第14話 【ギルマスからの呼び出し⁉】
二人が『黄金の葡萄』を拠点にして、早三年が過ぎていた。
リョウは23歳、セイは19歳になり、順調にランクを上げ、今では押しも押されぬA級冒険者である。
近頃は、S級に上げるべきだとの声も多く聞こえるのだが、リョウは魔法の研究、セイは錬金術の錬成に情熱を傾けていて、昇級など面倒事でしかないので、あえて、昇級試験を受けないでいる。
リョウは、冒険者ギルドの他、魔導士ギルドにも所属しており、上級魔導士としての地位もある。
一方セイはサマリーアートに来てすぐに、良い錬金術の師に巡り合い、錬金術士としての力を瞬く間につけて行った。
セイも、リョウと同じく、冒険者と錬金術の両ギルドに所属し、上級錬金術士である。
そんな充実した毎日を送っていたある日のことである。リョウは、冒険者ギルドのギルドマスターから呼び出しを食らった。
半分あきれ顔のセイに、
「兄さん、いったい何をやったのさ?」
「いや~、何かをやった覚えはないんだけどなぁ~」
「逆に、何もやらなかったとか?」
「それ! それなら覚えがある!」
相変わらず中の良い二人である。
そんな中の良い兄弟を見ながら下宿屋の主人ロイドは、
「お前たちは、本当に仲がいいな。仲が良すぎてそんなんじゃリョウ、お前、嫁さんなんか来ないぞ!」
「大丈夫! リーリがお嫁さんになるから!」
今や、リーリも16歳になり立派なお年頃の娘であり、リョウにあこがれていて、いつもお嫁さんアピールをしているのであった。
「あっ、いや、……俺は、ほら、魔法の研究さえできればそれで良いから……嫁さんは、今の所、間に合っているかな?」
「なんだ⁉ 俺の、娘が気に入らないとでも言うのか⁉」
「いえ、滅相もないです。はい!」
ロイドも、リョウの事を認めており、年は離れているが、リョウにその気があれば娘を嫁にやってもよいとさえ思っている。
今の所、リョウは本当に結婚など考えておらず、口にはしないが自分の生い立ちを考えれば、むしろ、一生独り身でいたいと思っている。
「………。まぁ、ちょっとギルドに行ってくるわ」
(逃げたな)
と、皆に思われながら、慌てて下宿を後にしたリョウだった。
『聖光の館』に着いたリョウは、待ち構えていた受付のカイルに、
「リョウさん! ギルマスが手ぐすね引いて待ってますけど、いったい何をやらかしたんですか?」
「…………、いや、本当に俺も覚えが無いんだよ。とにかく、ギルマスの所に行ってくるわ」
「おたっしゃで~!」
「嫌な事言うなよな‼」
と、二階に上がっていった。
ギルマスの部屋の扉をノックして、
「リョウです!」
「入れ!」
返事があり、扉を開けた。
『聖光の館』のギルドマスターは、ムーンシャナーと言うハイエルフの女性で、エルフ特有のストレートの銀髪で、ローズクオーツの様な瞳、日本風に言うところの美魔女のようである。
元S級ランクの冒険者であり、その実績は群を抜いていたと言われている。
年齢はハイエルフらしく長命なのだが、900歳は超えていると言われていてるが、実際の年齢は非公開になっている。
あるクエストでケガをして現役を引退したが、ケガさえなければ今も現役で活躍しているだろう、と噂されている。
それ程の、人物でなのである。
人望も厚く、事務能力も有り、情にもあついので、冒険者も含めギルド職員たちから慕われている。
そんな彼女が正面の机で、肘をつき手を組み、入って来たリョウに、
「これを預かっている」
と、一通の手紙をよこした。
受け取ったその手紙には、王家の紋章が入っている。それを見たリョウは困惑顔で、
「…………え~と、これは何なんでしょうか?」
「城からの召喚状だ」
「……………………。」
あまりの事に、返す言葉も見つからず黙っていると、
「明後日の昼に、城に来るようにとの事だ」
「………え~と、断る事は……」
「出来るわけないだろ!」
「ですよね~………」
なぜこんな事になっているのか、訳が知りたいリョウは、
「ギルマスは、何か知っているんですか?」
「知らん。が、……だいたい見当はつく」
「何でしょうか?」
その問いに答えることなく、ニヤッと笑ったムーンシャナーは、
「城に行くには、その格好では行けんぞ。ちゃんとした服を用意しろ」
と言ったが、
「え~、面倒くせぇ~!」
といつもの様に、面倒だと返す。
彼女は一枚の紙を差し出し、
「この店は、下級貴族御用達の古着屋だ。話は通してあるので、今日、これから行って、服を揃えろ。分かったな‼」
「ハァ…、問答無用ですか?」
「そうだ、お前に断る権利は無いと思え」
重い足取りで部屋を後にし階段を降りると、そこには受付担当の職員が数名待ち構えていた。
カイルが代表するように
「リョウさん、ギルマス何ですって?」
「ハァ、まぁ…、たいした事無いよ。………ハハハ…ハァ」
と乾いた笑いをするリョウ。
「たいした事が無いようには見えませんですけど?」
と年かさの女性職員マールが心配そうに言う。
「いや。本当に、たいした事ではないんだ」
と言いながら、どんより暗い雰囲気を漂わせギルドを出て行った。
帰りの道すがら古着屋によると、待ってましたとばかりに、服を見繕われ、着せ替え人形よろしく、次から次へと着替えさせられた。
黒髪のリョウは、シャギーの時と違って好青年の顔立ちをしており、はっきり言ってイケメンである。スタイルも良いので、顔と相まってまともな格好をすれば、どこぞの貴族の御曹司のようである。
自分でも自覚が有るので、なるべくならこんな格好はしたくないのが本音で、本気で目立ちたくないのである。
とにかく、一番無難な服を購入して、店を後にしたが、……結構な出費なってしまった。
(ハァ、一体全体何だって言うんだ? ギルマスは心当たりが有るみたいだったけど。まあ、明後日にならないと何も分からないか)
下宿に戻って、城から呼び出された事を告げると、それぞれ違った反応を示す。
セイは、
「とうとう兄さんも城勤めをするんだね」
「違うわ!」
ロイドの女房のハナナは、
「王女様のお婿候補だったりして?」
「それも無い!」
ロイドは、
「お抱え魔導士なんじゃないか?」
「…………それはありそう…」
リーリは、
「私の、旦那様なんだからお城に行っちゃヤダーーー‼」
「…………。」
ともあれ、明後日の城ですべてが分かる事である。




