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第5話  【蟻、蟻、蟻】

 グリーンメタルアントは、魔物のランクで言えばD級の魔物である。

 メタルアントのたぐいは色で魔物としての脅威度が決められており、一番下のランクがEのイエローメタルアント、次がDのグリーン、Cのレッド、Bのブルー、Aのブラックとなっていて、上位種にSのホワイトメタルアントが居る。

 ホワイトの中でも女王蟻はダブルSの魔物とされており、白銀の色を纏っていると言われている。

 しかし、『白の魔森』にしか存在し無いと言われていて、誰も目撃した者がいないので真実は未だ分かってはいない。



 城壁の上からただ黙って蟻の群れを見ている者達を、不思議に思ったリョウはセイの聞いてみた。

「なぜ誰も攻撃しないんだ?」

「ああ、それね。何でも、王都のトリスタン公爵って人の命令で、グリーンメタルアントの甲殻を大量に欲しいから、傷を付けずに討伐せよって、お達しがあったらしいよ」


 アント類の甲殻は防具や盾に適しており、アントのランクが上がるほど高値で取引されているのだが、グリーンアント位の甲殻では初心者向けの防具や武具にしかならない。

 それなのにそのグリーンアントの甲殻を大量に欲しているとは、トリスタン公爵はいったい何を考えているのか。


 時と場合を考えず、この非常時にあり得ない事を言って来るトリスタン公爵に、リョウは一瞬言葉に詰まるがすぐに怒りに変わる。

「…………はあ⁉ ったく! あの御仁は何考えてんだ! こんだけの数をどうやって傷付けずに始末しろってんだ⁉」

「兄さん、トリスタン公爵って人知ってんの?」

「ああ、あのアサール陛下の腹違いの弟ブラード・デ・トリスタン公爵だ。まあ、いわゆる王弟って奴だな。…………で、物凄~く嫌な奴だったよ‼」

「そうなんだぁ~…………」


 以前、シャギーリース・ロザリード辺境伯の綬爵じゅしゃくの儀が執り行われた時に、シャギーを査問委員会のようなものにかけ、砂糖事業を独占しようとした人物である。


「へぇ~、そんな事があったんだ」

「あったんだって…………そんな事言ってるが、あの時ちゃんとお前に話しただろ?」

「えっ⁉ ゴメンね。そう言う事興味ないんで、ちゃんと聞いてなかったよ」

「…………」

 またしても、セイのテヘペロをくらったリョウでした。


「んっん! とにかく、見れくれは出来る王族ですって風に見えるんだが、中身は明らかにテンプレの悪役そのものだったな」

「ふ~ん。じゃあ、また何か良からぬ事を始めようとしてるのかな」

「そうだろうな。だが、腐っても王族だ。俺みたいな成りたての辺境伯では、意見を具申する事は無理だ」


「それじゃあ、この蟻さんたちをどうしたら良いのかな~?」

 リョウは呆れながら、見るからにやる気のない態度になったセイを見て、

「…………お前、やる気ないだろ?」

「だって、そんな話聞いちゃったら、やる気も無くなるよ」

「確かにな……」

 納得してしまった。


 だがしかし、グリーンアントをこのまま放置する訳にはいかない。今まさに、城壁を強靭な顎でかみ砕き穴を開けようとしているからだ。

 城壁に穴を開けられ、グリーンアントの群れが街になだれ込んで来たら、どれほどの被害が出るか分かった物では無い。


「兄さん、何か良い方法無いの?」

「う~ん、まあ、有るには有るんだが、あの御仁が何を考えているか分からないからな。かと言って、このままこの蟻を放置する訳にもいかないし」

「まあ、その気持ちは分かるけどさ、街の関係無い人達の事を考えて、このグリーンアントの群れをやっつけちゃおうよ!」

「そうだな~…………って、お前! やっつけちゃおうって、簡単そうに言うなよな⁉」

 すぐにでもこの蟻の大軍を片付けられるかのように言うセイに、呆れたリョウは少し切れ気味になってしまった。


「で、どうするの?」

「ハァ~、早い話、焼け焦げが付かない位で、しかも即死するような雷属性の広域魔法をぶち込むって事だな」

「なるほど。それだと、傷はつかないね」

「ただなぁ~、このグリーンアントの群れがどれだけいるのか分から無いからな」


 見渡す限り蟻で埋め尽くされているこの現状。いかに、魔力オバケのリョウだとしても限度がある。

 広域魔法を発動するにしても、どこまでかければ良いのか?

