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第9話  【グリーンメタルアント討伐完了】

 一方、巣穴の方に居るセイと言えば、ここぞとばかりに魔道具を使いまくっていた。


「ん~。今の所、まともに使える物が2割、そこそこ使える物や改良が必要な物が3割、全然ダメなやつが5割。…………もう! これじゃあ駄目じゃん‼」


 かなりの数の魔道具を試しているが、ほとんどの物が使い物にならない。

 自分は、まあ優秀な錬金術士だと思っていたのに、これでは特級錬金術など恥ずかしくて名乗れない。


「もう少し、錬金術の魔法陣を改良しないと、いつまでたっても錬金術じゃ役立たずで、兄さんの魔法におんぶにだっこになっちゃうよ! 僕も力だけじゃ無くて、魔道具でも兄さんの役に立ちたい!…………でも、また、離れを爆発させちゃう事になっちゃうな………。そしたら、また、兄さんに怒られるかな~?」


 セイはセイなりに、リョウの負担を減らしたいといつも思っている。

 何か事が起きると、リョウの魔法で解決する事が多いからだ。

 自分は確かに剛力のジョブで力が有り、重量のあるバスターソードも難なく扱う事が出来る。しかし、ただそれだけだ。

 その上、いつもリョウに、自分のバスターソードに魔法を付与してもらっている。

 そんな自分を、歯痒く思っているセイだった。


 リョウの方と言えば、魔力量がこの大陸一と言って良い程ある。

 だが、その事だけを頼りにしていると、リョウの負担が大きいのも事実だ。

 これまでも、広域攻撃魔法を使った時に魔力切れで、意識が飛んだり体を動かす事が出来なくなってしまう等と言う事が度々あった。


 だからセイは、攻撃に使える魔術具を錬金術で作り、リョウの負担を減らしたいと考えているのだ。



 所で話は変わるが、セイは普段リョウに対して子供のような言動をよくしているが、セイはこれを意図してやっているのだ。

 考えてみればセイのこの態度は、二十歳を過ぎた青年の言動とは思えない。リョウにただ甘えているだけなのだ。

 リョウも、そこの所は分かっているようで、セイに対して特に注意する事などもしない。

 まあ、リョウが絡まないのであれば、セイも普通の年相応の青年である。


 リョウもセイもこの世界では、幼い時から酷く辛い目に遭って来ていた。それゆえなのかは分からないが、今のお互いに頼り頼られる状態が心地良く、現状を変える気は無い。




 その頃、城壁ではグリーンメタルアントの掃討が始っていた。


 リョウが最前線に行き広域攻撃魔法で、アリ達の数を減らして行く。杖に魔力を最大限に込め、黄色く光る巨大な魔法陣を構築し、


「【激雷蛇走破】ーーーー‼」


 魔法を放つ。

 すると、地面に描かれた巨大な魔法陣の上を、稲妻が蛇のようにうねりながら、広範囲に渡って縦横無尽に駆け巡って行った。


 途端に、面白いようにアリ達がひっくり返り絶命していく。

 リョウの魔法の一撃で、倒しきれなかったグリーンメタルアントを、騎士や兵士、冒険者達が協力して打ち取って行った。


 暫くすると、アリの群れの向こう側で異変が起きているのが見えた。

「おい! 何だあれは! グリーンメタルアントが蹴散らされているぞ‼」

「何だって⁉ 新手の魔物が現れたのか⁉」

「どうするのよっ! こっちはこれでいっぱいいっぱいなのにー‼」


 グリーンメタルアントの後方で、派手にアリ達が蹴散らかされている。


 実は、これはセイがアリ達を始末しながら進んで来て、城壁の近くに辿り着いて来たのだ。


 この事に気付いたリョウは、自分の声さえも聞き取れないこの混戦状態で、セイの事を説明するにしても、普通に声を張り上げても聞えないだろうと考え、風魔法に自分の声を乗せ拡散させる。


【聞いてくれ! 俺は『ブラット』のリョウだ! 向こうで、派手に暴れているのは俺の弟のセイだ! 新たな魔物ではない‼ 安心して、こっちのグリーンメタルアントを片付けてくれ‼】


 その言葉を聞いた者達は、ようやくグリーンメタルアントの討伐に、終わりが見えて来たと確信した。


「やったーーー‼」

「もうすぐ終わるぞ~!」

「あと少しよ。みんな頑張って!」


 互いに励まし合い最後の力を振り絞り、グリーンメタルアントを始末して行った。


 それを見てリョウは、セイに念話で今の状況伝える。


(セイ!)

