第24話 【『光の聖剣』】
とりあえず二人は、いったん家に戻る事にした。
と言うのも、このまま王宮に行っても、いつもの部屋に女王が居るか分からないので、次に呼び出されるのを待つしかないのである。
待つこと、2日。女王から手紙鳥が来た。
セイを伴い王宮に転移すれば、そこには女王と猫獣人の女の子がいた。
女の子はメイド服を着ていたが、それがまたとても似合っていて、かわいいのである。思わず二人とも見とれてしまっていた。
「んっ、ん!」
女王の咳払いで我に返る二人は赤面してしまった。
「見とれるのは分かりますが、とりあえず座って下さい。事の顛末を話します」
女王が言うには、人身売買の闇組織は各国にその下部組織が有り、こう言う者が欲しいと言う要望に応えて、人をさらって売り渡すという事をしているらしい。
その規模は大変大きく、今回捕らえた者はほんのしったぱに過ぎなかったようだ。
それでも、リョウの幻覚の脅しが効きすぎるくらい効いたので、ペラペラと良くしゃべってくれたそうだ。
それにより、とりあえずイエロキーでの、人身売買組織の壊滅に目途が付いたとの事だった。
「それで、この子のこれからなのですが、あなた達の家のメイドとして使ってやってくれませんか?」
「「………えっ⁉ えー‼」」
思ってもみなかった事に、二人仲よくそろって驚く。
「この子の親は組織の人間に殺されたそうです。連れ去るのに抵抗したという事だけで」
本当にむごいことをする。
セイは自身が奴隷だったので、特に憤りが激しい。爪が手の平に食い込むほど握りしめている。
そんなセイの手の平をシャギーはゆっくり開いて、癒しをかけた。
「ほんの二日ですが、メイドとしての仕事を教えましたが、メイド長が驚くほど使える者だと分かりました」
「えーと、それでしたら、王宮でメイドをした方が良いのではないですか?」
「まあ、それも考えたのですが、まだ王宮に出仕できる年齢では無いし、何より人に怯えるのです」
あんな事が有ったのだし、人を怖がっても無理はない。
「それで、あなた達の家の環境が、この子の心を癒すのではないかと思いまして。ですので、この子を受け入れてもらえませんか?」
「頭をお上げください。女王陛下が、軽々しく頭を下げるものではありませんよ」
「では、引き受けてもらえますね?」
こうなっては、引き受けざる終えないので、
「………私たちでよろしければ、引き受けさせて頂きます」
ホッとした様子の女王は、
「この子は、ミーニャと言います。世にも珍しい「白猫双眼」と言うそうです」
「勉強不足で申し訳ありませんが、白猫双眼とは何なんでしょうか?」
「猫獣人でも白は珍しく、その上オッドアイと言うのは、千万に一人と言われる位なのだそうです」
この世界、白猫は非常に珍しい存在なので、本物の猫でも高値で売れ、ましてや言葉を話す猫獣人になると、めずらしさも相まって、値段が付けられない位だそうだ。
「ミーニャ、あなたもそれで良いですね?」
「はい、女王様。ミーニャはセイ様の所に行きますニャー」
ミーニャは、助けてくれたセイにとても感謝している。
と、言う事で二人の家に新しい住人、メイドの猫獣人のミーニャが加わった。
とりあえず、また家に連れて来たものの、この家には電化製品が山ほどありそれらの説明や、リョウのスキル『百貨店』についての説明と、口留めを徹底した。
口留めに関しては、ミーニャは人と会うのが怖いので、ほぼ家から出ない事で、他人に話す事もないであろうと判断し注意だけにし、この先町中に出るようなことが有れば、その時改めて考える事にした。
ミーニャは、本当によく仕事が出来、家電製品の理解も早く、良く働くいい子で、その上かわいいと来てるので、二人の癒し的な存在になっていった。
ただ、猫だからなのか、好奇心が旺盛で時々困った事を仕出かすのが、唯一のマイナス点である。しかし、そんな事はあまり気にならない位で、二人に家族として向かい入れられていた。
そんなスローライフな日々を過ごしていた時、冒険者ギルドからドラゴンの事について話が有るので、至急来るように連絡があった。
「やっと、ドラゴンを何とかできるか。長かったな~」
「別に、アイテムボックスの中だから邪魔にはならないけど、落ち着かないよね~」
「まあな、早く処分したいもんだ」
今日はリョウ一人でギルドに向かう。
ギルドの『ブラット』の私室に転移し、ギルマスの部屋に行き、扉をノックする。
「リョウです」
「ちょっと待て、今出る」
ギルマスの返事で扉の前で待っていると、すぐにムーンシャナーが出て来た。
「解体所に行くぞ、そこで話をする」
「やっと、ドラゴンとおさらばできると思うと、肩の荷が下りますよ」
リョウの責任の無い言いように、彼女はジト目で彼を見て、
「…………自業自得だろ」
と言った。
「……ハイ、ですね……」
肩を落とす、リョウである。
一階に降りると何やら受付が騒がしい、どうやら冒険者と受付の人間がもめているらしい。
「何ですかね?」
「ちょっと見て来い」
「俺が?」
「お前がだ!」
「……はいはい」
そこにはリョウが最も会いたくない人物たちが居た。
ここ、イエロキーに居るはずの無い『光の聖剣』のメンバー全員だった。
ここで、正体がばれるとは思わないが、出来れば係わりたくない。
しかし、様子を見て来いと言われているので、声を掛けないわけにはいかず、渦中の受付に居たランダに声をかける。
「何、騒いでいるんだ!」
「あっ! リョウさん。良い所に!」
(こっちは、全然良くないがな!)