 大本の巣をどうにかしないと、次から次と蟻が押し寄せて来る可能性もある。


 腕を組み、しばし考えていたリョウがセイに向かって、

「セイ、お前この蟻の大軍を突っ切って行って、巣を探す事出来るか?」

「えっ! いくら何でもそれは無理だよ‼ 僕に死ねって言うの⁉」

「いや! そうじゃなくて………すまん、言葉が足りなかった」


 セイの耳元に口を寄せ、

(オフロードバイクをアイテムボックスから出して、それに乗って蟻を蹴散らせながら突っ切れっるかって事だ)

(……ああ、それなら何とかなるかな)


そんなセイに向かって、悪だくみをするように、ニヤリと笑いリョウは言う。

(これだけグリーンメタルアントが居るんだ、多少駆除しても構わないだろ?)

(それもそうだね!)

同じくセイも、悪い笑顔で同意する。


 ひしめき合っている蟻の中をオフロードバイクで駆け抜け、セイのバスターソードで道を切り開きながら進み、グリーンメタルアントを巣を見つけそれを叩き潰す。


 かくして、このグリーンメタルアント討伐方法が決まった。

 リョウがこの城壁に押し寄せている蟻を、雷の広域魔法で駆除し、巣の方はセイが片付ける事になった。


 ただ問題が無いわけでは無い。オフロードバイクをこの世界の人に見られたくは無いし、巣を見つけても、アリ塚なのかはたまた穴を掘った巣なのかで、駆除する方法が変わって来る。


 だが、これ程の数のグリーンメタルアントの巣がアリ塚だった場合は、超巨大な蟻塚になるだろう。それこそ、高層ビル並みの高さになっていてもおかしくはない。

 しかしここ最近で、そんな目撃情報は無い。だとすると、地中に穴を掘るタイプの巣だと考えるのが妥当だ。


 巣穴に居るグリーンメタルアントを始末するには、巣の中を真空にして窒息させるか、大量の水をぶち込んで溺れさせるか。

 どちらにしても、セイが使う魔法では大した威力は出ないので、錬金術で作った対魔物用の魔道具を使用する事になるだろう。



「取り合えずセイは、人目に付かない場所からオフロードバイクで出て、こいつ等の巣を見つけ出してくれ! まあ規模にもよるが、可能ならお前が巣を壊滅させてくれるとありがたい」

「分かった! じゃあ、行って来る!」

「気をつけてな! 絶対死ぬなよ‼」

「分かってるって! 兄さんこそ魔力切れで死なないでね!」



 ラドランダー大陸には『四色大国』以外にも大小様々な国々が存在している。その小さな国も含めて、必ず国土全体を覆うように城壁が作られているのだ。

 その一番の理由として、魔物の侵入を防ぐことに有る。


 大陸は中央に『白の魔森』という脅威の存在がある。そこからあふれ出した魔素によって、生み出される魔物達から国や町、村などを守る為にどうしても城壁が必要になるのだ。

 作られている城壁は、国々の規模や材質または作り方など様々だが、共通している事は、国土全体を隙間なく囲っている事だ。大国ともなると、城壁の総延長はかなりの長さになり、リョウ達の前世で例えるならば、『万里の長城』と言った所である。


 この様に城壁は完璧な作りに見えるが、実の所それなりに抜け道があるものだ。

 密輸、密売、後ろ暗い事をやっている奴等や、城壁外に住んでいる浮浪者などが、城壁が崩れている場所から密かに出入りをしてる。

 国としても城壁の損傷は重大事項であるので、巡回の兵士がそのような場所を見つけては補修をしているのだが、正直いたちごっこになっているのが現状だ。


 そんな城壁が崩れている所からセイは城壁外に出て、比較的人の目に付かない場所でオフロードバイクを、アイテムボックスから取り出した。

「とは言っても、闇雲に突っ込んで行っても、僕が消耗するだけだしなぁ~………ん~、そうだ! あれを試してみよう!」


 と言って、自分のマジックバックもどきからゴーグルのような物を取り出す。

 それは、セイが錬金術で作ったレーダーの様な機能を持つ魔術具である。探す物によって、仕様を変える事が出来、尚且つ範囲も変える事が出来る優れモノなのだ。

 が、今日が初使用なので、思った通りに使えるかは使って見なくては分からない。


 セイはゴーグルを装着し魔力を流した。すると蟻の群れの情報が視界の前方に映し出された。

 今実際に自分が見ている視野を邪魔する事無く、探したい物が分かるかなり優れ物の魔術具に出来上がっていた。

「これは良い物を作る事が出来た。うん、この魔術具の魔法陣のレシピが売れそうだ!」

 等と言いながら、セイはオフロードバイクのアクセルをふかして、グリーンメタルアントの群れに突っ込んでいった。


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