第10話 【二人そろって、イケメンです!】
改めて、
「さて、明日の事を話したい」
「明日、なるべく早く朝飯食って、出発する。そして昨日入って来た北門から、とりあえずこの国を出る」
「えっ?。戻るの?」
「とりあえずだ、とりあえず」
「赤毛と金髪が出て行き、黒髪二人が新たに入国したように見せるためだ」
「………何かするの?」
シャギーは、悪い顔をして、
「色々アリバイ工作。……イースとシャギーをこの世界から、抹殺するとか……」
不安そうな顔のイースが、
「…………僕を、殺すの?…………」
と言う。
シャギーは、「バンッ」とテーブルを叩き、
「違ーーーーーーう‼ アリバイ工作だって言ってんだろ⁉ ちゃんと話を聞けよな、……それを言ったら、俺自身も死ななきゃならんだろうに」
シャギーの剣幕に怯えつつ、
「……うん」
小さく返事をするイース。
「まっ、明日になれば全て分るよ」
さっきの荷物に目をやって、
「明日もその荷物を持ってもらう。俺も、顔色の悪いメークをするし、入国をした時と同じようにする。そして、門の兵士に俺たちの事を印象付ける。その時、ちょっと小芝居するからイース、少し我慢してくれ」
「え~と、何するか知らないけど、シャギーを信じて我慢するよ」
ニヤリと笑って、
「何、ちょっと、どつき回すだけだ」
と、しれっと言うシャギー。
「……………………。(本当に、信じて良いんだろうか?)」
困惑顔のイース。
翌日の早朝、2人は門の前に来ていた。顔色の悪いシャギーと、荷物を持ったイース。
シャギーは小声で、
「これから俺は、以前の乱暴者のシャギーになる。お前は、怯えたふりをしろ」
「……ふりをしなくても、シャギーに怒鳴られたら僕は、怖いもの」
「…ごめんな」
と言って、セイの頭に軽く手を乗せる。
門に入る手前から、シャギーは怒鳴っていた。
「何、グズグズしてんだよ‼ 早く歩けよ! このグズが!」
「兄ちゃん、そこまで言うほどこの子は遅くないだろが」
門の兵士がとりなすが、シャギーはイースの髪をつかみ、兵士を下から眺めまわすように、
「ああぁ? こいつはいつもグズだからイライラすんだよ! こちとら昨日から具合悪くてよ。益々イラつく!」
シャギーのけんまくに兵士はあからさまに話題を変え、
「ああ、そう言えば、兄ちゃん、アレッドカのダンジョンに行くって言ってなかったっけ?」
「そのつもりだったけどよ、こう具合が悪けりゃ行けねぇよ」
「ホント、どこか悪いんじゃないのかよ?」
「医者にかかって無いからわからん。国に帰ったら医者に行くさ。じゃあな!」
と言って、とりあえず門の兵士に、印象付ける事に成功し、門を後にする。
門が見えなくなるまでしばらく歩いた二人は、街道から少し外れて人気の無い所に来ていた。
「さっきは悪かったな」
シャギーは謝るが、イースは怯えるどころか、肩を震わせて笑いをこらえていた。
「くっ、くっ、くっ、………あ~、おかしかった。怖いどころか、おかしくて、おかしくて、笑いたいのを我慢していて逆に体が震えちゃったよ」
そのイースの反応に戸惑いながら、
「…………何が、そんなにおかしかったんだ?」
「だって、髪をつかんで振り回しながら、そこから痛みが無いように魔法で癒してくれたでしょ? ホント器用だよね」
シャギーの不器用な優しさは、いつしかイースの心に染みていた。
「なんだか、シャギーは本当に優しいんだなって思ったらさ、怖さよりうれしさがこみ上げて、変な芝居がおかしくて! シャギーが無理して柄が悪い人を演じているのが分かるから、それもまたおかしっくてさ」
「そうか…………」
イースに気持ちが通じて、シャギーは心が少し軽くなったような気がした。
街道を外れ奥に奥に進みながら、
「もう少し街道から離れるぞ」
「そんなに奥に行って、魔物とか襲ってこないか大丈夫なの?」
「心配するな、ちゃんと魔物除けの結界魔法は張ってある」
(……いつの間に?)