「で、何だ?」
「この方たちはA級ランクなんですが、S級ランクの依頼を出せと言っているんですよ~!」
リョウは、初めて会ったかのように、アラバスに声をかける。
「俺は、ここに所属しているS級ランクのリョウと言う。あんたたちはA級だろ? なんでS級の依頼を受けたがる?」
しかしアラバスでは無く、後ろに居たダルトンが、リョウをバカにしたように、
「なんだ? この生っちょろい奴は、お前がS級だと! このギルドはよほど人材不足なんだなーー‼」
その一言でギルド内がざわつく。
(あいつ、リョウさんの事知らないのか⁉)
(いや、イエロキーは初めてらしいぞ)
(怖いもの知らずだな‼)
(ドラゴンスレイヤーだぜ、リョウさんは!)
そのざわつきに戸惑うダルトン以下のメンバー。
当の、ダルトンはそのざわつきが面白くなく、さらにリョウに絡む。
「はぁ⁉ ドラゴンスレイヤーだと! バカバカしい、おお方巨大なトカゲをドラゴンと言って倒しただけだろ‼」
そんなリョウ達の後ろから、ムーンシャナーがダルトンをバカにしたように見ながら声をかける。
「嘘かどうか、これからかドラゴンの解体をするから、見に来ればいい! お前たちが自信を無くすだけだと思うがな」
(うわ~、ギルマス~、こいつを煽らないで欲しいです~!)
案の定、ダルトンは真っ赤になって、
「ハッ‼ 言われなくても行ってやるぜ! トカゲを出して赤っ恥をかくのはお前のほうだ‼」
裏の解体所にぞろぞろと向かい、
「バカラン、居るか⁉」
「居ますぜ! ギルマス。ようやくドラゴンを拝む事が出来ると思うと、夕べは眠れなかったぜ」
「リョウ。出せ」
「…………ここに?」
「そうだ。何か問題でもあるのか?」
「え~と、ここだと頭くらいしか出すことできませんが、どうしましょう?」
バカにしたように吐き捨てるダルトン。
「ハッ! 所詮ドラゴンなど持っていないから、出せないんだろうよ!」
「ハァ、しょうがない。じゃあ、頭だけな」
と言って、アイテムボックスから頭の部分だけを取り出して見せた。
その大きさは解体所をほぼ埋め尽くすくらいの大きさで、そこから体全体を考えると、どれほどの大きさになるか空恐ろしいほどである。
周りのギャラリーも、あまりの大きさに、唖然として一言も話せないでいる。
シーンとと静まり返った中、ただ一人ダルトンは、
「てめぇ~! こんなのいかさまだ‼ 何かの仕掛けで大きく見せているだけだろ‼ だいたい、そんな大きいもんが物が入るアイテムボックスを持って居る奴なんざ居るわけねぇ‼」
リョウもいい加減頭に来て、売り言葉に買い言葉である。
「じゃあ、聖都門の外で全部出してやるよ! あそこなら広いから出せそうだしな!」
「ふん! そんな事しなくてもてめえが、いかさま師だと言う事だけで十分だ」
ここで、アラバスが例によってリーダーを気取って、
「ダルトン! そこまでにしろ。俺たちの目的は高ランクの依頼を受ける事で、もめ事を起こす事じゃ無い」
アシューナも、
「そうよ、次に高ランクの依頼を受ければ、私たちはS級になれるのよ」
ピットは、
「そうだ。こんな下らない事に付き合ってないで、早く依頼を受けようぜ」
ムーンシャナーが冷めた目で彼らを見て、
「残念だが、お前達A級ランクには、S級の依頼を出す事は出来ない! 基本このイエロキーでは、S級の依頼はS級にしか出せない事になっている。S級の依頼を受けたければ早くS級になる事だな!」
「ハァ‼ ふざけてんじゃねぇぞ! このアマ‼」
ダルトンの言葉にその場が凍り付く。
(あ~あ、ギルマスを怒らせた!こりゃ~血の雨が降るぞ)
と、誰もが思った。




