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第14話  【リョウ 対 斗蘭之】

 その少女は、絶世の美少女…………では無く、どこにでも居そうな可愛らしい感じの少女だった。

 ただ、身に纏っている物が豪華すぎて、彼女にあまりに似合っておらず、少しちぐはぐな印象を受ける。


 彼女の後ろには、一人のお付きの者と思われる男が控えている。


 細身の体に和洋装な装いが良く似合っている。

 しかし、その男から発せられる気配は抜き身の剣を思わせ、ただ者では無い事を如実に表していた。


 長髪の黒髪を軽く編んで左肩に垂らし、目は黒く、細いスクエアタイプの眼鏡をかけている。目元には絶えず微笑みを浮かべてはいるが、瞳は笑ってはいない。

 体は長身で、細身に見えるが程よく引き締まっており、俗にいう細マッチョ的な体型である。


 何やらリョウと、少なからず被るような容姿をしており、リョウとその男は目が合った瞬間、お互い心の中で反発心が芽生えた。


 そのお付きの男が『姫巫女』より一歩前に出て、

「ようこそ、お越し下しました。私は『姫巫女』様の側近兼教育係の斗蘭之トランノと申します。どうぞ、お見知りおき下さいませ」


 胸に手を当て腰を曲げ、少々へりくだりすぎる挨拶がリョウの癇に障る。


 リョウは、ことさらぶっきらぼうに挨拶を返す。

「俺達は、イエロキーの冒険者ギルドに所属している『ブラット』のリョウとセイだ」


 今度は、リョウの上から目線的な物言いが、斗蘭之の癪にさわったらしく、彼の眉間にしわが寄る。


 二人の間に、見えない火花が、バチバチと弾けていそうだ。


 そんな緊張感漂う空気を、見事にぶった切る声が…………。


「あの~、初めまして~。私は、一瀬結菜いちのせゆいなと言いまーーーす!」

 ギャルピースをしながら、空気を読まない(読めない?)、語尾に「てへっ!」と聞こえそうな軽いノリで、初対面の挨拶をする結菜。


 途端に斗蘭之の眉間のしわが深くなる。

 が、瞬時に笑顔に戻り、

「『姫巫女』様。もう少しお言葉に気を付けて下さいね。先日、そうお教えしましたよね」

 と結菜に注意する、その笑顔が怖い。


 だが、結菜にとっていつのも事なのか、斗蘭之の言葉など、どこ吹く風のようである。


 そんなカオス状態の中、黒紋付に白袴を身に着けた品の良い初老の紳士が、

「皆様、ここで立ち話もいかがなものと思います。あちらにお部屋をご用意させて頂きましたので、どうぞお移り下さい」

 と、割って入って来た。


「失礼だが、あんたは誰だ?」

 突然割り込んで来た人物に、警戒をするリョウ。


「あっ、これは失礼いたしました。私は、この迎賓館の支配人を皇王陛下から承っております、伊井野吏イイノリと申します。この迎賓館で何かお困りな事がございましたら、何なりとお申し付け下さいませ」


 ともかく、伊井野吏の登場でこの場のカオス状態は収まり、ここに居る一行は別の部屋に移って行った。



 案内された部屋は畳の和室で、畳に重厚な絨毯が敷かれており、その上に華美では無いが、質も品も良い大人数に対応できる応接セットが置かれている。


 リョウとセイ、結菜と斗蘭之がそれぞれ二人掛けに座り、護衛騎士の部羅瑠登ブラルトは結菜の後ろに立って控えている。

 役人の武宇良木ムウラキは一人掛けに座り、支配人の伊井野吏は部屋を案内した後は退室して行った。

 伊井野吏の退室の後すぐに女中と思われる和洋装の女性が入って来て、それぞれのテーブルに緑茶と和菓子を置いて退室して行った。


 リョウとセイは『百貨店』が有るので、この世界で緑茶や和菓子を特別懐かしく思う事は無いが、ここで、これが出て来た事に驚いた。やはり、転生者か転移者の影がチラ付く。


 話を切り出したのは、役人の武宇良木だった。


「さて、こうしてお集まり頂いたのは他でもありません。そこにられる『姫巫女』様と先代の『姫巫女』様お二人ともが、『ブラット』のお二人に会うようにと、シイライシの神からお言葉を賜った事が事の始まりでした」

「神から言葉を賜る?」

「はい。よその国からいらした方にとっては、信じられない事かもしれませんが、この露葡瑠吾ロブルアと言う国は神からのお言葉によって、作られていると言っても過言では無い程、神からのお言葉は絶対なのです」


(『姫巫女』とは、シャーマンのようなものなのか?)

