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第6話  【ピュッテル男爵】

101話目になりました。

私の、話を目にして下さって本当にありがとうございます。

今後も、書き続けて行きますので、楽しんで頂けたのであれば、嬉しい限りです。



話の流れから、ピュッテル子爵を男爵に変えた方が良いように思い、変更しました。

これからも、話の都合で設定を変えてしまうかもしれませんが、その都度お知らせしますので、変わらずに読んで頂けると幸いです。

 一方、城壁に残ったリョウは、セイと話した作戦を告げる為に、ここを指揮していると思われる騎士と、同じく冒険者をまとめているリーダーらしき人物に声をかけた。


「俺はS級冒険者『ブラット』のリョウと言う者だが、責任者ってどっちだ?」

 と聞くと、

「はあ? 『ブラット』?って、ドラゴンスレイヤーのか⁉」

「まあ、そうだ」

 やはり冒険者はそこに喰いつくみたいだ。

「すげえなぁ! 一度会って話を聞いてみたかったんだ! 俺はバッジって言うんだよろしくな‼」

「ああ、よろしく!」

 と手を出し握手を求めて来たので、リョウも気軽に答え握手をした。


 一方、騎士の方は、

「え~と、ロザリード辺境伯ですか?」

「えっ⁉ ええ、まあ、そうですが、今は冒険者なのでリョウです」

「…………そうなんですね」

 騎士は貴族なので、リョウと言うよりも辺境伯と言った方が馴染みがあるらしい。

「俺…………いや、私を知っているのですか?」

「はい、私はジーニアス伯爵の所のスヴェンと幼馴染のイアーデルと言います。彼から色々話を聞いていたので……お会いできて光栄です!」

 彼は目をキラキラと輝やかせ、尊敬のまなざしをリョウに向ける。

「……俺は、そんな大したもんじゃねぇよ」

 何か無性に恥ずかしくなって、照れ隠しために殊更ぶっきら棒に答えるリョウだった。


 あのスヴェンがこの騎士にどんなことを言ったかは分からないが、リョウは褒められるといつも何やら居た堪れない思いになるのだ。


 そんな居た堪れない気持ちを相手に知られたくないので、急いで話題を変える。

「ところで、この蟻の大軍の始末について提案が有るんだが、どっちが指揮を摂ってるんだ?」

 とリョウが聞いた所、騎士と冒険者は互いに見合って、

「とりあえず私が指揮の全権を担っています」

 と騎士が答えた。


 まあ、貴族が居るのだから平民の冒険者が指揮を執るとは考えられないが、何事にも例外はある。

 例えば、冒険者が貴族だった場合とか、冒険者のランクがSS級とかSSS級など伝説級だった場合は、指揮を執る事もあるかもしれない。


 今回に限って言えば、貴族の騎士が指揮を執るのが妥当だが、今ここに冒険者ではあるが、S級でしかも高位貴族の人物が現れた。

 その上、何やらこの事態を何とか出来る提案が有るようなので、指揮を執っていた騎士は指揮権をリョウに丸投げする事にしたらしい。


「ですが…………トリスタン公爵の件がありますので、どうしたら良いのか分からず、こうして冒険者の方と話をしていたのですが、リョウ殿に良いお考えがあるならばここをお任せします!」


 良い笑顔でリョウに指揮を任せようとする騎士に対し、リョウも任されたくは無いので、思わず叫んでしまった。

「えっ⁉ いや、チョッと待てよ、そんなもん俺に押し付けるな‼」

「いやいやいや! 我々では何も思いつかないのでよろしくお願い致します‼」


 二人そろって90度に頭を下げられてしまった。


「ハァ~、しょうがねぇ。分かった、やるよ、やれば良いんだろ!」

「「お願いします‼」」

 ため息と共に、承諾をしたリョウだった。



「で、提案と言うのは他でも無いんだが。全てのグリーンメタルアントを無傷で倒すのは無理だ。常識的に考えても無理すぎるし、数がとんでもない事になる。そんな、非常識な数の甲殻があっても向こうさんだって困るんじゃないのか?」

「はい、それは我々も思います。ですが…………」

「何かあんのか?」


 騎士は、城壁から下を覗いている場違いな貴族らしき者を指さし、

「あの方はトリスタン公爵から遣わされたピュッテル男爵と言う方で、このグリーンメタルアントをすべて無傷で倒せと言っているのです。しかも、一匹でも傷をつけたならば、討伐に関わった全ての者を厳罰に処すぞ、と脅しているのですよ」

