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第11話  【宿場町? 旅籠?】

 ロブルア神皇国への入国審査を終え国境門を通過して、目に入った情景に二人は言葉を失くした。


「…………」

「…………」


「…………日本だな」

「…………うん。でも、江戸時代的な?」

「そうだな。まさに時代劇の宿場町のようだ」


 確かに風景は時代劇の宿場町のようではあるが、そこを行き来している人々が、ラドランダーらしく多種多様な人種なので、リョウとセイからしてみれば違和感マシマシだった。


「…………なんか、落ち着かない」

「そうだな。出来の悪い異世界物の実写版を見せられているようだぜ」

「あっ‼ 兄さん! あそこに侍が居る!」

「はっ?」


 セイの指さす先に、かみしもを付けた武士の様な装いをしている獣人が居た。


「…………ハァ~。何か疲れるわ~」

「まるっきり違っているならそう気にはならないけど、微妙に日本の文化と合っているから、始末に悪いよね」

「だよな」



 ここから皇都までの移動は乗合馬車にして、貸し馬は貸し馬ギルドに返却した。


 このロブルア神皇国の皇都は、ここ国境門都市の月美勢津ゲツビセツから南東方向に行った海沿いに有る。

 かなり大きな都市だと言う事はリョウも聞いているのだが、そこまで行く過程が長い。月美勢津から真南に下って行き、国の中央辺りから90度東に折れて海に向かう。


 そこに、皇都『慶皇鄭ケイコウテイ』がある。



 露葡瑠吾ロブルア神皇国は、ラドランダー大陸『四色大国』の中でもひときわ異彩を放っている国である。


 他の3か国は、どちらかと言えば中世ヨーロッパ風の文化であるのに対し、露葡瑠吾ロブルア神皇国はどこからどう見ても和風なのである。

 しかも、江戸時代のような文化にラドランダーの文化が混ざり合っていて、リョウとセイからしてみれば、何か落ち着く事が出来ない違和感だらけだった。


 賑わっている大通りを、大勢の人が行き来している。

 その中で人族の特徴としては、チラホラと髪と目に色彩のある人々が見られらるが、ほとんどの人は黒髪黒目のモンゴロイド的な容姿をしている。

 その他に、エルフ、獣人、ドワーフ、竜人、等々様々な亜人種が大勢行き交っていた。


 その行き交う人々の中で、この国の人間と思われる人達は、独特の衣装を身に着けている。

 和服を洋装にカスタマイズしたような、リョウ達にとって懐かしめば良いのか、はたまた斬新と考えれば良いのか、不思議な装いだった。


「…………な、何か変」

「そんな事を言うな。他国の文化にケチをつけてるも同然だぞ」

「そうだけど…………。じゃあ、兄さんは平気なの?」

「えっ⁉…………」


 セイをたしなめてはみたが、リョウ自身も心の中ではセイと同じく、違和感のある思いをしていた。


「で、今日はこれからどうするの?」

「時間も時間だからなぁ~。もう今日は、皇都行の馬車は終わっちまったしな」

「じゃあ、今晩はここに宿をとるんだね」

「そうなるな」


 二人は、今日泊るふりをする宿を探しに大通りを歩いてゆく。

 もちろん、泊るふりだけである。

 眠るのは転移で、セイはイエロキー、リョウはロザリードに戻って休むのだ。


 宿を探して大通りを歩いていて、宿らしきものはそこそこあるのだが、どれもこれも宿場町の旅籠のような作りなのである。

 それが悪いと言うのでは無いが、リョウは何か、日本のそう言う街並みを保存している地域のような感じがして、泊ると言うよりか、見学をしなければいけないような、変な気分にさせられているのだ。