 リョウにとって伊井野吏の言っている事は、どうもいまいちピンとこない。

 何かしらのスキルによって未来の事が分かるのかもしれない、と考えた方がまだ納得出来る。


「なぜ、俺達なのですか? そして、なぜ、俺達がここに来ると分かったのですか?」


「ん~、それはねぇ~……」

 リョウの問い掛けに、視線を上にあげ人差し指を顎に当た結菜が話始めた時、斗蘭之が慌てて結菜の口を塞ぐように話を遮った。

「『姫巫女』様‼ じかに話しをしてはいけませんと、事前にご説明申し上げましたよね⁉ もう少しご自分のお立場をご理解ください!」


 過剰ともいえる斗蘭之の、その言動にリョウとセイは驚きを隠しきれない。

(何だ、こいつの反応は⁉)

(え~! なに、なんか気分ワルッ! まるで、僕達があの子に悪さする人間みたいじゃない⁉)

(まったくだ‼)

 と、斗蘭之の自分達に対する態度が失礼過ぎないかと、二人で念話を使って話をする。


 リョウは、ことさら大袈裟にため息をつき、

「はあ~…………。俺達が信用できないって言うんだったら、初めからこんな所に呼び出すなよ‼ それに俺達も、俺達を信用できないような人間と話す事など何も無い! 悪いが、帰らせてもらう‼」

 と言って、二人してソファから立ち上がった。


 それを聞いた武宇良木は慌てて、

「も、申し訳ございません。他意は無いのです。本当に申し訳ございません‼」

 平謝り謝った。


 続いて、斗蘭之も謝罪の言葉を口にする。

「すみませんでした。気分を害するような事を言ってしまって、本当に申し訳ございません。……ですが、もしお許し頂けるのであるならば、少し言い訳をさせて頂きたい…………」


 斗蘭之が言うには、先代の『姫巫女』が年を取って、シイライシの神からのお言葉を聞く事が出来なくなった。それに合わせたように、今代の『姫巫女』がこの露葡瑠吾に新たにお見えになったのだと言う。

 だが、今代の『姫巫女』は歴代の『姫巫女』とかなり様子が違っていて、『姫巫女』の世話を代々仰せつかっている斗蘭之の一族は、ことごとく皆彼女の対応に窮してしているらしい。

 歴代の『姫巫女』は概ね大人しい性格の少女で、こちらの言う事もすんなり受け入れる事が出来ていた。

 だが、今世の『姫巫女』は元気いっぱいで、こちらの言う事など聞かず自由気ままに行動するので、つい批判的になり、リョウ達にとって不愉快に感じるような事を言ってしまった、と言う事らしい。


 確かに、それ程長く彼女に関わった訳では無いが、彼女の言動は「ギャル」と言って差し支えないだろう。

 特段、「ギャル」が悪いと言っている訳では無い。

 ギャルも色々いるが、むしろ、彼女達には彼女達なりのポリシーがあり、それに伴って行動しているだけで、多少騒がしくはあるが、他の人に悪さをすると言う訳では無いのだ。


 だが、前世を知るリョウとセイならいざ知らず、このラドランダーでは彼女を理解するのは難しいだろう。


 リョウは、

「お話は分かりました。俺達もそちらの事情を良く分からずに、早急な行動して申し訳無かった」

「いえ、分かって頂ければ構いませんので。では、話の続きをしてもよろしいでしょうか?」

「はい、よろしくお願いします」

 と言って、武宇良木に話の続きを促した。


 だが、話を始めたのは斗蘭之だった。


『姫巫女』である結菜は、このラドランダーに来て、まだ幾日も経っていないのだそうだ。

 それ故、『姫巫女』としての教育が完全に出来ていない上に、自分達には理解不能な言動をする、正直困った方なのだと。

 だがある日、先代の『姫巫女』と結菜が、同時にシイライシの神から同じ内容のお言葉を受けたと言うのだ。

 先代の『姫巫女』は、今はもう神からの言葉を聞く事が出来ずにいたが、最後と思われる聞いたお言葉が、《イエロキーから来るS級冒険者のリョウとセイに会え》と言う事だったらしい。


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