「はあ? なんだそりゃぁ⁉ 絶対無理だろうが‼」

「ですが、我々ではあの方に逆らえませんので、受け入れるしか無いのです。私は一代限りの騎士爵位家で、しかも次男ですからね。それに、バッジ殿は平民ですし………」

「…………しょうがねぇなぁ~。じゃあ、俺が話を付けて来てやるよ!」


 と言った瞬間、リョウはシャギーに姿を変えた。

 あまりの突然の出来事に、二人はあんぐり口を開け言葉が出てこない。

 そんな二人に対しシャギーは、

「あっちが身分で無理難題を押し付けるなら、こっちだって身分を押し付けてやるさ。なんてったて、俺は辺境伯様だからな‼」


 茶目っ気たっぷりにニヤっと笑ったシャギーは、二人をそこに残し、くだんのピュッテル男爵もとに向かって行った。



 何がそんなにおかしいのか、ニヤニヤしながらグリーンメタルアントを見ているピュッテル男爵は、突然肩を掴まれた。


 自分は、男爵位ながらもトリスタン公爵の一派に名を連ねている。言ってみれば公爵と同じ権限がある。そう信じている。そんな自分の肩を無造作に掴む等と言う行為は許し難い。


 彼は肩に乗せられて手を乱暴に振り払い、こんな事をする奴は誰なのかと振り返った。

「無礼だぞ‼ 私はトリスタン公爵の意を受けてここに来ているのだ、分かっているのか⁉」


 振り返った視線の先に居たのは、顔に大きな傷のある、赤い髪で赤い目の背の高い冒険者だった。

 しかし、何やら見たことが有るような既視感に襲われ、訝し気に詰問する。

「…………誰だ、お前は⁉」


 ニヤッと笑ったシャギーは、殊更ことさら慇懃無礼いんぎんぶれいな態度で立位の礼をとり、

「お初にお目にかかる。俺は、ロザリード辺境伯のシャギーリース・ロザリードと言う者だ」

 と、自己紹介をした。


「……………………‼」

 その名はピュッテル男爵に対して絶大な効果があった。


 ピュッテル男爵もシャギーの綬爵の儀に列席していたのだ。その時にシャギーを顔を見ていたからすぐに思い至った。 

 あまりにも衝撃的な登場だったので、深く印象に残っていたのだ。

 それ故シャギーの名前を聞いた途端、ピュッテル男爵は面白いくらいに、見る見る顔が青ざめて行き、その上カタカタと細かく震えだしていった。きっと背中には、冷や汗がダラダラ流れている事だろう。


 彼は、現国王のアサールに気に入られ、相談役のような事をしていると聞いた事がある。国王陛下のお気に入りの一人だ。


 自分は男爵ではあるが、トリスタン公爵一派である。

 しかし、そのような事言っても、今この場ではシャギーの辺境伯の方が位が高い。

 たとえ相手が冒険者の姿をしていたとしてもである。


「…………ロ、ロザリード卿は何故こちらにいらしたのでしょうか?」

「何故って、そりゃぁ、俺は冒険者だからな、ギルドからこのグリーンメタルアントの討伐を頼まれただけだが。それが何か?」

 フン、と鼻で笑いそうな態度のシャギーをを見て、ピュッテル男爵は自身の終わりを悟った。


(ああ、もう駄目だ! この男に知られたからには、国王に告げられてしまう。そうなればトリスタン公爵にも見放されてしまう。…………ああ、私はもうお終いだ…………)


 ピュッテル男爵はがっくり肩を落として頭を抱え、その場に座り込んでしまった。


 そんな彼をシャギーは見下ろしながら、

(…………何んなんだ、こいつは? 俺はまだ何も話してないぞ⁉)

 と思い、ピュッテル男爵の様子を眺めていた。



 じつの所今回の件は、ピュッテル男爵の独断で行われていた事に過ぎない。

 トリスタン公爵の名を使い、グリーンメタルアントの甲殻を大量に手に入れた功績で、公爵に媚びを売る計画だったのだ。

 公爵の名を使っていても、計画が上手く行き手柄を立てれば、その名を使った事がチャラになると考えていた。しかし普通に考えても、立場が上の人間の名を無断で使うなどと言う事はあり得ないだろう。

 そこに考えが至らないのが、ピュッテル男爵のお粗末な所なのだろう。


 まあ、今回の件が彼の思惑通りに成功していたのならば、公爵の対し点数を稼げたのかもしれないが、シャギーに、いや、ロザリード辺境伯に事が露見したのならば、もう後に残っているのは自身の身の破滅しか残っていない。


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