(何、兄さん!)

(もう、こっちからお前がアリ共を殺っているのが見える! バイクをアイテムボックスに片付けて、自分の足で来てくれ!)

(分かった‼)

(もう少しで、グリーンメタルアントを殲滅できる! 気を抜かずに頑張れよ!)

(うん! 兄さんもね)

(おう‼)



 それから程なくして、グリーンメタルアントの討伐完了が確認された。


「はあ~。やっと終わったぜ」

「僕達、ロブルア神皇国に行く為にここに来たのに、何でこうなっちゃったのかな?」

「全くだ‼ ホント勘弁してほしいぜ…………なんか、行く先々でトラブルに見舞われるよな。俺達は」

「…………きっと、兄さんの、日頃の行いが悪いせいだよ」

「はあ⁉ 何でだよ‼」


 先程迄の殺伐とした気配が無くなり、いつもの二人の掛け合いが出来る程、落ち着いた空気が城壁周辺に広がっていた。


 城壁周辺の後始末は、低級ランクの冒険者や一般騎士と兵士達にまかせ、『ブラット』の二人は冒険者の代表格のバッジと共に、冒険者ギルドに報告する為に向かっていった。

 一方、騎士のイアーデルは騎士団に報告する為に、すでに出発している。




 冒険者ギルドではギルマスのベッケルが、貧乏ゆすりをしながら落ち着きなく、城壁からの報告を待っていた。


「遅っせぇな‼」


 そこに、ギルドの職員が飛び込んで来た。

「ギルマス! グリーンメタルアントの討伐が完了したそうです!」

「そうか⁉ やってくれたか! で、どうやって片づけたんだ⁉」

「それですが、今『ブラット』の二人とバッジが、報告の為にこちらに向かっているそうです!」

「分かった! 3人が来たらここに通してくれ!」

「了解しました」


 職員は、来た時同様に部屋を飛び出していった。


「そうか、あのグリーンメタルアントの大群を片付けてくれたか。さすがS級だな」

 胃の痛くなるような時間が過ぎ、『ブラット』の活躍により、ようやくホッと一息を付けるようになったベッケルだった。



 扉をノックする音が聞こえる。

「入れ!」

「失礼します!」

 リョウを先頭にセイとバッジが部屋に入って来た。


 ベッケルが、部屋の片隅に置いてある応接セットのソファーを指さし、 

「まあ、立ち話も無いだろ。そこに座ってくれ」

「それじゃあ、失礼して座れせてもらいます」


 3人を代表してリョウが受け答えをするらしい。

 S級冒険者であり、パティーリーダーでもあり、その上、辺境伯でもあるリョウが話をするのが妥当な所だ。


「…………と言う訳だったんですよ」

 ピュッテル男爵の所業を包み貸すさず、奴がやった事に対する憤りも含めて、少しばかり大袈裟に報告をするリョウ。

 あの男爵の事が無ければ、もっと早くにグリーンメタルアントの討伐は出来ていたはずだ。このくらい大袈裟に言ってもバチは当たらないだろう。…………と、思ったリョウだった。

 そのリョウの思いが伝わったのか、セイもバッジもコクコクと頷いている。


「ハァ~…………。成程な。で、そのピュッなんちゃら男爵の事はお前が何とかするのか?」

「一応、ロザリード辺境伯として、国王陛下に報告書を送るつもりです…………が」

「が?」

「王弟殿下のトリスタン公爵がどう出るかで、話は変わって来ると思うんですよね」

「ああ、あの公爵か…………まあ、あの御仁に関してはあまり良い話は聞かんな」

「かなり、出来る人なのは間違いないですからね…………とにかく、ピュッテル男爵の事は国王陛下にお任せするしかないでしょう」

「そうだな、それが良いだろうな」


「それに今回の件で、恐らくトリスタン公爵はピュッテル男爵を切るでしょうしね」

「まあ、そいつの自業自得だろ」

「そうですね」


その場にいた全員が、ピュッテル男爵の終わりを確信していた。


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