遺跡は珍しいのである。


「そうですね。ただ、それだけなら何とか出来そうなのですが、オアシスを覆うように強力な進入防止の結界が張られているらしいのです」

「らしい?」

「調査に同行した魔導士は中級であったためか、入る事が出来ずそこの所がよく分からなかったそうです」

「それで、俺達に行って調査しろと?」

「そう言う事です」


 侵入を拒む結界となれば、遺跡内部には貴重なお宝か、あるいは何かを封印している可能性もある。

「結界の調査だけで良いんですか? 遺跡のほうはどうします?」

「できれば、そちらも調べてもらえると手間が省けて助かります」

「分かりました。では、そう言う事で、依頼をお受けします」


 女王も感の良い人なので、この遺跡は何か良くない感じが有るらしく、

「ああ、それとこの件については内密にして下さい。未知の遺跡には何があるか分かりませんから、無用な被害が出ないようにしたいのです」

「了解しました!」


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