程々に街道から外れた場所に来てシャギーは、腰につけたポーチからウエストバッグを取り出し、何やら細工をして、アイテムボックスの取り出し口をバッグの方に変更した。
「ポーチだと今後支障が出る事になるかもしれないから、今のうちに変えておくのさ」
「どう言う事?」
「ポーチは、シャギーがいつも使っていたからな。見た事がある人間が居れば、俺だと分かってしまう恐れがあるから、万が一を考えて今のうちに変えておくんだよ」
シャギーは、アイテムボックスからまずブルーシートを出して広げ、次々と色々な物をシートの上に出していく。
黒を基調とした上着やズボン、下着にブーツ、砂除けほこり除けのマント、などなど2人分を取り出していった。
そして最後に、イースの身長位のサイズのバスターソードと、メタリックな質感の魔導士の杖を取り出す。
「下着から何から、全部これに着替えろ」
「うん」
「着替えたら、今度は荷物を整理するぞ」
シャギーも着替えながら次々と指示する。
着替えが終わって、イースが持っていた荷物から水を取り出し、シャギーは自分のアイテムボックスにしまう。残りの持ってきた旅の荷物は着替えた物と一緒に一か所にまとめておく。
「ほれ、指輪だ。はめて魔力を流せ」
イースに指輪を渡し、自分も指輪をはめる。
一陣の風が舞い、そこには黒髪で黒装束の2人連れがいた。
しかし、シャギーは顔色の悪いメークで、髪形も元のままのツンツンヘアーなので、日本語で【洗顔】【洗髪】【乾燥】とつぶやく。と、一瞬でメイクが落とされ、髪も洗い流され、乾燥もされ、さらさらヘアーの姿になった。
「……なんか、魔法って、何でも有りだね……」
イースがあきれて言った。
シャギーは魔導士の杖を持ち、バスターソードをイースに渡しながら、
「さて、このバスターソードはお前の武器になる。とりあえず背中に背負っておけ」
「こんなに大きな武器、僕に扱えないよ!」
シャギーはニコニコ笑いながら、
「大丈夫だ。俺がそれをちゃんと使えるように訓練してやるから!」
「……なんか、また、ボロボロにされそう」
「大丈夫だ。その時はちゃんと癒してやるから!」
「…………なんか……違うような?…………」
シャギーは自分が持っていたポーチを含め、着ていた服や、イースが持っていた荷物などまとめておいた所に行き、アイテムボックスから、大き目の肉の塊を出し、自分とイースの冒険者カードと一緒に荷物の上に置いた。
「それどうするの?」
「まあ、見てろって」
と言うが早いか、イースを抱きかかえ、一言【爆散】と言った。
途端にものすごい爆風が辺りを襲い、一面ひどいありさまである。もちろん、爆風を受け転がり倒れこんだ2人も、せっかく着替えたのにボロボロである。
「えっ、何? 何があったの?」
シャギーはイースから体を離し、砕け散った物の中から半分焼け焦げた冒険者カードを拾い上げ、
「このカードをギルドに届けて、この惨状を説明すれば、これで、シャギーとイースは『魔力過多症』の爆発で、この世から姿を消したことになるのさ」
ある意味納得は出来たが、自分達のこの惨状に、
「……分かった。けど、なんで僕たちボロボロにならにといけないの?」
「ああ、……この黒髪姿の冒険者カードはある訳ないだろ?」
「そうだね」
「だから、旅の途中で魔物とかに襲われて、荷物もカードも失くしましたって事にして、イエロキーに再度入国するのさ。一石二鳥だろ」
なにか、簡単そうに話すシャギーは、茶目っ気を出して、
「そして、冒険者ギルドで新たに、「リョウ」と「セイ」として再登録する。
「その際、お前は俺の弟とするから、これからはシャギーと呼ばず、兄貴と呼んでくれ!」
「え~と。……兄さん、でも良いかな?」
「まぁ、良いだろう! よろしくなセイ!」
「うん! 兄さん!」
二人の新たな旅立ちである。
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