 しかし、一応宿を取っておかないと、後々何かあった時に困る事にので、早急に宿を決めたいと考える二人だった。


「ねえ、兄さん! ほら、あそこなんか良いんじゃない?」

 セイが指さす方にあった宿は、時代劇でおなじみのthe旅籠という佇まいだった。


「…………う、うん。い、良いんじゃないか…………」

「なんか乗り気じゃない?」

「いや……何て言うか…………」

「何を気にしているか知らないけどさ、どうせ泊るって言ったって形だけでしょ? だったら、何でも良いじゃん⁉」

「そ、そうだな。形だけだよな」


 リョウが気にしていたのは、たいした事ではない。寝る時はベッドで寝たいのだ。こういう作りだと、当然寝る時は布団を敷いて寝る事になるだろうとリョウは思ったのだが、セイに言われてみて夜は自宅に戻るのだと思いだした。


 開け放してある入り口の暖簾をくぐり、リョウは宿の人間に声をかける。

「今日、2人泊れるか?」

「大丈夫ですよ! 大部屋と個室とありますが、どちらにします?」

 着物モドキな服を着た町娘風の少女が、明るく元気な声で答える。

「個室で頼む」

「食事はどうします?」

「飯はいい。素泊まりで頼む」

「分かりました。料金は前払いで一人銀貨4枚で二人で銀貨8枚になります」

「素泊まりで銀貨8枚? 高いな」

「個室ですから」

「…………そうか」


 確かに他の国では、この規模の宿で素泊まりなら一人銀貨2枚がせいぜいなのだが、倍するという事はかなり高い。宿自体が高級と言う訳でもなさそうなので、あまり納得は出来ない。

 もしかすると、ぼったくられているのではないかとリョウは考えていた。


「お客さん、露葡瑠吾ロブルアの人じゃないんですか?」

「いや、あちこち旅をしている冒険者だが、それが何か?」

「…………そうなんですか。あっ! いえ、すみません! なんか、どっからどう見てもこの国の人に見えたんで」


 そう、何が違和感があると言えば、リョウとセイの外見はこの露葡瑠吾人とほぼ同じなので、二人にとってこの国に馴染み過ぎているというのが、唯一のそして最大の違和感なのだ。


「ここ露葡瑠吾の人じゃないと、宿代が高く感じると思うんですよね? でも、うちは露葡瑠吾では一般的な値段なんですよ」


(だとすると、露葡瑠吾神皇国では、物価が他の3国に比べて高いのか…………)

 そう思ったリョウだったが、宿の娘の次の一言で思い違いだと分かった。


「いま、この月美勢津に皇都から『姫巫女』様がいらっしゃっていて、どの宿も一杯になっているんです。だから、料金が高くなってしまったんです。正直言って、お客さん運が良いですよ。残り一つだった個室に泊まれるんですから」


「『姫巫女』?」

 セイが思わず聞き返す。


「そうです、『姫巫女』様です」

「えっとごめんね、僕達この国の人間じゃ無いから、その『姫巫女』様がどう言った方なのか分からないんだ」

「え~と、『姫巫女』様と言うのはですね……」


「おい実都ミツ! 入り口で話し込んでると他のお客さんの邪魔になる。早くそのお客さんをお部屋に案内して差し上げろ」

「あっ! 旦那さん。すみません! すぐ、お客さんをお部屋に案内します!」


 この宿の主人と思われる男の一言で、娘とセイの話は中断してしまった。


「すみませんね。この子は働き者の良い娘なんですが、とにかくおしゃべりが好きで。本当に困ったもんですよ」

 人のよさそうな主人が、困ったと言いながらもそう従業員の娘を良く評価している。

 なかなか、良い宿のようだ。

「さっきの『姫巫女』様の話は、部屋に付いてから実都に聞いて下さい」

「良いんですか? 仕事中では?」

「なに、お客さんに説明するのも、宿の仕事ですよ!」


 にこやかに笑う主人のその受け答えに、リョウのこの宿に対する評価は高くなった。


「じゃあ、お客さん! ここで履物を脱いでついて来て下さい」

「えっと、脱いだ靴は?」

「大丈夫ですよ。履物はうちでキッチリ保管しておきますんで。お出かけの際は、こちらに有る貸し靴をお使いください」

 そう主人に言われた。


 システム的には完全に日本の旅館であるが、リョウとセイにとっては、何か靴を人質に取られてような気分になってしまった。


 これでは、夜になって自宅に戻るのは、かなり無理そうだ…………。


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