5話
目が覚めると見覚えのある美人が目に入る。
「試練は合格か?」
「そりゃあもう」
良かった。ただその一言に尽きる。がしかし、まだまだ聞きたい事はいっぱいあるので会話はここでは止まらない。まず聞きたいのはあの試練の合格基準だ。なんとなく一発殴り返すことが条件っぽいのは分かるがそれ以外にも何かがあったのかは気になる。
「あの試練の合格基準ってなんだったんだ?」
そう尋ねると彼女は細かく説明してくれた。
まず一つは自分の想像していた通りあの怪物にどれだけ弱かろうとも一撃殴るなり蹴るなりを入れる事。
それに加えてもう一つは"王権"を使う事、だそうだ。
王権って?と聞くと彼女はそれにも細かく答えてくれた。この王権とは何かを説明するためにはまずこの狭間の存在意義などなどを説明する必要があるらしくそれについても教えてくれた。まず一つ、この狭間では本来ここに立ち入ることができる唯一の血族の中からさらに才能を持つ者を選別すること。それからもう一つ、才能を持つ者に能力を与えて現世に返すこと。と大まかにこの二つが意義としてはあるらしい。そうして能力を得て現世に戻った血族の人間たちで争い生き残った一人が現世を治める王になるんだとか。王権というのはさっきまでの説明で才能を持つ者に与えられた能力のことだそうだ。それから王というのは裏社会の王とかそういう所の王らしい。ここからは私の王権の話に戻る。私自身私の王権がなんなのか分かっていないし、彼女曰く「人によって出し方とかうっすら違ったりするから僕からは何か言える事はないなぁ」との事で軽く腹が立ったがおそらく私の王権は分身を出してたアレだろう。彼女に確認も取ったが「多分そうだと思うよ!」とのこと。やはり腹が立つがもうちょっとだけ知りたいことがあるので暴力は抑えよう。
気になっていたのは現世に戻ってからの話である。
脇腹が消し飛んでるのをどうにか誤魔化して生きていけるほど私は世渡りが上手ではない、と言いながら脇腹に触れると消し飛んだのが嘘かのように完治しているではないか。私が混乱していると彼女はこう言う。
「試練が終わるとそこでした怪我も治るよ」と。
じゃあ自分がぶっ倒れたのはなんだったのかと問うと慣れない王権なんて力の行使と脇腹消し飛んでるのに必死こいて動いた無茶が祟っての事らしい。
門への帰り道は静かであったが重苦しい静けさは感じなかった。彼女は門を押し開ける。これでようやく自分は家に帰れるのだ。門をくぐる直前に彼女からは別れの挨拶を聞いた。王権は気持ち的なものだったりするから強く念じれば出るよ!との事だ。相変わらずのアバウトさである。
「それともう一つ!僕の名前はマーリンだ!」