第一章 『イエロキー聖教国』と『光の聖剣』編 第1話【脳筋シャギーと無気力イース】
初めての投稿です。拙いところもあると思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。
【プロローグ】
チュッドーーーン‼
突然の爆発音に、飛び起きる。
「何だ!どうした!何があった!」
しかしすぐに、原因に気が付いて、
「はぁ~、また錬金術に失敗したのか。どうでも良いが、朝早くから勘弁してくれよな」
立ち上がった男は、均整の取れた体。黒い瞳。右前髪に一房赤い毛がある黒髪。なかなかのイケメンであるのだが、それもキチンとしていればでの事。
今は寝起きのボサボサの頭の寝ぼけまなこである。
階段を降り、家の外に出て辺りを見渡し、長い髪を首の後ろ辺りで、銀に赤い魔石を施した髪飾りで纏めながら、
「ん~、今日もいい天気だなぁー」
と伸びをし、庭の隅にある離れに行く。
離れのドアを開けると、そこはいつもと変わらない…………焼け焦げの惨状があった。
中に居たのは、中肉中背で黒い瞳、左前髪に一房金髪がある少し癖毛でロン毛の黒髪を、銀に薄紫の魔石を施した髪飾りでポニーテールの様にまとめている、片えくぼが可愛い少年が居た。
しかし、こちらもキチンとしていればでのことである。
今は、錬金術の錬成に失敗したらしく、アチコチ焦げて煤だらけである。
その少年は困ったような、いたずらに失敗した様な顔をしていた。
男は腕を組みドアにもたれながら、苦笑いで話しかける。
「で、今日も失敗したか? それとも成功か?」
「何で、失敗が先に来るかなぁ⁉」
「いつもの事だろ? そのうち本当にこの離れが壊れて無くなっちまうぞ?」
と、笑いながら少年の髪をクシャクシャにかき混ぜる。
ここはラドランダー大陸の西の大国、イエロキー聖教国。聖都サマリーアートの郊外にある、丘の上の一軒家。
ここに住んでいるのは、聖魔導士のリョウと弟の錬金術士のセイの二人である。
二人は、兄弟冒険者パーティー『ブラット』として活躍し、そこそこ名前も売れていて、今はずいぶん穏やかな生活が出来ていた。
以前は、別の場所、別のパーティーで、別の名前で、穏やかとはかけ離れた生活をしていた。
それは、今から5年前の事だった……。
ここは、北の大国ブラクロック王国に属する、西のはずれに有る小国ハレーズ。そのまたはずれにあるダンジョン都市ズーミニ。
B級冒険者パーティー『光の聖剣』がダンジョン攻略のベース基地にしている家でのことである。
「イース! いつまで地面とにらめっこしてんだよ! さっさと立ちやがれ!」
深紅のツンツンヘアーで獰猛そうに犬歯をむき出しにして、やや吊り目のルビーの様な目を見開き笑いながら、シャギーは模擬剣を肩に担いでイースに近寄って行った。
ただでさえ目つきが悪いのに、その顔には左の目の下あたりから、鼻を通って右耳近くまでの大きな傷が、獰猛さに輪をかけている。
「おいおい、シャギーの奴またイースを痛めつけてるぜ。毎日毎日よく飽きないよなぁ?」
そう笑いながらハイエルフのアシューナに話しかけるのは、ホワイトタイガーの様な獣人族のダルトンである。
「何が面白くて、あんなに構うのかしら?ホントわからないわ」
銀色の目を細め、きれいなワンレンの銀髪を手ぐし整えながら、アシューナは気のない様子でそう言った。
そばでパステルブルーの髪でピンクの目をした、日本の魔女っ娘の様なマージュは心配そうに、
「あんな事続けていたら、本当にイース死んじゃうんじゃないの…?」
「ほっといてもかまわないだろ、イースのような奴の代わりはいくらでも居るさ」
そう言ったのは、この冒険者パーティー『光の聖剣』のリーダーであるアラバスだ。抹茶の様な濃い緑色の髪にサファイアの目、誰が見ても見惚れるようなイケメンである。
そこに、灰色の髪で、濁った血のような目の、辛気臭い男ディーが陰気な声を出す。
「……アラバス、また奴隷を買うとなれば、余計に金がかかるだろ……」
「それもそうか……おーい!シャギー、いい加減にしろよ。イースが死んだらお前に剛力の荷物持ちをさせるからな!」
「えっ⁉ これからお楽しみの時間なのによ!」
「もう、飯の時間だ、あきらめろ」
そこに居たのかと驚くほど影の薄い、茶髪茶目の平凡を絵にかいたような男ピットが、シャギーの肩に手をかけ声をかける。
が、シャギーはかけられた手を鬱陶しそうに払い、地面に這いつくばっているイースに近づき、髪を鷲づかみにして顔をあげさせ、
「チィッ! 仕方ねぇ、イース明日もやるからな!覚悟しとけ!」
イースは、短いボサボサの金髪を汗で額に張り付かせ、薄い紫色の目を力なくシャギーに向けていた。
(ああ、やっと終わった……。今日はいつもにも増してシャギーはきつかった…。こんな事続けていたら、僕は本当に死ぬんじゃないのかな?…それでもいいか…死んだら楽になれるかな?……)
この時、メンバーの誰にも気づかせず、当のイースにも気づかせず、シャギーは髪を鷲づかみした状態で、気遣うような眼差しをイースに向け、密かに少しだけ癒しの魔法を掛けていた。
その後シャギーは、一見手荒く髪を離すようなそぶりで手を放し、他のメンバーと共に食堂に向かって行った。
一人中庭に残されたイースは、あきらめにも似た気持ちでいたが、少しして体に違和感を覚える。
(……そう言えば、『光の聖剣』に来た時から、暴力や虐待はあったけど、シャギーは何だか痛みや苦しさが少ないような?……なんだろう?…はぁ…まぁ……どうでもいいや……)
イースは投げやりな気持ちで、感じた違和感を振り払い、食べる事が出来るかどうか分からないが、重い足を引きずって食堂に向かった。
食堂では、明後日のダンジョン攻略について話し会われていた。
(リ アラバス リーダー)(シャ シャギー)(ダ ダルトン)
(ピ ピット)(デ ディー)(マ マージュ)(ア アシューナ)
(全 全員)
リ 「今度の攻略が成功すれば、俺たちはA級冒険者パーティーに昇格する!
これは先日の冒険者ギルドでの話し合いで決まったことだ」
ア 「そうね、ギルドマスターがそう言っていたわね」
ダ 「だから、ぜってぇ失敗は許されねぇって事だろ?」
シャ 「そんなもん、力で押し切れば成功間違いなしだぜ!」
マ 「……脳筋……」
シャ 「あぁっ‼ なんか言ったか⁉」
ア 「ふざけてないで、まじめにやりなさいよ」
シャ 「へいへい」
ピ 「あそこのダンジョンは最下層のラスボスをどうするかだな」
ダ 「ブズタークだったか?それも、ただのブズタークでは無いらしいな」
デ 「特殊個体で、魔法攻撃を一切受け付けないと、言われているらしい」
マ 「だとしたら、私はみんなの、防御と力の増幅と回復の魔法に専念すれば
いいんだよね?」
ア 「お子様は、お留守番していればいいのよ」
マ 「子供じゃないから!」
リ 「いい加減にしてくれよ、話が進まないだろう」
ピ 「まあ、まずマージュが我々に魔法で体力増強のバフを掛ける。その間に
俺が弓で目を狙う!」
リ 「体制が崩れたところを、畳みかけるように、俺、ダルトンで攻撃して、
すぐに交代でシャギー、ディーが攻撃をかける」
デ 「ちょっと待ってくれ!シャギーと組むのは勘弁してほしい」
シャ 「はっ?なんでだよ!」
デ 「お前は戦闘になるとすぐにバーサク状態になり、周りが見えなくなるだ
ろ。おかげでこっちの命も危なくなる」
リ 「……はぁ、分かった。俺、ダルトン、ディー、アシューナがブズター クに順次攻撃を仕掛け、シャギーは単独で戦え‼」
シャ 「おまえら!俺を狂人扱いするな‼」
全 (……あながち、間違ってはいないと思う……)
後から、プロローグと副題を入れさせてもらいました。
かなり遅れてしまいましたが、イイネを付けて頂きありがとうございます。
ご期待に添えるように、良い話を書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。